7上位の魔法書
リヒター神官長は女児の瞳を覗き込むと手のひらをかざした。
手のひらから、キラキラした淡い光が放たれ、女児の全身が包まれた。
神官長は鋭い目で全身を嬲るように確認してから告げた。
「名はガリーナ、ガリーナ・シュレヒテ侯爵令嬢。魔法書は上位魔法、無属性」
その瞬間、シュレヒテ侯爵夫妻からは満面の笑みが溢れた。
相反して、国王夫妻は肩を落とした。
「ガリーナ・シュレヒテに祝福を与える。
魔力と共にあらんことを。」
神官長がお決まりの祝辞を述べると、
シュレヒテ侯爵夫妻が笑いながら今、正に
ガリーナとなった女児に足早に駆け寄る。
「素晴らしいわ。
上位魔法よ。
正しく王家の血筋だわ。
ガリーナ」
「帰るぞ」
その様子を横目に見ながらアルベアトはヒーリーヌを促し、踵を返し王殿を後にした。
「お祝いをしなくては。
帰りましょう、あなた」
ヒーディはシュレヒテ侯爵を促すと、心の中で呟いた。
「ガリーナが次の王になるお祝いを」
賓客が退場すると、その場に残った大神官達がにわかに騒ぎ出した。
「上位魔法だ。大変な事になりますぞ」
「国が乱れる」
「金糸銀糸とは」
リヒター神官長は静かに諭した。
「儀式についてはくれぐれも他に漏らさぬよう」
しかし、神官長の箝口令もシュレヒテ侯爵夫妻当人達が触れ回った為、あっという間に国中に噂が広がった。
「次の王位継承者はシュレヒテ侯爵令嬢のガリーナ様に決まった」