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ロンギオスの炎 旅立ち  作者: たかさん
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第一章 バルモドスの山で(3)

 カミュとサムソン、二人が村へ戻った。


 サムソンは壁板の調達に村を駆け回り、カミュはまず、おばの家へと向かった。


 「お前は死んだ姉さんから預かった子だからって、家の小屋に住ませ、食べ物まで与えてやってい


るというのに・・・ほんとに世話が焼けるねェ。一体全体、昨日はどこへ行っていたんだい。」


 口やかましおばさんの小言が始まる。


 小一時間も小言を聞かされたあげく、


 「ほんとにもう、誰に似たやら・・・」


 と、いう捨てぜりふと共に、やっと解放された。


 自分にあてがわれた小屋に帰る。


 ピュロ、ピュロロロロ


 小さな可愛い鳴き声がカミュを迎える。


 「ピュロ、今帰ったよ。ちゃんとご飯は食べたかい。」


 テーブルの上でカミュを見上げる小さな鳴きトカゲに声を掛ける。


 ピュロ、鳴き声からそう名付けた。この夏バルドモス山でサムソンの父親の手伝いをしていたとき


に見つけたトカゲだ。


 鳴きトカゲかと思ったが、その姿から鳴き声まで普通の鳴きトカゲとは違った。それからは、家に


連れて帰り、大事に育てていた。


 ピュロの餌の世話を終え、二人分のシーツと毛布の準備をする。そして、ピュロを肩に何気ない顔


で村中に出る。


 母が残したなけなしの金で、狩り用の弓と身を守るための粗末な短剣を買った。



一方、壁板の調達に走ったサムソンは、あちこちで古い木こり小屋の修理と話していた。


 「おい、サムソン。その、木こり小屋の修理ってのは、お前の親父さんも知っているのか。」


 木材を売りさばく親父に訊かれる。

 「俺も、もうこの年だろう。そろそろ独立しようかと思ってね。」


 「ハハハハ・・・いい女でも出来たか。」


 「それが、山で・・・おっとっと、これ以上は・・・言えない、言えない。」


 そんな噂をカミュが聞きつけ舌打ちをする。


(これじゃあ、自分で言いふらしているようなものじゃないか、あぁ・・サムソンのやつ・・・)


 まず、大きな風呂敷包みを背負ってカミュが山道を登ってきた。その肩には小さな鳴きトカゲが


ちょこんと乗っている。


 囲炉裏の奥に荷物を置きディアスと話し込む。そこへ、壁板を担いだサムソンがフゥフゥと息を切らして入ってくる。


 「アァ・・きつかった。壁板・・・」


 そこまで言って、二人の厳しい目に気付く。 「なんだヨ・・俺が何か・・・」


 「今、カミュから聞いたんだが・・お前、あちこちでこの小屋のことを話しているそうだな。


 「そんな・・・責めないでくれよ。ああでも言わなきゃ壁板なんて売ってくれないんだから。」


 「まあいい・・・これからはあれこれ、余計なことまで口にするんじゃないぞ。」


 「分かったよ・・・。分かったからそんな目で俺を見るなよ。」


 サムソンは泣き出しそうな表情で壁板を外に運び出そうとした。


 「今からじゃ、もう遅いだろう。後はカミュに任せて、俺たちは山を下りるぞ。」


 サムソンは頬を膨らませ、渋々とディアスの後ろをついて行った。


 その夜は、ティアは傷による熱にうなされることもなく、干し草と毛布のおかげで二人ともぐっす


りと眠ることが出来た。


 翌朝、朝食を終えた頃、サムソンが独りで現れた。


 「今日はディアスは来ないって・・・あんまり頻繁に二人で山に出入りすると怪しまれるとか言っ


て・・・二・三日は俺独り・・その間に壁の修理をしておく。」


 さすがにディアスは、細心の注意を払ってティアを匿おうとしている。


 カミュもティアのことが村人に知られないよう、自分の行動を正当化する言い訳を考えながら山を


下りた。

 村に入り、まずおばの家を訪れる。


 「おばさん、おばさん・・いますか。」


 「なんだいこの子は、また朝帰りかい。どっかの悪い女にでも引っかかったのか。


 子供のくせに・・・」


 不機嫌そうな叔母の声が返ってくる。


 「いえ・・・悪い女だなんて・・・。」


 「それより、相談があるんですけど。」


 「なんだい、わたしゃ忙しいんだから、手短に頼むよ。」


 「これ、昨日買ったんです。」


 カミュは狩り用の弓を叔母に見せる。


 「それで・・・」


 叔母の冷たい声が響く。


 「あのぉ・・僕、狩りに出てみようと思って。」


 「狩りって・・あんたまだ十四だろう、そんなことより死んだお前の父さんの跡でも継いで、鍛冶


屋の修業でもしたらどうだい。」


 「あぁ分かった。ディアスの影響でも受けたんだろう。あんまり悪い友達を持つもんじゃない


よ。」


 それからまた、叔母の小言を聞かされる。 それでも、やっとの事で叔母を説得し、三日後から山


に籠もることにする。



ディアスは今後の身の振り方を考えていた。いつかはティアの存在が村人に知られる。そうすると


後は・・・


 暫くは山に登らないと心に決める。その間に・・・


 鍛冶屋を訪ねる。今まで貯めた金で鉄の剣を注文する。


 次に服屋。四人分のよく鞣した皮製の服。 薬草、携帯用の保存食。


 自分の仕事を考えるとそれほど怪しまれることはない。と考える。


 剣を打ち終わるのに七日。それまでに出来る限りのものをそろえる。


 しかし、先立つものが足りない。


 南に拡がる草原まで狩りに出る決心をする。 考えをまとめると、ディアスの行動は速い。まず母


親に狩りに出ることを告げ。父親の狩り道具を譲り受ける。


 彼の父母は、何も疑わずディアスを送り出した。


 ディアスの後を追いかけ、カミュが駆けつける。


 「ディアスどうしたんだ、急に狩りだなんて。」


 カミュが詰め寄る。


 「あぁ、俺には俺なりの考えがあるんだよ。サムソンには伝えていたが、俺は暫く山には登らな


い。サムソンと力を合わせてティアのこと頼むぞ。俺が帰るまでは絶対に村人に知られるなよ。」


 自分の考えを打ち明けるにはカミュはまだ幼い。そしてサムソンは・・・あの調子だからすぐに村


人に知れてしまう。

 ディアスはカミュを後に残し、南の草原の方へ去っていった。


 後に残ったカミュは何も分からず、とぼとぼと村へと帰っていった。

 

 夕日が山の端に掛かり始める。今晩はサムソンが山に泊まる。それはサムソンの両親も承知してい


ると聞いた。独り、自分の小屋に戻り、眠れぬ夜を過ごす。


 ティアのこと。まだ何も知らない。月の民だと言うことだけは解った。それ以外はまだ・・・


 そして、ディアスの行動。腑に落ちないことが多すぎる。急に狩りに出、暫く帰らないという。


ティアのことをどう考えているのか。我々三人の行方をどう考えているのか。

 ディアスが狩りから帰ったら、問いたださなければ。


 カミュはカミュなりに懸命に、今後の事の成り行きを考えた。


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