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過去ログ

 結論から言うと、訓練用はミハイルの分も含め手に入れることができた。


「陽動作戦の時のログは、今のやつに入ってるんだね」

「ガワだけ変えて中身を入れ替えただけでしょう」


 つまりそう言うことだ。

 僕が新しく貰った換装機は外側だけ変わっているもので、中身は陽動作戦のものと同じだから、そのままログを見ろと言うことらしい。


 ちなみに、訓練用の換装機のログは敵の第五世代分析のために持ってきていたそうだ。休養中なのだから換装体になってログを見たいと言うと、かなり渋られた上に小言を言われたが渡してくれた。

 と言うか、その場で換装体に変えられて、命令違反寸前だと言う理由でぶん殴られた。


「ラッキーでしたね」

「殴られたけどね」

「そのくらいは甘んじて受けてください。では、早速見てみましょう」


 換装体になった僕は手早くAR(拡張現実)を操作した。


「私の換装体にも映像よろしくお願いします」

「おっけー」

「ログを私のローカルメモリに入れてもいいですけど、この距離ならハヤトさんの視界を私に同期させた方が早いと思います」

「さすが敵国のエース」

「このくらいは当たり前です」


 しばらくすると、あの日の荒野が視界に出てきた。








 最初から見ていた様では埒が明かないので、スキップしつつ映像を確認した。


「私たちと交戦する前に戦っていた敵は、補助兵装(パッシブ)を使っている様でしたけど」

「マリンさんの部隊の近接手(フロント)も崖の上の人たちも使っていなかった。でも、崖下の部隊は"シールド”を使っていたね」

「二つは確実に何か別のものを入れていた可能性がありますね。最後はちょっと短いのでわからないですけど、”シールド”以外の兵装・・・例えば、第四世代の光学迷彩(ナナフシ)を使うそぶりもなかったですし可能性はありますね」


