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『貴方が私の話に少しでも耳を傾けてもらえることを願っています。だって、そうでしょう? 脱獄の方法は陳腐で、しかも悪党の物語です。それでも読むんですか?』
ついにRは作戦を決行することにしました。
いつものように、看守の下らない愚痴を聞いていました。狙いの看守は愚かにも、鉄格子の近くで愚痴を始めました。部屋の鍵もジャラジャラとポケットから出していました。
鍵を確認したRは、もっと近くで話を聞きたいと看守に言って、鉄格子の近くまでおびき寄せました。
あとは簡単でした。油断した看守を、鉄格子の隙間から首を絞めて昏倒させました。
ポケットからは鍵が出ています。少し手を伸ばしただけで届きました。
あぁ、やられてしまいました! 鍵のかかった鉄格子の扉に、鍵が合いました。ガチャリと小気味良い音がしました。
Rは思ったでしょう。やった! 上手くやったと!
Rが鍵を開けて、部屋を脱出しました。
あとはまっすぐと廊下を渡れば、外に出ることができます。
作戦通り、受刑者用の運動場へ到着して、外壁を登りました。僅かな凹みを伝って、Rは逃亡することに成功しました。
『正直に言います。この物語を進められると私が困るのです。大した物語ではないでしょう? 私にこの結末を語らせないでほしい、まだ間に合う。だからここで読むのを辞めましょう?』