おはよう
軽い電子音が、部屋の中で鳴り始めた。
僕はくらくらする頭を抱えながら、枕元で懸命に僕を起こそうとする目覚まし時計の頭を叩いて、黙らせる。
ぼやけた目をこすって静かになった時計に緑色の文字を読む。七時半、休日にしては少し早く起きすぎたのかもしれない。
朝日はレースのカーテンを通り抜け、柔らかく僕らを包み込んでいた。
腰を起こして、隣で寝ている僕の恋人を見下ろす。
長い髪が口元にかかっていて壊れものを触るように、そっと拭った。
陶器のような白い肌は、それでも温かな温もりを僕の指先に伝える。
すずめの鳴き声が聞こえ、隣の住人がクラシックの音楽をつけたのがわかった。オンボロアパートだから、壁が薄いのだ。
昨夜の情事も漏れていたらと少し気になったが、それでも構わないか。と思い直す。大して面識があるわけでもないし、ほんの少しだけ誇らしい気もちにもなる。
そんな感情が良いとは思わないけど、悪いとも思わない。
薄い布団も散らかった部屋も、昨夜の名残を僕達に伝えようとしているようでどこか気恥ずかしい。
ひとりでのんびりの休日の朝も良いけど、二人で静かに過ごす朝も捨てたもんじゃない。
幸せの余韻に浸る僕は、ふと見た彼女の首筋に赤い跡が残っているのに気がついて、一人赤面する。
彼女に教えたほうが良いだろうか、そっとしといたほうが良いだろうか。
照れ屋な彼女のことだ。きっと怒られるに違いない。
悩んでいると、んっと彼女が小さく呻く。ほんとに小さな音で、その音に近づける距離に僕がいることがたまらなく嬉しいし、幸せだと思う。
ぼんやりしているともう15分経った。
そろそろ起こさないと怒られそうだ。
でもなんとなくこの時間が惜しいという気持ちもないこともない。昨夜のことを思い出すことは、簡単かもしれないけど、今のこの感覚をいつも思い出すってのは難しい。
幸せなんて通り過ぎてからしかわからないと漠然と考えていたけど、案外簡単に見つけられるものなのかもしれない。
なんて柄にもないことを考えながら、そっと彼女の体を揺する。
でもなかなか彼女は起きようとしない。
ため息を吐くけど、嫌なため息ではない。このままでもいいけど、そうもいかないだろう。 幸せが永遠なんてことは決してない。
終わりがあるから、始まりがある。だからきっと幸せだと感じれる。
だから今僕が出来ることは、彼女を起こすことと、僕を彼女より早く起こしてくれた朝日と時計に感謝すること。
僕は朝日にそっとお願いをしながら、彼女の耳元でささやく。
「おはよう」
今日も、いい日になれますように。
変な小説書いてすいません(汗)




