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浮気発覚、そして・・

どうぞお読みください

 さて、私共が勤めておりますのは東京は文京区に構える株式会社、その名も今心(こんしん)、昨今耳にしますブラック企業とは程遠く、超優良モノで御座います。福利厚生の一環として、我ら社員一同静岡県熱海は矢乃旅館に二泊三日で滞在しております。今は初日の夕刻、温泉の後の夕食、宴もたけなわと言うところで御座います。


我ら若手数年目は、お偉方の接待に回ります。

「さあさあ一気に飲んじゃってください!」

「お、じゃあいっちゃおうかな!」

「いよ!!さすがです!!」

「いや~はっはっは」

と、お世辞だとわかっていても昔自分がやっていただけにいい気分になるんだろうな~などと内心で独り言ちます。

「さあさ水村部長もどうぞどうぞ」


お偉いさんを沈めたら、若手(数年目も含む)の時間が巡ってまいりました。

「ねえ豊田さん、彼氏ってやっぱりいるよね~」と女子社員。

そこに酔っ払いが「いないよね!いないと言ってくれ~」とかぶせます。

恵さんは「ふふふ、どうでしょう」と返します。

そこで酔っ払いが私に絡んできました。

「なあおい、おまえは知ってるのか?」

私は知っています。だけど知らない風を装って、

「お前は他にいい人がいます、だとよ。」と笑います。

「な、それはねえよ~」と苦笑い。

恵さんが目礼してきましたので、軽く頷いておきます。


そうして談笑する事数十分、ちらほら、いびきをかく人たちが出始めました。

と、ここでピロロンと、スマートフォンが新着を告げます。

見てみると部屋の外の恵さんから、「ちょっと付き合って」だそうです。

周りにお手洗い、と一言告げ、宴会場を出ました。


恵さんと落ち合って、益体もない事を話しながらついていきます。

人目のないところまで行きつき、彼女がそっと口を開きました。

「ねえ、龍雅(りょうが)のことなんだけどさ、出た時気付いたんだけど、LINEがあって、」

と、とぎれとぎれに話します。

「別れたい、て、こっちで、結婚する事にしたから、って。」

ついに泣き出してしまって、

「こっちから送ろうとしても、スン、ブロックされたみたいで、ズ、何回もいろんな方法で試したんだけど、」

と話してくれました。


何年も付き合っていただけに、信じられません。彼自身が、絶対浮気なんてしないと宣言して、恵さんも「うん、♡」と答えた事を嬉しそうに話されましたから、余計に結婚などと、怒りがこみ上げてきます。

少し考えてみたら、倦怠期中に軽い気持ちだった、と言う所でしょうか。

確信はしたくありませんが。


さて、どうにもうまい言葉が浮かばず、泣き疲れたであろう彼女を部屋まで送ります。

・・・無言の部屋までの道のりが、とても長く感じられます。ただ、幼少の時のように、白く艶やかになった手を握り、隣を歩きます。

不意にポツリと、恵が呟きました。

「龍雅が、好きだったの。告白されて、嬉しかった。」

「うん、話してくれたね」と語りかけるように。

「手をつないで、ドキドキして、デート服を選んで、プレゼントを交換して。」

「報告してくれたね、一緒に選んだね、流石だと唸ったよ。」

「わたし、幸せだった…でも!・・・」

「ああ、許せないな。本当にあのヤロ―は…こんなかわいい恵を振って・・どうせ地獄に落ちるよ、あんな奴。いや、俺が閻魔大王に直談判してやる!」

どうやら俺も、酔っているようだ…

クスッと、恵が笑う。泣き笑いしている。

「ふふ、大袈裟だなあ、竹君は。」


竹君。懐かしい呼び名である。幼い時は、よく呼んでくれた。僕はそれに、めぐちゃん、と返したものだ。

「めぐちゃん、」

「なあに。」

口に出てしまった。慌てて、

「いや、懐かしいな、って」

「ほんとにねえ。」

と、めぐちゃん。

「ふふ、たーけ君!」

「な、何?」

「呼んでみただけでーす!」

と、めぐちゃんが笑う。

ああ、愛おしい…

気が付くと、顔を真っ赤にしためぐちゃんの顔があった。

またもや、口に出していたか。

「いや、その、・・・」

・・・「ねえ、わたしのこと、すき?」

 ここですぐ言えたならば、彼氏を作る事など未然に告白という形で防げた。こんな自分に腹が立つよりも先に、情けなさがこみ上げてくる。


そんなぼくに、めぐちゃんが言う。

「わたし、初恋の人、竹君だったんだよ?まあ、お互いを意識する時期に告白されて、捨てちゃったけど…」

希望の光が、見えた。


「ぼ、僕もめぐちゃんが好きだったし、今も、ずっと好きだ!!」

叫んでしまった。・・・沈黙。・・・ああー近所迷惑じゃなかったかな・・・。

戦々恐々とした思いで、現実逃避しつつ、、うつむいた顔がこちらを向くのを待つ。

「嬉しい、嬉しいよ竹君!!」

と、抱き着いてきた。んん?カラダガ、ミッチャクシテイマス。


許容量を超えた。巨峰。すぐ近くにある憧れのかんばせ。手を伸ばせば届く、桃。

「あ、やだ・・」

と恥じらう顔に、理性が野生に負けた。瑞々しい唇に己のを合わせる。

何度か合わせて、ふと、ここは旅館の廊下じゃあないかと思う。 血が音を立てて引いた。

慌てて恵の唇からはなれ、周りを見渡す。幸い、他の人はいなかった。ここはどこだろう、と思うと、僕の一人部屋の近くだ。宴会場から歩き続け、ここまで来たのか。浴衣から鍵を出し、戸を開ける。下駄を脱ぐのももどかしく、畳の上で再び恵と向き合った。

 改めて、思いの丈を伝える。

「恵、君の事が好きです。初めて会ったとき一目惚れして、ずっと、ずっと好きでした。お付き合いして下さい。」

「はい。私も好きです。よろしくお願いします。」


蛇足:恵ちゃんと龍雅(の野郎)は接吻(キス)まではしてました。

ちなみに竹君はストーカーみたいなヤバ目な奴じゃないです。学園を会社の親企業が運営してました。

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと待て。初恋で好きだった? だったら何故その先輩に告られた時に断らないのさ?。 「ごめんなさい。昔から好きな人がいるから付き合えません」 そう言わなきゃいけなかった筈だ。捨てる云々…
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