-aki-第3章
あきらくんの過去はここまで
彼女と出会って幸せに浸ったのもつかの間、このままでは結婚ができないと気がついた。
今の世の中で、10歳以上も離れての結婚など殆ど有り得ない。30歳で結婚が義務化されているので20代の内でしか恋愛結婚ができないようなものだ。
大方の人が高校か大学で出会った相手と妥協して結婚してしまうらしい。
ぞっとした。
今彼女は24歳辺りだろうか。
カフェで働いている彼女と話す男性が、急に全て敵に見える。
やめて、彼女にそんな風に楽しそうに話しかけないで。
彼女は……。
だが、中学生の僕は何も持っていなかった。
何気なく触れた財布の中に、昨日父親がくれた一万円札がある。
「…………」
中学生の僕には何も無い。
しかし、僕の両親は、たくさんの色々な物を持っているひとたちだと知っている。
僕の事に一切興味を示さなかった両親だ。
でも、彼女を手に入れるためには彼らに協力してもらわなければ確実に結婚はできないだろう。
今までは、彼女の存在だけが僕を救ってくれていた。
でも、今後は僕が彼女を支える存在になってみたい。
だから、帰って両親に話をしてみる事くらいたやすい事なのでは無いかと思った。
そうだ、まずは、彼女の周りを調べてみたい。
彼氏はいないだろうか。
仕事先は決まっているだろうか。
ほら、全て気になる。
両親に話をしたら叶うかもしれない未来だ。
その時目の端に『素晴らしい老後』のポスターが映り込んだ。
「…………あははっ!」
そう、そうだ、誰にも平等に素晴らしい老後が訪れるならば、僕も、運命の相手と結婚するべきなんだ。
では、その為の準備を始めるとしよう。
両親は仕事ができる人間が好きなんだ。
まずは勉強を、次に周りの評価を完璧にしてみせよう。
そうだ、彼女を一時的に『保管』してあげる檻も用意してあげなければ。
ゲームの開発に関係があれば父親は喜んで一緒に考えてくれるだろう。
でも彼女は、勉強も、気遣いもなんでも完璧にできる人間だった。もし大手企業に就職なんかしたら、そこでステキな出会いを果たしてしまうかもしれない。
これは、母親に言ってみよう。
あの人は、有名な通訳をやっていると言っていた。
かおりさんは英語関係の大学院に行っているらしい。ならば、母親と関わりがある会社に就活に行く可能性が高いのではないか。
「…………はは、いけるかもしれない」
数年間だけ、彼女の希望とは沿わない仕事かもしれないけど、その後は母親経由で幾らでも仕事が見つけてあげられるだろう。
そうそう、一度落ち込んだ人間の方が、ほんの少しの優しさに流されてくれるはずなんだから。
カフェを眺めていた僕は、頭の中で今後数年間のパズルを組み立てる。
ああ、なんて素晴らしい。
隣で、貴方が笑って過ごす未来を絶対に、実現してせるよ。
この僕の浅はかな考えが実行されたのは1年後のことだ。
それは、薫さんが就活に失敗し、英語の家庭教師として塾の講師になった年と同じ年の出来事だと言うことは、一生の秘密である。
かおりは、外見を正確に教えていないのに、何故自分だと知られたのかを気づくべきでした。
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