GWOの定期演奏会
お久しぶりです、庭城です。
更新がまる1か月も止まってしまい、申し訳ないです。
単純に忙しさと怠けの波状攻撃で進めれなかっただけなんです……。
ゆっくりとではありますが、更新をしていきますのでブクマの解除――暫しお待ちを!!
……存在自体忘れられていた可能性の方がたかいですけど(笑)
『――ただいまより、ガイセン・ウィンド・オーケストラ――GWOの定期演奏会、『the proof of the musics is in the listening――論より証拠』を開演いたします』
低音声の心地よい声のアナウンスが入る。
ステージの緞帳が上がり、舞台に明かりが灯される。そこには学生服をきっちりと着こんだGWOの部員が直立している。
こうしてステージ上に上がっている凱旋の人達を見ると、改めて男性部員の数に驚く。男女比は普通はこれが逆なんだけどね。
会場の拍手と共に登壇したのは、カッコいいスーツを着込んだ若い男性だった。
あれ……?あの人って学生指揮者の人じゃなかったっけ?
若い男性は一礼すると、背を私達に向ける。そして……指揮棒を振り下ろす……!
私は急いでパンフを開き、プログラムを確認する。
夏の大会の自由曲、『アルカディア』。少年がアルカディアと呼ばれる楽園に辿り着くために様々な困難を経て夢の土地に辿り着く、ドラマティックな1曲――と書かれている。
初めて聞く曲であった。
吹奏楽において、自由曲は山のように存在するので知らない曲の方が多い。
力強く、重厚なサウンドは流石高校生といった感じだ。曲もこの高校に合っている。
演奏が終わるとホールに大きな拍手が挙がる。
指揮者が一礼すると、アナウンスが入る。
『――ただいまの曲は今年度の吹奏楽コンクールで演奏致しました『アルカディア』です。諸事情により指揮者である本吹奏楽部顧問の争覇翔子に代わり、見事に指揮を振ったのは――1年、学生指揮者の鷹谷大志です』
鷹谷さんはもう一度頭を下げて、少し口角を上がる。
会場からは少しどよめきが走るがすぐに拍手へと変わり飛び交う。無論、私と優里もだ……!
「……あの人、只者じゃないね」
優里は小さく耳打ちをする。私は頷きで返す。
驚いたが……何故かこの高校なら納得してしまう。
その後の演奏は顧問の先生が指揮を振った。凄く綺麗な女性顧問だった。
曲の説明中に学生服を着た鷹谷さんが下手から入ってくる。見事な早着替えである。
10分の休憩後、第2部が始まる。
ドラムの後ろ側に設置してある大型のスクリーンから、『これで最後!3年生オンリーステージ!』と大きく出ていた。パンフにも書かれているが、3年生のみのステージがあるんだ。珍しい。
基本的に定期演奏会で3年生の引退曲を演奏する学校は多い。――が、1ステージ使う学校は珍しい。
本当に他と違って面白いな。
暗いステージからピンスポットライトがベースに当たる。ベースソロからの始まりだ……カッコいい!
スクリーンには縦で分割されたベースとドラムの部員の表情が映っている。カメラもしっかりと準備してあるんだ……。吹奏楽っていうよりプロのバンドみたい。
でも演奏はプロレベルじゃないかと思ってしまうくらいに圧巻だった。
自分の中学のレベルと比べると雲泥の差だ。高校生ってレベル高過ぎるなぁ。
T-SQUAREメドレーとスクリーン上にタイトルが表示されているこの第2部は、聞いていて心地よかった。
計3曲の演奏で、演奏中の3年生はみんな楽しそうで『引退』なんて言葉が浮かんでこない、いいよねこういう雰囲気。
しかし、最後の曲『明日への扉』では、演奏中に後ろのスクリーンに3年生紹介がアニメのように流れる。
1人1人、紹介される度にピンスポットライトと拍手が起こる。
3年生はライトが当たるとお辞儀をする。1人ずつソロを吹くわけでもなく普通に演奏をする。
このバランスが丁度いいなと少し上から目線で思う。失礼かな?
