ようこそ、吹奏楽部へ!!④ 男のコとの出会い
中々思い通りに書けないですね。
ゴールは遠くに見えるのに、いつまでたっても辿りつけないみたいな。
そのゴールが富士山なのか、スカイツリーなのか、最悪、月まであると踏んでいます。
月だったら、一生完結しませんね(笑)……富士山にしましょう。
一緒に帰る要望を俺達は快く承諾し、鞍馬を加えた三人で自転車を押しながら歩く。
「ええ!?二人とも高校から仲良くなったの?そんな感じには見えなかったけど」
鞍馬は丸い眼を大きく見開いた。そんな驚かなくてもいいだろうに。
「まあな。同じ中学の奴もいなかったし、席が隣なら自然に……なあ?」
俺は新美に同意を求める様に首を傾げる。
「そんなところだね。ふっ……これからもっと仲良くなるさ」
「何でしたり顔で言うんだよ!……有り難いことだけどな」
「いいなー、僕も……その……てへへ」
鞍馬は照れ隠しをしながらもじもじとする。
いけない。一瞬、ときめきかけた気がする!――きっと気のせいだ。
落ち着いて鞍馬鹿之助の容姿を確認しよう。
ベージュ色の短いボブカット。パーマを当てている様な毛束をしていて、左右のもみあげ付近にある、角の様な毛束が特徴的だった。名前の様に”鹿”を連想させる。
肌は女性の様に白く綺麗で、高校に入って新調したであろう学生服はぶかぶかで、身長と童顔の所為か中学生くらいに見えてしまう。
「だ、大丈夫!これからぐーーんと大きくなるんだから!」
鞍馬はそう強気に発言していたが、可愛らしい童顔はそんな直ぐには変わらないだろうと、心中でツッコミを入れる。
「あ、そうだ。二人とも、もし良かったら連絡先交換しない?」
鞍馬はもじもじしながらスマホを取り出す。毎回もじもじしなくても……ドキドキするから止めて頂きたい。
「勿論いいよ。――新美、俺等も連絡先交換しないか?」
「あー、そういえばしてなかったね。気が付かなかった」
「……二人とも本当に仲良いの?」
呆れた声が俺達に浴びせられる。
連絡先を交換し終え、鞍馬はコロコロと笑顔を見せる。
「ありがと!――高校に入ってからというもの、クラスの人達には名前で揶揄われたり、「可愛い可愛い」って馬……ふざけてくるんだ。僕はカッコいい高校生を目指しているのに!」
ごめん、鞍馬。可愛いは否定できない。アニメだけの存在だと思っていた男の娘ってのは、かなりのインパクトを持っているんだ。分かってほしい。
「これからが成長時期なんだし、頑張ろうぜ鞍馬」
「……鷹谷君」
鞍馬は眼をキラキラさせながらこちらを上目使いで見てくる。……そんな眼で見つめてくれるなよ。どこぞの奇術師みたいになるだろうが。
「……興奮するじゃないか、まったく」と、駄目人間が隣で冷笑を浮かべながら呟いた。――こいつはもう駄目だ。
「……鷹谷君って優しいよね」
「どうした急に?」
新美の所為もあってか、変に動揺をしてしまった。でも、なにをもってそう思ったのか、気になる。
「僕のこと鞍馬って呼んでくれるから嬉しくってさ、親には悪いけど鹿之助って抵抗があってさ、あまり呼ばれたくないんだ。鞍馬の方がカッコよくて気に入っているけれど、皆面白がって下の名前で呼ぶんだよ。でも、鷹谷君はそのことを察して鞍馬って呼んでくれるからさ。新美君もそうだろ?」
「そこまで気を使ったつもりではないけどな。――クラスで名前呼びされてあまりいい表情していなかったからな」
「ほらね、優しいよ」
「まあ鷹谷君の場合は優しいというより、周りを良く見てるゆえの察しが良いの方がしっくりくるな、オレは」
「――そうだな。新美の言い分の方がしっくりくるな、正直周りが良く見えるゆえに冷たい性格かもしれないけどな」
「……鷹谷君、あのことは忘れなよ。オレは気にしてないからさ」
「あのことってなんだよ!新美といつそんな出来事があった?仲良くなったのはつい最近だろうが」
「てへへ……」
鞍馬が俺と新美の漫才みたいなノリを見て笑っていた。
それを見た俺達も笑みをこぼした。
***
「それじゃあ、僕はここで」
「また明日な」
「お疲れ鞍馬君」
鞍馬とはここでお別れだ。俺達よりも少しだけ家が遠いのだ。
鞍馬は自転車に跨り、こぎ始める準備をしていた。
「――あ!二人とも」
「どうした?」
「明日の部活一緒に行こうね?」
「……中学生か。わかったよ、じゃあな」
「てへへ……」
鞍馬は嬉しそうに手を振って帰って行った。
「良い娘だね、鞍馬君は」
「良い子だな、鞍馬は。にしても、かなりの童顔だったな、同い年とは思えん……身長がもう一声あれば違和感なさそうだけどな」
「まあ、オレも君もガタイはいい方だから余計にね。鷹谷君が言ってあげた様に、これから次第じゃないかな」
「そうだな。……ところで、新美。鞍馬と一緒にいると変な感じになるのは、俺が可笑しいからか?」
冷静になってみて、同性相手にドキドキしている自分に危機感を感じていた。
顔だけは冷静そうな新美に確認をしたかった。
「……大丈夫だよ、鷹谷君」
新美は口角を少し上げて、こう言うのだ。
「オレも当たり前の様にドキドキしているから」と、したり顔で言ってくるのだ。
やはり、こいつはもう駄目だ。
「……もういい、帰ろうぜ」
「そうだね」
そう言って、俺達は来た道に身体を反転させる。
俺達の帰り道は少し前に到着していたが言い出せなかったからだ。
「……明日は言おうな」
「……うん」
少し肌寒く感じる四月初旬の風を受けながら、二人組の男は自転車をこぐのだった……。
毎回キャラクター(部員紹介)したかったんですが、結構大変なんですよね(笑)
まだ、登場人物少ないですから……。
これから、こうご期待!