幼なじみ男女バディのお話
よくある幼なじみ物を自分が書いたらどうなるのかなと思い書いてみました。初投稿なので読みにくい所もあると思いますがご容赦ください。※一部下品なシーンがあります。ご注意ください。
「おい、俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。」
人が行き交う街中で男の低い声が響いた。言われた男2人のうち1人はポニーテールがよく似合う少女の細い右腕を掴んでいた。
「ぁあ?」「・・・んだよ」
男達が声のする方へ顔を向けると、そこに長剣を携えた見るからに粗暴そうな風貌の大男が立っていた。顔には大小複数の傷があり眉間には皺を寄せ、今にも獲物に飛びかかる猛獣のような目つきで睨み付けている。
「ひっ・・・!」「いや、その・・・」
男達は一瞬怯んだが少女から離れる気配がない。更に険しい顔つきになった大男は一歩近づくと男達を見下ろす格好になった。大男が無言でじっと見下ろすと圧に負けた男達は汗を垂らしながら口を鯉のようにパクパクとさせ、漸く少女の細腕から手を離したかと思えば一目散に雑踏へ逃げていった。そんな男達の背中を見送りながら大男と少女は顔を見合わせ話し出した。
「気を付けろと言っただろう。まったく、武器も持たずに・・・。」
「ごめんってー。でも、私だけでもあんな弱っちそうな奴らやっつけられたよ?」
「街中で騒ぎを起こしたら駄目だろう。」
「ぅうっ・・・それはそうだね。助けに来てくれてよかったよ。ありがとう!」
少女は一瞬たじろいだが、すぐ満面の笑みになりお礼を言った。
「ん?ああ、まぁ――」
大男は少女の笑顔に照れて目を逸らしながら返答しようとしたが少女が言葉を遮った。
「で!俺の女って誰?誰なの?私?私?もしかして私?」
「あそこにいた女は私だけだったから私のこと?」
少女は目を輝かせながら立て続けに言った。大男は少女の勢いと先ほど咄嗟に出たセリフを思い出して慌ててしまった。
「え・・・と、その・・・だな・・・。言葉の・・・綾だ。現に奴らは退散したしな。うん、そうだ言葉の綾ってやつだな。」
大男は前半しどろもどろになり視線を泳がせたが、後半は自分の言った事に納得して頷いた。
「ふぅ~ん。そうなんだぁ。へぇ~。」
少女は訝しみながら大男の方を見ると、彼は気まずそうに眉を下げ叱られた子犬のような表情になっていた。そんな彼を見てからかいすぎたと思った少女は慰めるように背中をポンポンと叩いた。
実は2人は同い年だが、大男・・・もとい少年は背も高く顔も強面なのでいつも年上に見られている。2人は同じ町で生まれ育ち、家も離れていないので幼い頃はよく遊んだ。顔が怖いからと仲間に入れて貰えない事もあったが明るく活発で周りから好かれていた少女のおかげで、皆と一緒に遊ぶことが出来た。
(感謝しているんだ・・・本当・・・。一緒に冒険出来ているのが今でも信じられない・・・。)
16歳になった時に冒険者となるべく近隣の市町村合同でトライアウトがあったのだが、少女と適性が合ったのでバディを組む事になった。ただ少女は他にも誘いがあったのだが、それを断って少年と冒険に出る事を選んだ。
(なんで俺なんかを選んでくれたんだ・・・。憐れんだのか?そういや、子どもの頃も隅っこにいた俺に声をかけてくれて仲間に入れてくれたっけ・・・。)
歩きながらぼんやりと昔を思い出していると数歩後ろから少女の声が聞こえてきた。
「おーい、聞いてる?まだいじけてるの?さっきのこと気にしてる?ごめんね。」
「ええっ?いやそれはもう平気だが・・・。」
「ふーん?そうなの?じゃあなんで宿の前を通り過ぎちゃったの?」
はっとして少女のいる方を見てみると冒頭の事件が起きる前にとった宿があった。
「・・・大丈夫?」
少女は少し眉間に皺を寄せ顔をのぞき込みながら心配そうに言った。
「ああ、すまん。ぼっとしていた。」
「そう?それならいいんだけど。」
部屋に戻ってきた2人はそれぞれのベッドに腰を下ろした。・・・そう同室である。
(意識されてないんだろうなぁ・・・)
ハァ、とため息をついたら耳ざとい少女が反応した。
「さっきから変だよ。本当に大丈夫?何か心配事でもあるなら聞くよ?」
「(誰のせいだよ!)大丈夫だって言ってるだろ。」
「全然大丈夫そうじゃないから言ってるんじゃない!」
「あーもう五月蠅い。少し黙っててくれ。」
「なにそれ!ちょっと話してくれてもいいじゃない!」
「なんだよ。しつこいぞ。」
「しつこいって何?明らかに様子がおかしいのにほっとけって?」
「だから!俺の中では解決してるんだからほじくり返さないでくれ!!」
「・・・・・・ごめん、なさい・・・。」
怒声の後、一瞬静まり返ったがすぐに少女からポツリと謝罪があった。
(しまった!やっちまった!何言ってんだ俺!馬鹿なのか俺!)