「何かスカパラみたいだよね」
優里がそう言う。私はそれだと相槌を打つ。
この高校の演奏スタイルは他校と違いソロの時に席から立つことや楽器をスイングしたりする一般的な演出を一切しない。
ただ楽しそうに演奏をしている姿を見ている。――でも、それがいい。とことん他校と違うことをしてくれるのは、また違った演出方法であると思う。
基本的な演出をしない演出……。なんだか変な言い回しだけどしっくりくる。
***
3年生のステージが終わり休憩が入る。
私と優里はトイレが混む前に急いで席を立った。演奏会あるあるである。
トイレから出るとエントランスから黄色い声があちこちから聞こえる。私達の様に吹部関係の女子が感想を言いあっている。
「――大人気ね~大志は」
「大志ではなくてGWOが、だろ」
どこかで聞いたことのある声だと思い視線を向けると、そこには凱旋の文化祭で出会った鷹谷さんの知り合いの2人だった。
「ん?あれー、この間の」
双蘭の元部長さんは私達に気が付くと、綺麗な笑顔を見せて手を振る。
私と優里は急いでお辞儀をする。覚えてくれていたのか。
「そんなかしこまらなくてもいいよ。やっぱりきてたんだね」
「はい、楽しませて貰っています」
私がそう言うと元部長さんは「嬉しいな~」と言って微笑む。本当に綺麗な人だなぁ。
「この後は3部のステージだね。きっと面白い演奏を見せてくれるだろうね」
彼氏さんは凛々しい顔つきでそう言う。鷹谷さんのお兄さんも相変わらずのカッコよさだ。羨ましすぎるカップルだ。
「さあ、休憩時間もそろそろ時間だ。戻ろうか」
『はい!』
私達は背筋を伸ばして反応する。そこまでしなくていいのに、と言いたそうな顔をしていたが身体が勝手に動いてしまったから……しょうがないです。
***
第3部もスタートから凱旋らしさMAXだった。
薄暗いステージから鮮やからライトが曲に合わせて差し込まれていく。
パーカスと木管のトリルがドラムに合わせて段々と大きくなっていき、舞台の明かりが明るくなると鷹谷さんがポーズを決めて指揮棒を構えていた。
「うひゃぁー、カッコいいね!」
「知らない曲だけど凄くいいね。何の曲だろう?」
スクリーンには『strange voice』と出ていたが知らない……でもカッコいい。
おそらくこの後もこんな感じで知らないけれどカッコいい曲が続くんだろうなと思った。
次も知らないけれどカッコいい曲が演奏されてMCが入る。
ドラムの部長の天道さんとベースの須藤さんが曲紹介や会話で場を盛り上げる。
「――というわけで、GWOの演奏を最後まで存分に味わってください!!」
天道さんはそう言って、ドラムを叩き始めて曲が演奏されていく。
知っている曲や文化祭で聞いた曲などが演奏されていく。
文化祭でも聞いた『Blurry Eyes』では、また鷹谷さんのホイッスル投げの演出が披露され、会場から黄色い歓声が響く。
見事キャッチしたのは先程話しかけてきてくれた双蘭の元部長さんだった。「大志ー!」と嬉しそうに手を振っている。……もしかして狙って投げた?まさかね。
「――今度はホルンソロ?」
私と優里は相変わらずGWOの変則的なスタイルに翻弄されていた。勿論いい意味である。
基本的にソロと言えば、トランペットやサックスなどの吹奏楽の花形がやることが多いけれど、GWOのソロはホルンだったりユーフォだったりクラリネットだったりと、普段聞くことが無い楽器のソロが多くて面白いのだ。
MCは部長と副部長の2人が進行役となり、3年生に話を振って会話をしていく。これも上手で会場から笑いが絶えない。
***
『Blurry Eyes』が終わった後、MCが入る。
「――どうよ関ちゃん、これで最後ですよ俺達?」
「……まあ、そうだね……」
「おいっ!何か思うことないのかよ」
あははと会場から笑いが漏れる。
「えーと……よくさ、一生に一度って言葉あるじゃない」
「おうあるな」
「卒業式とか修学旅行なんかで言うよな」
副部長の須藤さんが上手く相槌を入れる。オーボエの関さんと言う人は「そうそう」と頷く。
「今日だって一生に一度の日なわけだけどさ……何気ない一日……たとえば普通の練習の日だって一生に一度な訳でしょ?だから今日が特別だとは思わないかな」
「……カッコいいこというね、君。でも、最後ですよ?俺達がこうして演奏出来るのは」
「……まあね」
「……自動車学校に早く行きたい?」
須藤さんが低い声で小さく尋ねる。
「まあね」
『あっはっは……!!』
「おい!」
「冗談だよ」
「勘弁して下さいよ?――で、最後に何か一言あります?次の曲にいっちゃうけれど」
「ないね……早く吹きたい」
関さんは薄く笑ってマイクを手放す。
「――はい!どうでしょうか、個性豊かな3年生は。メンバーに振ってきましたけれど関君で最後となりました、と同時に次で最後の曲となります」
「あっという間だな」
「楽しい時は過ぎるのが早いですなー。……3年間部活動を続けてきて思うことが1つあってさ、言っていい?」
「いいよ。というか、言わないと。最後なんだから」
「部長の俺が言っていいことではないと思うし、ここで言うなと思ったんだけど……関ちゃんが美味しいところ持って行こうとしたじゃん?だからさ――」
「早く言えよ、巻きが入るぞ」
「はーい。こうして定期演奏会を開くことが出来て、演奏が終わる度に思うことが部活を辞めないで良かったってことなんだよね」
「…………うん」
「正直ね、辞めたいと思ったことって結構あって。楽しいし部員も良い奴等ばっかりだけどさ、毎日楽しいことなんてないだろ?やってらんない時もあるし、なんでわざわざ大変なことしなきゃなんねーんだよって思う」
「わかるよ」
「だけどさ……1年の集大成である定演をやると毎年「ああ、続けていて良かった」って思う。お客さんがいるとこで絶対に言うべきじゃないんだけど辞めてった部員っているだろ?」
「本当に言っちゃまずいやつだな……まあ、いいか」
「あいつらの気持ちも凄いわかるんだけどさ、辞めるなよって改めて思ったね。ここで演奏する度に、俺の場合はドラムを叩く度に頭を過る。後輩達には俺の言葉を覚えておいて欲しいね……」
「凄く良い言葉ありがとう。でも天ちゃん……打ち上げでも良かったんじゃないか?」
「やっぱり?あはは、ごねん!どうしても関ちゃんに勝ちたくて」
「ったく!部長、最後の曲振り頼む」
「応!それでは聞いて下さい。オーメンズ・オブ・ラブ」
***
「えっ、嘘でしょ?」
私は思わず独り言を漏らしていた。
『ありがとうございました!!』
オーメンズ・オブ・ラブの演奏が終わりGWOのメンバーは深くお辞儀をする。
この後の展開は言うまでもなくアンコール……ではなかった。
観客席からのアンコールが微かに聞こえてきたと思ったら、緞帳が下がっていくのだ……!
