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結論から言うと、誘拐の計画を立てることはできなかった。ロビンが手紙を持って駆け込んできたのである。
「こんにちは!ねえ、こんにちは!入っていい?手紙が来た!」
玄関先でばたばたと動き回りながらロビンが大声を出す。自分のしっぽを追いかける子犬みたいだ、などと思いながら、モニは扉を開けてロビンを招き入れた。
「いらっしゃい。返事が来てよかったね。さあ、どうぞ。」
叔父がロビンに椅子と紅茶を勧める。ロビンが食卓に恭しく置いた紙を、モニと叔父は覗き込んだ。
『ごめんね。でも、日に当たると体が腫れてしまいます。この間の場所で、明日の夜、10の鐘が鳴ったときでもいいですか?』
叔父とモニは顔を見合わせる。
「僕ね、会いに行こうと思うんだ。この子がそういう病気だって知らなかった。きっと、病気のことを僕に打ち明けるかどうかすごく悩んだんだよ。僕、お友達になりたい、一緒に遊びたいって言うんだ。」
ロビンが熱弁する。
「お友達が増えるのは嬉しいね。今度こそ会えるように3人でお返事を考えようか。あ、その前に庭に干しているキノコを取り込んでもいいかな?すぐ終わるから。モニ、手伝ってくれる?」
叔父がにこにことまくし立ててモニを裏口に引っ張っていく。
「どう思う?」
庭に出て後ろ手に扉を閉めたとたん叔父が聞く。
「行かせるんですか?」
モニが質問に質問で返す。
「止めてどうにかなると思う?」
「そこをどうにかするのが大人の責任じゃないんですか?」
叔父が言葉に詰まる。
「とはいえ僕も止めてどうにかなるとは思いませんよ。だからさっき、会うことを前提に返事を書くって言ったんでしょう?明日の夜だから。」
叔父が驚いた顔をし、すぐに見開いた目を細める。
「モニは僕が何を考えているか分かるんだね。」
「不本意ですが、長い付き合いですからね。」
「生意気なことを言っちゃって。」
嬉しそうにしていた叔父が真剣な顔になる。
「この件、明日の夜までに僕らで解決するよ。」
「望むところです。」
モニは答えた。二人は握ったこぶしをぶつける。