unreliable?
2年生が主体となって部をまとめて1週間が経った。調子は……まあまあってところだ。
仕方ないことだが、3年生――主に部長・副部長の存在が大きい所為か、周りからは「やっぱり天道部長が……」なんて言葉がちらほら聞こえる。
特に問題となっているのが3年生の仕事量だ。
GWOでは、部費の管理は生徒主体で行うらしく、3年生で考え、立案し先生に提出する。それを今は2年生が行っている。
先生が悪いところを手直ししてくれるのだが、そこまでにいきつくまでに2年生で案が定まらない――と佑都が先輩から聞いたそうだ。
正直、パート練で先輩に対して指示を出すのが大変だとか、3年がいるから上級生らしい態度が取りづらい、くらいかなと思っていたが……部費の管理は大変だろうな。
「――定期的に小さなイベントをやっているのも、しっかりと経費でおとせれる内容か、部費の予算は大丈夫か、って考えてたんだね……」
彩矢さんは溜息がちに呟く。……こういった内容が部長一片に全て任されてしまうと大変だ。2年の意見が常に飛び交い、それを纏めた上で皆が納得する内容にする……か。
なんだか、会社みたいだな。
もしかしたら、先生は早い段階で社会人経験をさせているのかもしれない。
父さんに聞いたことなのだが、会社で働く上では、定期的に部署ごとで会議や発表会なんかをすると言っていた。
それは工場勤務でも変わりはしないそうで、リーダーを選出してテーマを決めて活動をする、パワーポイントを使って活動内容を纏めて発表をする。――通常の仕事をしながらだ。
「――癖のある自分の意見を曲げない年寄りや、文句は言うが活動を手伝ってくれない人がいたりと……疲れるものだ。社会に出るということは、いかにストレスを溜めないように生活し、様々な性格な人と上手く接していくということだ。社会人になるのから覚悟はしておけ、ましてや、工業高校なら高校を卒業してすぐ社会人だ。千思万考することだな、俺の息子なら仕事をなあなあに出来ない太刀だろうからな」
工業高校に進学する時に言われた内容だ。まさか、3年の就職活動中ではなく、1年の部活中に考えさせられるとは思いもしなかったな……。
純粋に部活だけを楽しみたい人には嫌な仕事だろう。しかし、これを乗り越えた時、今の3年生のような社会に出ても恥ずかしくない心を持った人間に慣れるのだろうな。
***
「時期に慣れていくだろう。俺達もそうだった」
パート練に入り、玲哉さんに2年生の様子を聞いてみたところ、少し苦笑いを浮かべながらそう言う。
「俺達の場合は天馬は主に立案して俺が纏める形だったから楽なところは多かったな。――まあ、定演の予算やコンセプト決定などは俺達3年がやるわけだからな、どんなことをやっているか身をもって体験してもらうだけさ」
「2年の方達を見ると、大分しんどそうな感じですけどね」
「これくらいで纏まらなければ、俺達が引退した後が大変だな」
玲哉さんは鼻を鳴らしてベースを少し弾く。仰る通りだ、今はただ引き継ぎの内容を聞いてあたふたしているに過ぎない。この後、俺達の指揮を執るのは2年の亘さん達だからな。頑張ってもらいたい。
「……鷹谷に比べれば可愛いもんだ。さあ、曲練習に移ろう。鷹谷、指示を出せ」
「……これは俺がやるんですね」
「当然だ。パート練までちんたらやられたらキレるぞ」
……やっぱり不満はあるようだな。出来るからこそ歯がゆいのだろうな。
俺に飛び火がこないように頑張ろう――。
***
「――さて、SJ&Pコンテストの課題曲は去年と同じく『Indigo Cloud』にする。何回か練習したがこれが一番しっくりきた。今回の演奏で気を付けることはジャズの吹奏感――スウィングやグルーヴといった演奏のメリハリを意識するように。貴方達の演奏なら十分良い演奏が出来るはず、では――練習に入る」
『はい!』
今回の大会はいかに先生の言った通り、過度な演出よりも演奏を楽しむGWOにはピッタリだ。
ジャズらしく演奏出来るかがポイントになる。裏拍を意識して音の余韻を残さずに演奏するように練習も変えてかないとな。
「――――うん、まずまずだ。それと、自由曲の選出は2年生が決めるように」
『……はい』
Indigo Cloudは4分半くらいの演奏時間。残り約7分、1曲か2曲にするかは……2年生が決めることだ。
何でもいい――とは言えない。部員の演奏レベルと人数、演奏したい曲を考えて選ばないといけない。
簡単な仕事――でも、大事な2年生の初仕事だ。
彩矢さんと弥生さんが俺を見ている気がしたが、申し訳ない。俺は1年生ですので。




