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ロンギオスの炎 旅立ち  作者: たかさん
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第一章 バルモドスの山で

第一章 バルドモスの山で


村の鍛冶屋の息子、カミュは十四歳になっていた。

 カミュは、村の狩人の息子、ディアスと共に(きのこ)を採るため、山に分け入っていた。

 その後ろには、木こりの息子、サムソン。

 大人しいカミュと暴れ者のディアス、ちょっと小太りで、おっとりしたサムソン。この三人はそれぞれ年は違っていたが、カミュより三つ年上のディアスを中心とした自他共に認める親友と言って良かった。


 山に詳しいサムソンが遅れているため、カミュとディアスは切り株に腰掛けサムソンを待っていた。

 「ほんとに、いつものことだがグズだよなサムソンは・・・あいつももう十八だろう・・・まいるよなぁ。」

 口の悪いディアスの言葉にカミュは、

 「そんなこと言うんじゃないよ。サムソンだって遅れたくて遅れているんじゃないんだから・・・それに君より一つ上の兄貴だろう。」と、年上のディアスを窘める。


 「おーい、カミュー、ディアース・・・」

 サムソンの大声が二人に届く。

 「ちょっと来てくれ・・早く・・・。」

 何事が起きたかと、カミュとディアスは転がるようにサムソンの声のする方に走った。

 息を切らせてサムソンの元にたどり着く。そして、立ちつくすサムソンの足下に太腿を矢に貫かれて血を流し、あちこちと擦り傷と打ち身だらけで倒れ伏した少女を目にした。

その少女をカミュが抱き起こす。

 「誰なんだ。」

 ディアスの声にカミュが応える。

 「分からない・・・でも怪我をしているようだ。村に連れて帰って手当をしないと・・・」

 「俺の背中に乗せろ。」

 サムソンが大きな背中を差し出す。

「でも、大丈夫かな村に連れて帰って・・・」

 確かに、ロニアスの村にはよそ者を入れてはならないと言う不文律がある。それは他者の裏切りから、流浪の身となったロニアスの民の、自分達を守るための掟であった。

 「そうだったな、よそ者は・・・」

 「村に入れてはならぬ。」

 ディアスの言葉をサムソンが引き継ぐ。

 「サムソン、君の所の使わなくなった古い木こり小屋が・・確かここいらにあっただろう。」

 カミュの言葉に

 「そうだ木こり小屋だ。カミュとサムソンはそこでこいつの手当をしていてくれ。俺は村に帰って、薬と食べ物をとってくる。」

 と、言うなりディアスは村へ向け駆けだした。


 深い森の中の一角だけを切り開き、粗末な木こり小屋が建っている。その中の囲炉裏に火を熾し、その傍らに少女の躰を横たえる。

 「なんだ、こいつ耳が尖っているぞ。」

 部屋の端にあった筵を少女の躰に掛けながら、サムソンが素っ頓狂な声を上げる。

 (月の民・・ルミアス・・・)

 カミュの頭の中に疑問が拡がる。

 (まさか・・・あれはお伽噺の世界の・・・)

 昔、アリアスがカルドキアと戦った時、その率いた部族の中に、弓と治癒の魔法を得意とするエルフ族がいた。と、長老の昔話に聞いたことがある。が、それは、子供を喜ばせる為のお伽噺とばかり思っていた。いや、今もそう思っている。


 「カミュ、血が・・血が止まらない。」

 「何やってんだ。」

 カミュは少女の元に駆け寄り、少女の太腿を貫いている矢の鏃をへし折り、矢を引き抜いた。

 「ウッ、ウウ・・・」

 意識を失ったままの少女が苦しげに呻く。

 カミュの手が朱に染まった少女のドレスを引き裂く。

 「おい、女の子だぞ。」

 サムソンが声を掛ける。

 「そんなこと、構っていられるか。」

 切り裂いた布で、露わになった太腿の付け根をきつく縛り付ける。そして、傍らにあった酒瓶を手に取り、中の液体をグッと口に含む。

 頬をふくらませプッと傷口に酒を吹きかける。

 傷口を灼くアルコールの痛みに少女が身じろぐ。

 「カミュ、大丈夫か、そんなに手荒にして・・・」

 サムソンは不安げな表情でカミュの手元をのぞき込む。

 そんなそぶりには一切構わず、カミュは少女の傷口を、切り裂いたドレスを包帯代わりにきつく縛り付けた。

少女はよほど危ない目にあったのか、時折鋭い悲鳴を上げ、ディアスの帰りを待つカミュとサムソンを驚かせた。


風の音が、入り口のドアを叩く。そのたびにディアスかと二人が振り向く。そしてまた、静寂の中それぞれの思いに沈み込む。

 (ゾルディオスの軍を破ったアリアスはサルジニアの首都サンドスに迫る。しかし、急に兵を曲げ、黒い森から死の谷へと向かう。)

 (なぜ、なぜ兵を曲げた・・・長老の話・・・思い出せない・・・あれはまだ十歳にもならない頃聞いた話・・・そして、その年の暮れ長老は死んだ。)

ギーッと音を立てカミュの思考を中断するように木こり小屋の扉が開く。

 粗末な建物の中に冷たい風と共にディアスが入ってくる。

 「薬と食べ物・・親父の目を盗んで持てるだけ持って来た。」

「しかし、どうする。もうすぐ日が沈むぞ。日が沈んでも村に帰らないと怪しまれる・・・だが・・かといってこの()だけをここには置いてゆけない。」

 「僕が残る。」

 「お前が・・・」

 ディアスとサムソンが声を合わせる。

 「ウン。僕が・・・僕には父さんも、母さんもいない。だから簡単にはバレないと思う・・だから僕が・・・」

 「分かった。それじゃあ暫くおまえに任せる。俺とサムソンは交代で食料と薬を持って来ることにしよう。いいなサムソン。」

 「分かったョ、ディアス。でも俺の方がここに来る回数は多くなるよな。何たってここは俺の親父の小屋だからな。」

 ディアスは苦笑いと共に頷いた。

「ピュロの餌、頼むよ・・忘れないで・・」

 カミュは小屋を出る二人の背中に声を掛けた。


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