(ああ、クソッ!)
なかばパニックになりつつ、恐る恐る少女を見ると俯いていて表情が伺えない。泣いているのかもしれない。どうしたらいいのか分からず手をこまねいていると、
「フンッッ!!」
何を思ったのか少女が鳩尾あたりに突進してきた。少女の頭が腹にめり込む。
ぐえぇ、と首しめられたアヒルのような声が出てしまった。突然の出来事に驚き状況を把握しようとしていると更なる衝撃があった。マウントポジションをとられたのである。殴られると思い歯を食いしばったが全く予想外の事が起きた。
「ほじくり返してやる~まずは鼻くそほじってやる!」
「?!!!」
事もあろうか少女は少年の鼻の穴に指を突っ込もうとしてきたのだった。意味が分からなすぎて慌てふためいた。
「ぬぁにすんだこんにゃろ!」
「このバカヤロの鼻をほじってやるのだ。大人しくしろ~。」
「ふっざけんなやめろって!」
最初は執拗に鼻を狙われていたが次第に顔の傷をなでだした。
「・・・こんなに傷だらけになっちゃってさぁ、なんでいつも無茶ばっかするの?なんで1人で突っ走るの?ちょっとは私に頼ってよ・・・。」
「・・・・・・。」
少女の顔を見ると涙ぐんでいた。今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
(いつも笑顔なのに・・・こんな顔はじめて見た・・・・・・。)
(いや、子どもの頃に転んで泣いていたか?でも本当にそれぐらいだな。そういや、あの後どうなったんだっけ?)
「隙あり!!」
「ぬぉっ!」
鼻の穴に指を入れられそうになったがなんとか回避出来た。まったく油断も隙もない。ちぇ、と短く言いながら少女は少年の体から降り、自身のベッドに戻って行った。もう鼻の穴を狙われる危険はなくなったようだ。
「惜しかったな~。」
「くそっ、騙されるとこだった。」
「まだまだ修行が足りませんなぁ。」
ふふんと得意気に言うものだから少年は怒る気がなくなった。暗い気分を引きずりがちな少年の心をいつもこんな感じでに切り替えてくれるのだ。
(いい加減な奴だと感じる輩もいるだろうけど、これでどれだけ救われたんことか。この外見だって前ほど嫌じゃなくなった。さっきの野郎2人を追っ払うみたいに使えるしな。)
(あいつにこの気持ちを伝えたらどうなるんだろう。解散かな。気持ち悪がられるかもな。)
ハァとため息をつき
(・・・それはちょっと耐えられないな。)
「あ、またため息ついた。」
「はぁ~~」
誤魔化すためにわざと長く息を吐いてみた。
「本当に大丈夫だ。何かあったらちゃんと言うから。」
「ん~、本当にぃ?」
「ああ、本当だ。」
「その言葉信じるからね!」
いつかちゃんと言おうと少年は心に誓った。どんな結果になっても後悔しない。今より身も心ももっと強くなって少女に認めて貰えるまで心に秘めておく。
(ん~やっぱり忘れてるんだ、あの日のこと。そうだよねぇ。ちっちゃかったもんねぇ。)
小さき日の約束だ。転んだ少女を負ぶって家まで連れて帰ってくれた時の・・・。
『これから先ずっとずっと一緒にいてくれる?』
『いいよ。ずっと一緒だよ。』
最後まで読んでくださりありがとうございました。追記2020/03/21に加筆修正いたしました。また読み返した時に気に入らない箇所が見つかったら書き直すかもしれません。