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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
大会編:これこそが吹奏楽部?
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閑話:体育祭 吹部VS○○部!?

「部活動対抗リレー?」


 あまり聞きなれない単語に反応する。


「ああ、各学年2名ずつ選出して計6名の部対抗のリレー。凱旋の体育祭の名物でな、吹部も出場しないといけない」


 玲哉さんはあからさまに面倒くさい顔を作りながら答える。


「……なんでそれを俺に説明するんです?」


「察しの良い鷹谷が分からない訳がないだろう?」


 見たことの無い綺麗な笑顔で言われる……。怖いですよ。


「はい……わかりました」


「俺も出るんだ、副部長も楽じゃないな」


 お互いに苦笑いを浮かべる。


***

 中日吹が終わり、数日後のこと。

 凱旋の体育祭がある。そこで行われる行事の1つが部対抗のリレーだそうだ。

 各部活6名を選出しての競争。文化部にはハンデがついているそうだ。流石に運動部の精鋭と競えるとは思えない。当然の処置だろう。


 参加者は1年は俺とくらやん。2年はトランペットの鹿島(わたる)さんとクラリネットの鈴木徹平さん。3年は部長と副部長が出る決まりみたいだ。


「がんばろうね!鷹谷くん」


 くらやんはふんふんと鼻息を荒立てる。

 くらやんは足が速い。中学の時にテニス部だったからと言っていたが、速さは陸上部クラスだ。体育の授業の時は驚かされたものだ。

 まるで獲物から逃げる草食動物のような俊敏さだったからな……。


「ああ、頑張ろうな」


 俺はどうも体育祭が好きじゃないんだよなぁ。対抗心バチバチなところがどうも得意じゃない。


「電気課のくせに?」


「関係なくね?」


 新美のボケを軽くスルーする。静電気じゃないんだから。


「俺とくらやんは課対抗リレーもでるんだぞ。目立つのは好きじゃないんだよな」


「足が速いのも大変なんだね。まあ頑張って」


「他人事の様に言って、新美だって出るだろ?二人三脚」


「うん、君とね」


「ああ……最近身体がなまっているからな。走り込んでおくかな」


「あんだけ体育の授業で活躍しておいて、なまっているって……何者だよ、君って奴は」


 新美は呆れたように吐き捨てる。いや、本当になまっているんだよ。体育の授業でも1度も本気を出していないからな。

 基本的に7割で流す――。兄貴と茉凛ちゃんで決めたルールをいまだに守っているのだ。


「――あんたら兄弟が本気出したら手に負えない」


 と、茉凛ちゃんから何度も忠告を受けている。そんなことないだろうに……、少し心配性なんだよな。


「おお、鷹谷とくらやん。ここにいたのか」


 部室のドアから天馬さんがひょっこりと顔を出す。


「どうしたんですか?天馬さん」


「玲ちゃんから部対抗リレーの話を聞いたろ?その相談」


「ああ……、行こうぜくらやん」


「うん!」


「頑張って~」


 新美は手をひらひらとさせて吹奏楽の月刊誌を捲っていた。あいつのマイペースを少し見習いたい……。


***

 体育祭当日、プログラムが進んでいき、いよいよ部対抗リレーとなる。


「……ハンデあるって言ってませんでしたっけ?」


 俺はスタート地点を確認して重い息を吐き出す。


「あるだろ?5mほど」


「一蹴で消えますよ!このハンデ」


「しゃーないだろ、文化部って言っても、吹部はほぼ運動部みたいな扱いだから」


 たしかにやっていることは運動部と同等だと思うけど……、他の文化部、女子バレー・弓道部は半周ほどハンデがついているんだよな。


「ああ、大切なこと言い忘れてた。これに勝つと部費が上がるから絶対に負けるなよ」


「無茶苦茶だ!」


 天馬さんは「トップでくることを期待しているぜ!」と親指を立てて俺の元から去っていく……。


「いや、俺1番手なんだけどな……」


 はあ……やるしかない。出すか、全力――。


***

『吹奏楽部速いです!なんと現在2位!』


 生徒会役員のアナウンスのボルテージが上がっている。

 

 黒いGWOのジャージを見に着けた鷹谷くんはもの凄いスピードでバトンを渡す。

 その後の鞍馬くんも速かった――。その姿は肉食動物から逃げる草食動物のようだ。し、失礼かな……?あはは……。


 本来の文化部とのハンデはあっという間になくなり、勝負はまさかのサッカー部と吹奏楽部、そして……、


『速いです!これは……()()()


 会場から熱気と笑いが起こる。


 なんで帰宅部がこんなに速いのよ!?

 

 Yシャツを着て、靴はまさかのスニーカー。なのに速い。笑うしかなかった。


 勝利した部は……大穴の帰宅部だった。

 2年の鹿島くんと徹平くんが遅かったわけでも、部長と副部長が遅かったわけではない。むしろ、文化部の速さではなかったが、その上をいった部が……帰宅部だった。


 私は鷹谷くんの方を見ると、腹を抱えて笑っていた。


「――なにを見てるん彩矢ー?」


 同じ進学課のパーカッションの永谷まどかは私の顔色を窺って口角を上げる。


「えっ?な、なにも見てないけど?」


「ああー、鷹やん見てたのー。へえー、あの子あんな風に笑うんやな」


 滋賀県出身のまどかの少しなまった柔らかい口調でそう言う。


「う、うん。ちょっと驚いちゃった」


 あんな顔、普段は見せないもん。いつもは綺麗過ぎる作り笑顔だから、顔を崩して笑う姿は新鮮だった……。


「あははー、彩矢~。やっぱり鷹やん見てたんやね~」


 ……しまった!た、たまたまです。


「恋愛小説みたいなお似合いのカップルやねー」


 聞こえない聞こえない――。


***

「あっはっは……はぁ、はえー」


 帰宅部のみなさんは、俺とくらやんがリードした距離を、あっという間に詰めてきてそのままゴール……。鮮やかすぎて、そして走っている格好がツボに入ってしまった。


 天馬さん達は「すまん!」と俺とくらやんに詫びを入れてくれたが、謝る理由なんてなかった。

 他の4人は十分速かったから……、帰宅部が規格外に速かっただけである。


 ハンデは俺達と同じ距離である。


「惜しかったね、鷹谷くん」


「まあな。それよりも来年が楽しみだ……」


「……珍しく燃えてるじゃないか?どうしたんだい」


「久しぶり本気でやって負けたからな。悔しいというよりも楽しみが増えた」


「……どこの小説の主人公だよ、君は」


 俺が主人公?まさか――天道天馬なんて名前をしている人の方がよっぽど主人公っぽいだろう。


***

 こうしてなんだかんだ言って、しっかりと体育祭を堪能している自分がいた……。

 来年のリベンジに続く!……なんてな。

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