スポンサー
前回の話、追記しました。ご覧になっていない人は是非……!
今回も追記するかもです。分けるか、1話を多めにするか悩みどころですね。
*追記しました。
ちなみに文化祭で出た『H.T.』はトライガンという僕の好きな作品のオープニング曲です
humanoid thyphoon の頭文字ですね。……知ってるか(笑)
文化祭も無事?終わりを迎え、いよいよ定期演奏会に向けての準備に入る……。
「……このパンフレットを見ると、何だかしみじみとくるね」
徹さんは定期演奏会で来場者に渡す凱旋のパンフレットのタイトル『the proof of the musics is in the listening』を見て考えに浸る。
長いタイトルだが意味を聞いてみたところ、『論より証拠』のことわざの英語訳を吹奏楽風にアレンジしているのだとか……。相変わらずと言うか、いちいちお洒落なことをする。
パンフレットのデザインもポスターも寛太さんがデザインを担当している。なので……
「……パッと見、吹奏楽のポスターに見えませんよね……」
ポスターには3年生の楽器を演奏しているシルエットが写っていて、パンフレットの表紙にも入っているGWOのシンボルであるペガサスのエンブレムがイラストされている。
相変わらずの器用さである。
「でもこういった特別感というか、マイノリティーな姿勢が凱旋らしくていいよね。最後の演奏会か……あっという間だったかな?」
徹さんは自分に問うようにクスリと笑う。
その笑顔には大変だったこと、辛かったこと、そして……楽しかったことを思い出しているように見えた。
良い演奏会にしよう。これが3年生と演奏が出来る最後の舞台なのだから……。
***
時間は戻り夏休み中の出来事である。
「――スポンサー、ですか?」
聞いたことは勿論あるが、学生から聞く単語ではない為、思わず聞き返す。
「ああ。定期演奏会は自らの学校主催で開かれる。予算はどこから落ちると思う?部費だけで賄えられると思えるか?」
玲哉さんは冷たい目付きで俺を睨む。別に怒っているわけではないのがポイントだ。怖がる必要はない。
「他校の定演を見に行った時パンフレットの後ろにお店や企業の電話番号などが記載してあるページを見なかったか?」
「ああ……!ありましたね、あれがスポンサー?」
「そうだ。こちらはパンフレットに広告を掲載するので、協賛してくれたところには広告費として協賛金を頂く。それを色んなところから集めて演奏会を開く――といった寸法だ」
なるほどね。お金のことなんて全然頭に入れていなかったけれど、普通に考えて会場を押さえるだけでかなりのお金が必要になるよな。
「それでさっき天馬さんが言っていたスポンサー周りをすると?」
「そうだ。今まで定演のスポンサーになってくれたお店のリストがある。それを分担して電話でアポを取る。営業先に出向き協賛金を頂戴する。こちらはポスターとパンフレットが出来次第、確認と宣伝のためにまた出向く。さながらサラリーマンのようにな」
「……吹部ってそんなことするんですね、知らなかった」
ベースのまっつんが溜息混じりに言う。俺も同じ気持ちだ。
「新規だって欲しいからな。大会が終わったからと言って、暇じゃないんだよ吹奏楽部ってのは。……吹部のことを知らない奴等は驚いているだろうな。影でいろんな体験をしているなんて……」
玲哉さんの発言で、吹奏楽部の3年生がしっかりとしている理由がよくわかった。
吹奏楽部は演奏だけじゃなく、運営に至るまで学生主体で切り盛りしていかなければいけない。自ずと責任感が付いてきて、その姿を見ている後輩が慕う……そうして伝統が受け継がれていくのか。
「――ほれ。電話マニュアルとリスト。一件でも多くスポンサーを取るように」
手渡されたプリントを見て「……大変だなぁ」と他人事のように呟く。
「凱旋にマーチングがなくて良かったね。もしやっていたら暑い中外で練習をしながら、空いた時間でスポンサー周り……考えただけで胸やけがするね」
中学の時に経験済みの新美は細い眼を一層細くさせながらプリントを見つめる。
「経験者は語る。ってやつか?新美が言うと説得力が違うね」
「姉貴が他校で吹部やってたんだけど、1人で5件回ってこいって言われてうなだれていたっけな。オレ達は複数でもいいから3件だろ?優しいものさ。さあ、どうぞ」
「……なんで携帯を俺に押し付けるんだよ……!?経験者がまずは手本を見せるものだろ?」
「いやいや、君の方が声通るから。オレは低くてイケボだからさ」
「ならやれよ!」
「僕がやるよー!」
るんるんとくせ毛を動かすくらやん。