 つまり、僕らが遭遇した近接手(フロント)は何かを隠し持っていた。かもしれない


「他の人のログとかは見られないのですか?」

「権限が厳しい、けど、ミハイルの訓練用の換装機があるからミハイルの視界なら見れるかも」

「でも、戦った敵は一緒ですよね。わざわざそこまで確認しなくても、多分あってると思います。」


 それはそうなんだけど。


「ちょっと確認したいことがあって」

「わざわざミハイーラさんの換装機を使ってまで確認したいことがまだあるのですか?」


 実際に戦っている時は、ただの見間違えかと思ったんだ。


「敵味方の識別反応って何を基準に判断してるの?」

「識別反応ですか?」


 映像でログを見直した時に気づいたが、やはり識別反応の誤作動が多い気がした。


「流石にちょっと知らないですけど、味方は通信で、敵はガロンの反応・・・あっ」

「そう、何もないところに敵の識別反応が出るって変な話じゃないかな?」

「言われてみればそうですね」


 そうなのだ。僕の記録を見返しても、敵味方の識別信号がおかしいことが度々あった。それも特定のタイミングでだ。


「もちろん僕の換装機が間違っている可能性はあるんだけど、それじゃあミハイルはどうやって2回目のレールガンのタイミングで僕を後ろに下げられたんだろう」

「確かに調べてみる価値はありそうですね」

「でしょ?」

「ハヤトさんの癖にたまにはいい事を言いますね」

「一言余計なんだよ」


 第六感と言ってしまえばそうなのかもしれないけど、これでもし何かミハイルの視界に写っていたとしたら?例えば、敵の識別反応とか


 とにかく、僕は一度換装体を解く事にした。そうしなければ話にならない。


「【換装解除】」


 何かが体から消えていく感じがして、換装が解けた。


「あいっっっっっ痛てててててて」

「だ、大丈夫ですか?」

「傷開いたかも」


 脇から背中にかけてが、めちゃくちゃ痛い。

 換装中は自分が最適化された状態になるが、解ければ「本体」が出てくる。勿論換装前の傷が治るなんて都合のいいことはあるはずがない。


 クソ上官の声に反応した時並みにきつい。だが、痛みというのは慣れるものだ。

 次第にうまく呼吸もできる様になってきた。


「はあっはあっ」

「包帯から血が出まくってますね。傷開いたんじゃないですか?」

「かもね。換装をしている時は痛みとか何もないけど、終わった後に結構反動って来るんだね」

「ずっと換装体ってわけにもいかないのがよくわかりますね」

「甘く見てた」


 そう言いつつも、ミハイルのログを見ないわけにはいかない。


「私が代わりにできたらいいんですけど」

「そういうわけにもいかない」


 折角態度がいい捕虜ということで、話すことができているのに換装体を必要以外で解くと何があったのか聞かれる事は間違いないだろう。


 今でさえ機密情報を覗いていると言えば覗いているのだ、アウト寄りのセーフは人によってはアウトというのはどこの世界でも一緒だろう。


「【換装体起動】」


 1つの換装機で起動したり解除したりするのと異なり、1から換装体を作り直す形になるかもしれない。そうなると、かなりの量のガロンを消費することになるだろう。


 だがそんなに世の中は甘くない。


【未登録者の換装を確認ー換装失敗】


 換装体を起動する時にしか聞いたことがない低めの男の声がARの代わりにガイドをしてくれるようだ。


【新しい換装者を登録する場合、初期化してください】

【初期化の権限の有無ー無】


【初期化に失敗】

【使用者保護プログラムに従い強制終了します】


「無理っぽいね。ARも作動してなくて、擬似音声だけだよ」

「擬似音声が機能するんですね」


 やはりと言うか、そんな予感はしていたが起動は難しいようだ。AR(拡張現実)くらいはインターフェイスが同じだから起動できてもいいんじゃないかな。


「ちょっと貸してください」

「いいよ?何か分かることある?」

「換装体の装備変えるための機械ってありますか?」

「あるよ!」


 そうでなければ、話の発端である装備の相談なんてしてない。残念ながら、基地の部屋にあったような大掛かりなものではない。しかし整備するには十分な機器はある。


 こんな訓練用の換装機を変えるものではなく、今持っている戦闘用のものだ。だが互換性はあるので使えるはずである。


「配線はわかる?」

「向こうで使ってたやつと少し違いますが、問題はありません。多分この線はここでしょう」

「すごいね。整備とかも自分でやってたの?」

「改造手術以降は、専用換装機でしたから自分でできないと困るんですよ」


 一人一人に専属の整備士なんてつけるだけの余力は、流石に向こうの軍にもないと言うことか。専用があるだけですごいけど。


「できました。っと、やっぱりこっちにセキュリティは掛かっていませんね」

「と言うことは」

「記憶領域は__あーできないっぽいですね」


 マリンは整備用の機器の画面には目もくれず、自分のAR(拡張現実)を操作している。パッと見ると夕飯の献立を考えている女子中学生にも見えなくはない。


「どうしたんですか?こっちを見て?」

「いや、なんでもない__とりあえず識別信号の件は仮定するしかないってことだよね」


「そうでもないですよ」


 何かを見つけたらしい、マリンはAR(拡張現実)上の一点を見つめている。


「ハヤトさんが砲撃を受けた時刻のミハイーラさんのAR(拡張現実)には、確かに謎のガロンの反応があったぽいですね。敵の反応かどうかはわかりませんが、ハヤトさんのログから照らし合わせると、味方の位置以外にも反応がありますね」

「これは」

「ビンゴですね」


 通常AR(拡張現実)は素人目にはブラックボックスとなっている。データを見たところで何が何だかわからない。

 武器や補助兵装(パッシブ)であれば、ダウンロードすることで武器を変えたり、整備がしやすいようにイコライザのようなパラメーターを弄るとある程度調節はできる。

 しかし、AR(拡張現実)は、例えるならば、パソコン内部の非表示ファイルの様になっており、開くことはおろかファイルがあるかどうかさえわからない。


「どうやって調べたの?」

「時間で検索したんですよ。その時間に動いていたファイルを探して、そこから名前が怪しいのを手当たり次第って感じですね。兎に角、送るのでさっさと換装体を起動してください」


