第二章 追放(3)
「サムソン、カミュそしてティア。」
夜明けと共に村の若者が三人を迎えに来る。 「判決の時間だ。広場へ・・・」
大勢の村人に遠巻きにされ、三人が村の広場へと向かう。
三人を前に村長が席に着く。
「それでは判決を言い渡す。」
「これは、儂も夕べ一晩よく考えた末の結論だ。不服のある者は、儂の話が終わってからにするがよい。」
「さて、サムソン、カミュ。確かに傷ついた少女を見て助けたのはよく分かる。
しかし、村には村の掟がある。それはお前達も解っていると思う・・・それを破ったお前達の罪は重い。
だが・・しかし、お前達はまだ若くもある。よって・・・罪は罪として、お前達二人は今まで通りこの村で暮らすがよい。」
広場全体に安堵の空気が拡がる。そしてサムソンもホッと胸をなで下ろす。
しかし、カミュはまだ気を許していなかった。
(まだ、ティアのことがある。)
そして、大勢の村人の中に混じったディアスも・・・
「そしてティアとやら・・お前ももう解っていると思うが、この村にお前を置いておく訳にはいかない。よってこの村から追放。昼までにこの村を出て行く様に・・・」
「そんな・・・それじゃあ・・・」
カミュが椅子を立ちかける。その肩を村の若者が押さえつける。
カミュの言葉を遮る様に村長が言葉を続ける。
「以上、判決を下した。何か異議があるものは・・・・」
村長の声にざわついていた広場が静まる。
カミュは下唇を噛み下を向く。
サムソンは呆気にとられたように空を見上げる。
「異議がある。」
その時、凛としたディアスの声が村長に投げかけられた。
広場の目が、立ち上がったディアスに集まる。
その中をゆっくりと広場の中央に進み出、ディアスは話し始める。
「今の判決に異議があります。」
真っ直ぐに村長の目を見つめ、ディアスは語った。
「一つ、罪は罪として二人を許す。と言うことですが、罪を犯したものは必ずそれを償わなければならない。」
せっかく村長が寛大な処置を考えているのに、なんと言うことを・・・広場に集まった村人がざわめく。
その声を押さえつけるようにディアスが続ける。
「二つ、ティアを村から追い出すと言うことだが、か弱い少女を村から独りで追い出す。それは山賊や、盗賊の餌食にするためこの村を追い出す様なものだ。事実上の死刑に等しい。」
確かに・・・それは間違いない。ディアスの言葉に賛同する空気が広場に拡がる。
「三つ。そもそも、人を助けることが・・・たとえそれがエルフであっても・・・それがなぜ罪になるのか教えて欲しい。」
「そして最後に・・・この件の首謀者は俺だ。」
どっと広場に大きなざわめきが拡がってゆく。その中、ディアスの母親は顔を手で覆い泣き崩れる。
「俺が、サムソンと幼いカミュをそそのかし、サムソンが見つけたティアを匿わせた。全て俺の意思で、それに従い二人は動いていた。
どうしても罪があるというなら、それは二人にはない。俺にある。」
「村長、聞かせて欲しい。村人以外の者を助けるのがなぜ罪になるのか。」
「それはお前も少しは知っておろう。この村には忌まわしい過去がある。二度とあの様なことがないよう・・儂には村を守る義務がある。それだけの事じゃ。」
広場に集まった村人達は疑念は抱えながらも村長の言葉に賛同の空気を拡げる。
「掟は掟・・・それは解る。しかし、あなたも知っての通り俺はよく村を出る。
そこで聞く話では、中原では今は収まっているとは言っても、いつまた戦の火の手が上がるかもしれない。そんな中、この村だけが時の外でいいのか。俺はそうは思わない。
掟は掟。確かに今までは自分たちの中だけで、それで安穏に暮らしてこれた。しかし、これからもこのままこの暮らしが続くとは俺には思えない。
今すぐ掟を変え時の流れに取り残されない様に村を守るのが我々の使命ではないのか。」
「何を言い出すのかと思えば・・・ディアス。はやりたつものではない。村人はお前の言をいれるものではない。
我々は今まで通りこの村の掟を守り、これからもそうやって生きてゆく。」
村長の言葉は殆どの村人の考えと言ってよかった。人々の間に安堵と賛同の空気が拡がる。
「そう言うと思っていたよ。昔、ダルタンが皆に呼びかけたときもそんなものだったんだろう・・・よく解った。」
「何が解ったと言うんだディアス。お前もまだ若い。悔い改めてティアを追放し、平和にこの村で暮らすがよい。」
「村長、掟は掟とおっしゃったな。
ならば罪は償わなければならないはず。
おれはティアと一緒に村を出て行く・・・」
「なんだと・・・」
「そうか・・・解った。では出て行くが良かろう。
儂の気持ちも分からずそのような放言を放つ・・・・
カミュ、サムソン先ほどの判決、お前達はどう思う。悔い改めるのであればこの村に残るがよかろう・・・さもなくば・・・」
カミュが立ち上がる。
「僕はディアスと一緒に行きます。」
その後に次いでサムソンも
「俺も。」と珍しく力強く宣言した。