『…………』
俺と新美は無言でアイコンタクトを取る。
「……よし、俺が最初にやろう。次は新美だ」
「了解だ、大佐」
「ち、ちょっとー!何でさ~」
お店が忙しくてピリピリしている時にくらやんののほほんとした雰囲気は……危険な匂いがする。そう思った。
「――もしもしー、凱旋工業吹奏楽部の鞍馬と申します。いつもお世話になっておりますー……」
『あれー?』
くらやんの電話対応のレベルの高さの出来に俺達は眼を丸くさせる。
「あの子公務員とか向いてるんじゃない?根拠はないけどさ」
「なんとなく分かる気がする」
くらやんの持っている雰囲気というか、オーラは相手を嫌にさせない力があるのかもしれない……。
「――鷹谷くーん!新規貰ってきたよ~」
「……彼、一番の出世頭になるんじゃないかしら?」
「そうかもしれないわ」
何故かオネェ口調になる俺達は置いておいて、くらやんの仕事ぶりに感心するばかりだった。
***
「――で、なんでここに来ているんだ……」
「えっ?それは協賛広告のお願いに決まってるよー」
「それはわかっているんだが……ここまで手を伸ばすのか?」
俺とくらやんが居る場所は遠江一宮駅……森町に来ている。
流石に遠すぎやしないだろうか?ここにくるまでかなりの時間と交通費を費やしたぞ。
掛川まで電車で移動し、天竜浜名湖鉄道――通称天浜線のローカルな電車に揺られてここまでやってきたのだ。
大自然に囲まれたこの地を見ると、まさに森町といった感じだ。
そして、お目当ての小國神社が見えるとくらやんのテンションが横から伝わってくる。
小國神社の門前のすぐ横には『小町横丁』というおみあげ、食事処のお店が連ねる。
「わあー、凄いや!」
「そうだな。俺はどちらかというと神社の方に眼がいくけどな。俺の知っている神社っていうと五社神社だからな。雰囲気がまるで違う」
五社神社は浜松にある有名な神社で、全体が朱く色鮮やかな彫刻が彫られている。
一方、小國神社はとてもシンプルだが、これぞ神社と思わせる風格を持っている。
周りの木々から神聖な気配を出しているような感覚だ。
「――ところで、こことどうやって連絡をつけたんだ?」
みたらし団子を口いっぱい頬張って嬉しそうなくらやんに聞いてみる。何も聞かされずとりあえずついてきた俺もどうかと思うけどな……。
「僕の方に電話がかかってきたんだよ。スポンサーの美容院さんから聞いたって言ってたよ」
「へえー。でも、浜松の高校の定演のスポンサーに森町の広告を入れようと思うか?そんな――」
物好き。と言おうと思った時だった。背後からの声に先を越される。
「――そんな物好きがいるんですよ。ここに……」
俺達が振り向くと、美しい女性が巫女装束を着て頭を下げて会釈をしていた。
俺達も反射的に頭を下げる。
挨拶をしてきた女性は使用感のある巫女装束を着こなし、ほんの少し茶色が入っている首元まで伸ばしてある艶のある髪を束ねずに下ろしていた。
「よく来てくださいましたね。ようこそ小國神社へ……」
目元と同じように口調も落ち着いている。大人の女性という奴だ。――ん?今の声……どこかで。
「失礼ですが、どこかでお会いしませんでしたか?」
「……いいえ、初めてだと思います。まあ、浜松には何度か足を運んでいますので、どこかですれ違ったのかも知れませんね」
「そうですか……。そうですよね」
巫女さんに笑顔で返されるとそうだと思うしかないな。しかし……俺が気になったのは姿ではなく声なんだがな。
「お電話をしたのは僕です!」
俺と巫女さんが会話を始めたので、急いでくらやんが「自分が今回の担当です!」と言わんばかりな顔をして、鼻息を鳴らす。……そういうつもりじゃなかったんだけどな、ごめんよ。
「ふふふ、ごめんなさいね。私はここで巫女指導を担当しています二角と申します。よろしくお願い致します」
二角さんは落ち着いた少し中性的な声で自己紹介をする。
俺達も矢継ぎ早に高校と名前を言うと「境内に案内しましょう。お話は歩きながら」と神社に向かって行く。
「……何だか掴みどころのない人だな」
「ほうだね。はやふついていほう!」
「……くらやん、とりあえず食べるのはいったんお休みだ」
団子の次に和菓子を口に含んでいたくらやんを横目で制する。
今回から定期演奏会編のつもりです。
そして、今回の話は吹部経験者からすれば「はいはい」といった感じだと思いますが、知らない人からすれば「そうなの?」といった内容になっていきます。
僕が書きたかったところです……。何をちんたら書いてるんだか(何度も言わせるな、お前がかk……)




