ようこそ、吹奏楽部へ!!③ 失態
気付いたら評価が付いていて嬉しかったです。
ありがとうございます。
見て貰えていると分かると、流石にやる気が出ますよね。
「――やってしまったなー」
部活動の体験入部が終わり、俺と新美は駐輪場へと向かっていた。――やけに俺の足取りが重い。……理由はわかっているのだが。
「何かしたっけ?初めてであんなに吹けるなんて凄いと思うんだけど」
「いやそうじゃない。彩矢さんと上手くコミュニケーションを取ろうとしたんだが……気持ち悪がられてしまった」
「そりゃあ、初対面でピロートークしたらねぇ……」
「いや、そうじゃない!……まあ、たわいもない会話はしたんだけどさ、俺の言動が気になったみたいなんだ」
「ほお?どんな感じで」
「彩矢さんって名前で呼んだら嫌な顔されちゃたし、勘で「中学弓道やってましたよね?」って話題作りで振ったつもりが「え?なんで知ってるの、怖っ!」みたいな……ね?」
俺は簡単に起こった有様を説明して肩を竦める。
「ほお、あのテナーの人って彩矢先輩って名前なんだ。何で知ってるの?」
「何でって、言ってたろ?弥生さんが」
「言ってたかな~、七瀬先輩。――ん?そういえば、鷹谷君」
「どうした」
「先輩じゃなくて、さん付けなんだね、しかも苗字じゃなくて名前で呼んでいるし。……それが気になったんじゃないの?」
「ああ――そっか、部活動じゃあ先輩って呼ぶのか。俺がいたクラブチームだと”名前さん付け”が基本だったからなー。馴れ馴れしかったのか……道理でな」
小学生からずっと年上の人を苗字ではなく名前で呼んでいたし、そう呼んだ方が親近感が沸くって聞いたんだけどな。
「女の子に話す時は優しい声色で名前で呼んで上げると、絶対に喜んでくれるわ!……あんたら兄弟に限りだけどね」と言われて成長したからな、それがいけなかったのか。
「あと大志は観察力が凄いんだから、相手の長所を見つけたり細かい所を察して話題作り出来るようにしなさい!」とも言われてここまでやってきてるからなー、俺って。
この手のやり方は小さい頃からやっていて好評だったと思ったんだが、高校では上手くいかないみたいだ。
俺は心の中であの人に愚痴をこぼす。
「そんな深く考えなくても大丈夫でしょ。相手も初心者の指導って初めてだろうしすぐ慣れるさ」
「……そうだな、今日は初めてサックスを吹いてみて楽しかったし、彩矢さんとは明日も合う事だし、そこで挽回しますかね」
「そんなやる気出さなくて良いと思うけどね、楽にやれば良いのに」
新美は微笑交じりに肩を竦めてみせる。
新美の言う通りだな、明日は楽に行こう。
正直、彩矢さんの綺麗な容姿に見惚れてしまって勝手に舞い上がっていたのかもしれない。
艶のある黒い長髪と凛々しい眼つきの容姿端麗な女性が自分にサックスを教えてくれるのだ。緊張しっぱましだった。――気を付けよう。
「よし、帰るか」
自分の気持ちに整理をつけて新美に声を掛ける。
その時だ。自転車の鍵を開錠したところで、後ろから声が聞こえた。
「あ、あの!……僕も一緒に帰っていいかな?」
同じクラスの”鞍馬 鹿之助”が声を掛けてきたのだ。
新美は小さな声で「誰だっけ?」と言ってきた。
おいおい、同じクラスでさっきまでフルートの練習をしていただろ?と小声で答える。
「……君の観察眼には感服するよ」
彩矢さんと同じ様なことを新美にも言われてしまった。何故だろう。
「てへへ……」
鞍馬はこちらを見て、可愛く笑うのであった。
部員紹介(仮)
名前:鞍馬 鹿之助
血液型:О型
誕生日:四月十日
中学時代の部活:テニス部
希望楽器:フルート
好きな数字:19