ゲネプロ!!
お待たせです!!(待ってないです)
セットリストとストーリーで結構悩みました。
本番まで残り1日。
今日は最初から最後まで通すリハーサル――ゲネプロがある。
衣装は勿論、館内アナウンスから休憩時間など、全てを本番さながら通していく。つまりは……、
「やっぱりこの衣装があるんですね……」
「当然だろ」
衣装係の寛太さんは鼻を鳴らして、俺が着る衣装を触る。
そう、1部の『アルカディア』では、大会と同じクラーク仕様の指揮者服を着て指揮を振るのだ。そして、演奏が終わったら急いで学生服に着替えて次の曲に備えなければならない。
「上手から入退場をするから、演奏が終わって舞台から優雅にはけた後、ダッシュで着替えて下手側に回る。いいな?」
「はい、何回かのリハでコツは掴めました。かなり大変ですけどね……」
俺が苦笑いをすると「美味しいところだろ?」と天馬さんが喉を鳴らす。
「俺が手伝ってやるんだ、安心しろ」
寛太さんは気怠そうな眼をしながらも、しっかりとサポートをしてくれる。本当に名サポーターだな。
わざわざリハーサルに参加して、サポートまでしてくれるのだ。感謝しかない。
「……ところで寛ちゃん、例のヤツ出来た?」
「……ばっちりだ、何のためにわざわざこんな面倒な所に来たと思ってんだよ」
……うーーむ、聞かなかったことにしよう。って、また例のヤツか……。
***
『――ご来場誠にありがとうございます。館内での……』
ついにゲネプロが始まった。動画部の安元さんが低くていい声でアナウンスを入れる。こういうのは大体女性がやるイメージなんだが、安元さんが上手過ぎて違和感がない……とうか、本当にいい声だな。何か男の人がよってきそうな声だ……。
舞台が明るくなり部員は楽器を構えて正面に身体を向けて直立している。
俺はスタッフの合図でゆっくりと上手から登場する。
観客席にいるOBや動画部の人達からまばらな拍手が聞こえる。これが盛大に挙がることを期待しよう。
指揮台の傍まで歩き、丁寧に一礼をする。
そして振り返り部員達を両手で座るように合図を出すと、一斉に音をなるべく出さないように着席していく。
俺は手の甲で小さく指揮棒を3回叩き、指揮棒を構え――振り下ろす……!
ゲネプロスタートだ……!
***
演奏が終わり、アナウンスが曲紹介をしている内に急いで服を脱ぎ、学生服を着こむ。
遅刻寸前の学生でもここまで鬼気迫る着替えはしないだろう。俺は人生で初めてしている……。
着替えが終わり、下手からしれっと着席してスタンドに置いてあるバリトンを取る。――よし、とりあえず成功。
1部は無事終了となり、10分間の休憩だが、俺達にはそんな余裕はない。
舞台の準備、着替えをしなければならないからだ。……そして、俺達は驚愕する。
「へっへー!どうだ、この衣装!!」
天馬さん達3年生の衣装だけ、今まで見たことのないTシャツに変わっていた。
そうか、このために寛太さんがわざわざ来たのか。
丁度いいVネックのシャツに定演のタイトルといつものワッペンが付いている服を見て「やると思ってた」と小さな声がどこからか聞こえてくる。正直、俺もだ。
「さあ、第2部!お前等俺達の演奏じっくり聞いておけよ!?」
3年生はテンションを上げて舞台に向かって行く。俺達は控室に付いているテレビでその様子を見ることになる。
「俺達は休憩あるからいいけどさ、3年は結構きついよね」
新美がテレビを見ながらぼやく。確かにな……、
「でも……楽しくてそんなの忘れちゃうんだろうな」
と、俺が言うと新美は「だね」と小さく笑う。
***
「ああーーきついきつい……!誰だよ3年オンステージにした奴」
「お前だろ……!」
ボロボロにK.Oされそうな顔をして3年生は控室にやってくる。
みなさん辛そうだが、部長・副部長もとい――ドラム・ベースの疲労はかなりのようだ。玲哉さんのツッコミにキレがない。
「――さあ!あとアンコール含めて12曲!頑張ろうぜ」
スポーツドリンクを飲み干して高らかにそう叫ぶ。3年生は勿論……、
『やる気削ぎ落とすんじゃねぇぇ!!』
と、言うのだった……。
第3部はポップスステージとなるのだが、昨日まどかさん達がぼやいていたように曲の難易度が高く、全体的に忙しい。
オープニングはロックバンドのジャンヌダルクから『strange voice』、『Mr.troublemaker』が演奏される。『Mr.troublemaker』のベースソロは圧巻で観客も喜んでくれるだろうな。
他の曲もアップテンポな曲が多く、しんみりとしたのを好かないGWOらしいセットリストとなった。
ちなみにセットリストはこんな感じだ。
1:strange voice
2:Mr.troublemaker
3:Break into the Light~約束の帽子~
4:Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)
5:Vivid Colors
6:The Fourth Avenue Cafe
7:TAKARAJIMA(宝島)
8:Blurry Eyes
9:オーメンズ・オブ・ラブ
encore
10:Paradise Has No Border
11:アイアンメイデンメドレー
12:霞ゆく空背にして
以上の12曲だとなっていて、大体2曲ずつでMCが入るような流れになっている。
アンコールが3曲もある吹奏楽部はきいたことがないな。本気のアンコールをしてくれなかったらどうするんだろうか。
アンコールといえば、アイアンメイデンメドレーは是非聞いてもらいたい。
この曲は佑都が「吹奏楽ってディープパープルメドレーはあるけど、他のないよな。他の作っちゃうか?」という半ばおふざけな発言から生まれた経緯があって記憶に残っている。
しかし、曲の完成度は高く、これから流行るんじゃないかとも思ってしまう。
曲は『Run To The Hills』、『The Trooper』、『Fear Of The Dark』の3曲で構成されている。
中々面白い演出が組まれており、演奏中につい夢中になってしまった。
不安は残るが、ゲネプロが無事終了した。
暫くの休憩後、動画部が撮ってくれた映像をみんなで視聴して最終確認をする。
演出のバランス、曲の出来など。……こうして映像になった状態で演奏を聞くと音程が悪かったり、綺麗な音が出ていなかったりと反省させられる……が、全体的に面白い構成となっていた。
「――さ、今日は早めに終了して明日の本番に備えよう!……と言いたいところだけど、今の内に見ておきたいものがある。新房!!」
「はいはい」
新房さんはパソコンを操作して、舞台に付いている大画面のモニターに映像を映し出す。
「……演奏中じゃ見れないしな、最後にみんなで見ようじゃないか!」
最後の曲中に後ろで流れる映像をみんなで眺める。
今まで撮ってきた写真、動画。練習風景から遊んでいる時の写真など……思い出がいっぱい詰まった映像が流れる。
どこからか鼻をすする音が聞こえるが、俺は顔を動かすことはしない。ただ、じっと映像が尽きるまで思い出を眺めているのだった。
さあ、明日は本番だ。
ラルクとジャンヌダルクの曲が多い気がしますが、僕が好きなんで許して下さい。
「どんな曲?」と思った方は是非検索して聞いてみて下さい。
GWOらしいとおもうはずです。