 説明されても全くわかる気がしない。

 だが、一回見てみなければ何とも言えない。僕はもう一度換装体を起動することにした。


 また終わった後に激痛がするんだろうなぁ




 

「【換装体起動】」


「そう言えばなのですが、これわかったところでなんか意味ありますかね」

「・・・確かに意味はないよね。まあ射程のギリギリにいたら躱せるかもってくらいだね」

「ミハイーラさんなら既に勘付いてるんじゃないですか?」

「うぐっ」


 わかったところで意味があるのか、というのは本質的な問いなのかもしれない。


「例えばさ、ソナーとか使ったら予知できたりしないかな?」

「ソナーですか・・・。可能性はありますね。あれなら微弱なガロンの反応も見ることができますけど、予知は流石に無理じゃないですか?原理とかは詳しくないですけど、撃つ前に空気中のガロンが活性化するとかそんな理由じゃないですかね」


 彼女の指摘はもっともだ。


「そのくらいのことなら、恐らくこちらの軍が把握していると思います」

「僕ら以外の戦闘ログも持っているからわかってるだろうね」

「面白そうなことがわかっただけ良かったんじゃないですか?私もちょっとスッキリしました」


 いや、待てよ。


「ねぇ、もう一回確認してもいいかな?」

「何をですか?」


 最初にレールガンの砲撃を受けた時は、ガロンの反応は




()()()()()()()()




 違う。




 ()()()()()()()()()()()()()()()



 最初に撃たれた時は、その前に遭遇した敵は補助兵装(パッシブ)を持っていた。言い換えれば、砲撃とは関係なかった。

 そして、敵味方の分からない反応が存在した。加えて補助兵装(パッシブ)を持っていない敵は、その後すぐに出現した。




 崖上・崖下の時はどうだった?


 敵を目視して「敵性のタグを認識してから、謎の敵性のガロン判断が出た」のではないか?







「敵の補助兵装(パッシブ)がレールガンの目印(ビーコン)なんだ」




「全部繋がった!」

「え、どう言うことですか?一人で解決せずに教えてくださいよ」


 僕は自分の考えをまとめる意味でも、マリンに説明を始める。


「そもそもレールガンって反動すごくなかった?」

「は?何言ってるんですか?」


 自分で解決したあまりに、説明が先走ってしまった。いきなり話が飛んだら誰だって分からないはずだ。今話している話題から解決するべきだった。


「えっと、今は敵のガロンの反応が増えたって話をしたよね?」

「だからそれはガロンに反応しただけであって」

「じゃあ、味方が武器を落としたら、どんな反応が起こる?」


「それは味方のタグが出るんじゃないですか?」

「多分違うと思う、一旦保留にして味方のガロンとの照合の後でタグが出ると思う。だって、味方のタグはガロンじゃなくて()()()()()()()()してるんだから」



 恐らく間違っていないか、遠くはない推測のはずだ。


 例えば”ソナー”を使用した時に視界外の複数の敵の位置がわかるのは、強いガロンの反応が出た時に、通信していない反応だから敵だと想定するからであって、ガロンの固有値を参照しているわけではない。


「あああああああああああああああ!!!!!!」


 どうやらマリンもどう言うことか分かってきたらしい。


「つまり、、、、敵と判断された人間が発信機とかを置くから、そこに敵がいるかのように反応が出るってこと?」

「その通り!」

「そこまでは分かったわ。でも何でレールガンの反動に繋がってくるのよ?」


 そこが味噌だ。


「逆に聞くけど、崖下の時に銅剣(コローネ)はどうして僕に当てられなかったの?」

「それは貴方がギリギリで避けたから、、、」

「あの威力なら僕の体に照準を直接合わせたら、掠っただけで、換装体だけじゃなくて僕の「本体」も十分破壊できたはず。君なら遮蔽物がほとんどない状況でレールガンを外すかい?」







補助兵装(ビーコン)が、レールガンの砲身を固定している・・・?」



「そう考えた方が自然じゃない?」


 遮蔽物がある状態で走っている人間の足をぶち抜ける狙撃手がいるのに、無い状態で少し動いた程度の人間を、外すわけないだろ


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