中学生から見た凱旋高校GWOの演奏
あー。進まないなー(本当だね)
「春果~、お待たせ~」
「優里おそいよ、早く行こう」
私は優里の腕を引っ張り、足早に駅前へと向かう。
今日は私が入学するつもりの浜松東征高校の演奏が駅前で行われるのだ。
プロムナードコンサート。フランス語で『散歩、散歩の場所』の意味を持っている。
その名の通り、外で演奏されるのだ。勿論、無料。反響がない野外でこそ、そのバンドの実力が分かるのだ。
浜松駅前北口広場「キタラ」には、既にギャラリーが集まっていた。出遅れたかな?
「ねえ、春果。来るの早過ぎない?今からの演奏って……」
スマホでスケジュールを確認する優里。私も確認をしてみる。
「あ、凱旋工業?だ……。まあ、その次だから良い場所取らないと!」
「あわてんぼうなんだから~、お!演奏始まるのかな?」
私達は広場に眼を向ける。
そこにはお洒落な黒いジャージを着た男子高校生の集団が楽器を構えていた。
ちらほら女子の部員も見えるが、男子が圧倒的に多い。吹奏楽では珍しい光景だ。
「ちょっと、カッコいい人多くない?」
確かに……。心の中で共感していると、バリトンの人と眼が合う。バリトンの人は優しく微笑む。――カッコいい!
「どうもー!凱旋工業吹奏楽部GWOです!!」
ドラムの人がマイクで喋り出す。ドンドンとバスドラムの音を鳴らす。
「東征高校さんの前座ですが、是非楽しんでくださいー!」
周りから笑い声が漏れる。
笑い声が収まるタイミングを見計らって、学生指揮者であろう綺麗な女性が指揮を振る。……女生徒のレベルも高いな、凱旋。
一曲目、じょいふる。
最近の曲ではないが、知らない人はあまりいないし速いテンポの曲なので聞いていて楽しい。
曲が始まると、ポケモンのお面や軽い仮装をした部員が踊り出す。
「いいね、この高校」
優里が楽しそうに語り掛ける。確かに、演奏も上手だ何よりも楽しそうだ。
「わぁー!あの人凄く可愛い」
優里が指差したのは、恥ずかしそうに踊っているボーイッシュな部員だった。確かに可愛い!年上なんだけど、そう見えない愛くるしい小動物みたいな顔立ちだ。可愛い女生徒だな。可愛い人多いな、凱旋って。……工業高校なのに。
続けて演奏されたのがポケモン。……この曲楽しそう!吹いてみたいな。
ボーイッシュな女の人がポケモントレーナー、お面の人達がポケモンってことか。
ちょっとした寸劇をしている。吹奏楽あるあるだよね。
2曲終わり、指揮者が頭を下げる。
広場から拍手が飛び交う。
「……さて、最後の曲になります。最後はGWOの定番曲……にするつもりのTRUTHです!F1レースの曲で有名なので、聞いてもらえば分かると思います。この曲はEWIという電子楽器を使用しているので是非一見の価値あり!では聞いて下さい」
EWI?何それ?と疑問に思っていると、アルトサックスの部員が指揮者の横に立つ。
あれがEWI……、初めて見るな。どんな音なんだろう。
演奏が始まる。……曲名を聞いてもピンとこなかったけど、この曲か!
カッコいい前奏が始まり、そしてEWIのソロが始まる。
……シンセサイザーとソプラノサックスが合体した様な高音で独特な音……この曲、いや、この吹部の演奏は楽しい!感覚がそういっている。
楽しそうに演奏しているし、何より他の吹部とは毛色が違う。……凱旋の吹部、舐めてた。
私は心臓の高鳴りと、新たな決意を抱いてGWOの演奏を堪能した……。
***
凱旋の演奏が終了し、目当ての東征高校の演奏が始まった。
やはり、上手だったしレベルは断然東征の方が上に感じる。……だけど、上手な高校だから入りたい。という、私の浅はかな考えは既に消えていた……。
「……優里、私凱旋受けるかも」
「ええ!!」
私、春先春果は翌年凱旋工業吹奏楽部GWOに入部するのだけど、それは少し後の話……。