GWOのメンバーは緞帳が下り始めるのを確認すると、直立を解いて、私達に手を振って「ありがとう」と口を動かす。
緞帳が下り切ると、『――以上で定期演奏会を終了致します』とアナウンスが入る。
観客席からはどよめきのような声にならない音が響く。
アンコールをやらない吹奏楽部なんてあるの!?そこまで他と違いをつけなくても……。
私達の困惑とは裏腹にアナウンスは進行していく。
周りは帰ろうかどうするか反応を見ている。ここに来ている人は大体吹奏楽の暗黙のルールを知っている。だからか、動くに動けない。
すると――、パチパチと広いホールの中で手拍子をする音が聞こえる。
みんなが一斉に音の出所に目線を向ける。こんな視線の集まることを出来る人は誰なんだ?という気持ちで私も首を動かす。
手拍子をしていたのは、双蘭の元部長さんだった。
美しく凛々しい顔つきの女性は、周りの視線など気にすることなく手拍子を続ける。……私には絶対真似できない行為だなぁ……。
横に座っていた鷹谷さんのお兄さんも微笑を浮かべた後、手拍子を重ねる。
ゼロからイチにするのは大変なことだけど、イチからジュウにするのは難しくない。
1人、また1人とは手拍子の音が増えていく……。
「優里……!」
「やりますか!」
気付いた時には会場中から手拍子とアンコールが聞こえていた。
『…………アンコールありがとうございます!!暫く、お待ち下さい!』
スピーカーから聞きなれた声が聞こえた。天道部長さんだ……!
そうこなくちゃね……!
私は優里と顔を合わせて笑う。
***
緞帳が上がると、メンバーが上手から手を振って登場する。拍手に迎えられながら自分の席に座る。
『ありがとーう!!』
もの凄く嬉しそうにドラムを叩いて天道部長は言う。こちらから見ていても嬉しそうだ。そしてドラムを叩き始める。
指揮者である鷹谷さんが慌てた様子でみんなに指示を出していく。これも演出なのかな?まさか本当にアンコールを考えていなかったとか。それはないよね……。
鷹谷さんがアイコンタクトをとるとベースがカッコいいメロディを弾き始める。
相変わらず曲は分からないけれどカッコいい。
演奏が終わると次の曲になる。アンコールが1曲だけじゃない?普通は1曲やって終わりなんだけど……もうこの高校には関係ないんだよな、そういうの。
2曲目に演奏された曲はスクリーンに表示されていた、アイアンメイデンメドレーと出ていたけれど……やっぱり知らない。ディープパープルメドレーなら知ってるんだけどな、ディープパープルってなにか知らないけれど……。
曲は言わずもがなカッコいい。そして、曲中にメンバーがコーラスを入れるところがあり驚いた。
男性が多いからか、野太い力のあるコーラスだ。見ていて飽きないなぁ。
「……今日は本当にありがとうございます。皆さんがアンコールをしてくれなかったら僕達は今ここに立てていません。半分賭けだったんですけれど、良かったです。さあ、次で本当にラストです!悔いのないように全力で演奏します!聞いて下さい!!」
天道部長の合図で最後の曲『霞みゆく空背にして』が演奏された――こうして、GWOの定期演奏会は大盛況で終了した。
***
「――で、決まったの?」
帰り道、優里が私の顔を覗いて笑う。私は――
「うん、決めた」
と、笑顔で返す。
来年……あの舞台で演奏すると決めたのだ。あの黒いジャージを着こんでね……。
暑い日が続いておりますし、最近の状況的にも苦しい日が続いております。
それは吹奏楽にとっても同じことで、とても残念なことになってしまいました。
僕が前にそのことに触れたのは第72部分『終わりと始まり』の時です、4月の終わりごろですね。
警鐘を鳴らしていても、結果が伴わないこともありますよね。
現在、学生の方達は本当に悲しいこととなっているでしょう。
『やりたいのに、やれない』本当に辛いですよね。辛いですが我慢です。
厳しいのは重々承知ですが、お互いに気を付けていきましょう。




