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20話 九星スロポス


 目の前で繰り広げられるレイチェルとスロポスの攻防。

 いや、第三者から見れば、レイチェルの方が圧倒的に押しているように見えた。

 その証拠に、全くの無傷であり攻撃の手を緩めないレイチェルに対し、スロポスの体には深くないとはいえ全身に無数の傷がつけられていた。


(クソっ!?

 こいつの剣技が凄まじいく、体中を傷つけられているとはいえ、深くは斬られていないはずだ。

 この程度の浅い傷であれば一瞬で塞がるはずなのに、どうして俺の傷は塞がらないのだ!?)


 スロポスはレイチェルの斬撃を必死に避けながら考えようと一瞬だけ意識がレイチェルから外れた。

 その瞬間、レイチェルの姿が完全に消え、スロポスがレイチェルが消えた事に気付いた時には、もうレイチェルは背後からスロポスを斬り下ろそうとしていた。


「し、しまった!?」


 スロポスは慌ててレイチェルの斬撃を回避しようと動こうとしたが、もう間に合いそうになかった。

 しかし、スロポスはオオカミだ。たとえ真っ二つに斬られたとしても死ぬ事はないと普通であればそこまで焦る事はない。

 しかし、レイチェルはスロポスの心臓を狙っていた。

 オオカミの心臓を斬ったとしても殺せない事をレイチェルも知っている。しかし、そこを斬ろうとしているという事は、そこに核があるという事だ。


(こ、ここまでか!?)


 スロポスは死を覚悟した。しかし、レイチェルの振り下ろした剣がスロポスの体を切り裂く事は……なかった。

 突如、レイチェルの剣がドロリと溶けてしまった。


「……!?」


 スロポスも斬られたと思っていたのだが、レイチェルの剣が溶けたのを見て、大声で笑い始めた。


「ぎゃははははは!!

 やっぱり、その剣には紋章魔法が刻み込んであったか!!

 紋章魔法の魔力にたかが鉄の剣が耐えられるわけがなかったんだよ!!」


 スロポスはそう決めつけていたが、レイチェルは自分の剣に紋章魔法など刻んだ覚え(・・・・・)がなかった(・・・・・)


 しかし、現にレイチェルの剣は何らかの魔力に負けて鉄の剣が溶けてしまっていた。

 こうなってしまえば紋章魔法が刻んであろうと、特別な力があろうと、オオカミはおろか、何も斬る事は出来ない。


(これは恥辱だ。

 確かに俺達オオカミを倒そうとすれば、銀の弾丸を脳に撃ち込むか、紋章魔法で倒すしかない。

 俺達の研究でも、斬撃武器には紋章魔法を刻む事は出来なかったはずだ。

 しかし、このガキは紋章魔法を刻んだ剣で俺を斬った。

 これは……。

 俺達にとっての脅威が増えたという事だ!!

 九星のプライドをかけて、このガキはここで殺しておく!!)


 実はスロポスは本気を出していなかった。いや、正確には本気を使えなかったのだ。


 オオカミにも実は序列というモノが存在しており、全てのオオカミの頂点であるオオカミの王を一星と呼び、それを守る八匹の特別なオオカミを八星として据えている。それらを合わせて九星と自ら名乗っているのだ。

 レベッカ達が過去に倒した魔王もこの九星に数えられており、スロポスよりも格は低い。


 九星達の力は、今の段階で他のオオカミ達と比べて圧倒的な力を持っている。

 しかし、九星は全力を出す事は出来ない。全力を出せば自らの肉体が滅びる可能性があるからだ。

 だが、スロポスは少しだけ力を引き出す事にした。その結果、自身にどう影響が出るかは分からないが、この場でレイチェルを殺す事を優先した。


 スロポスが魔力を少し解放しただけで、大地が震えた。しかし、それと同時にスロポスの体がギシギシと軋み始めた。


(チッ……。

 別の九星に全力を出してはいけないと言われていたが、少し力を引き出しただけでここまで影響出るとはない……。

 あまり長時間は戦えないが、武器を失ったガキを一人殺すくらいは容易いだろう)


 スロポスは刃部分の溶けた剣を果敢に構え迎撃しようとしているレイチェルを哀れに思うと同時に敬意を払い一撃で殺そうとした。その時。


「させない!!」

「あ?」


 スロポスの足にシャンティの無知が絡みつき、スロポスの後頭部に銃が突き付けられた。


「死ね!!」


 銃を突きつけたのはジャンだった。

 ジャンの弾丸には聖銀が使われていて、破壊系の紋章魔法が刻み込まれている。

 普通のオオカミ……いや、特殊オオカミでもこの弾丸を撃ち込まれれば無事では済まない……そのはずだった。


「痛ぇな……。

 脳にこんなもんぶち込まれたら、そりゃ痛いわな……」


 スロポスは自身の頭に指を突っ込み銃弾を取り出し、銃を突き付けていたジャンを殴り飛ばす。


「ぐはぁ!!」

「ジャン!!」


 スロポスはジャンを殺そうと、腕を振り上げた。が、その腕が振り下ろされる事はなかった。


「あ?」


 スロポスの腕が、突如はじけ飛んだ。

 スロポスは無くなった腕を見た後、何かが飛んできた方向を睨みつける。

 そこには、涙を浮かべ銃を向けているティルがいた。


「くははは!!

 魔力弾であれば、力を使った九星にもダメージを与える事が出来るってか?

 また一つ学習させてもらったよ!!」


 スロポスは腕を再生させる。

 ダメージを与える事が出来るといっても、レイチェルの斬撃の様に再生できないわけではない様だ。


「さて、随分と面白くない事を学習できたからな。

 お前等は俺の手で殺してやるよ」


 スロポスは魔力を使い爪を大きく変化させた。それと同時に、スロポスの背後に何者かが現れた。

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