定期演奏会を見に行こう③
お待たせ……まってないですよね(笑)
忙しくて、中々書けませんでした。
仕事部屋が欲しいですね(我儘め)
にしても、特に話が進んでいないのに話数がかなりの量に……(笑)
夏の大会編(結構なメイン)はいつになるのやら。
受付で『秋は是非来てくださいね。ご存知!GWOサックスパート一同より』とメッセージを添えて、差し入れを渡した。勿論、書いたのは弥生さんだ。
「受付の人、顔が引きつってましたよ」
「気の所為よ」
そうなのか……そういうことにしておこう。
***
エントランスの外れにGWOのメンバーが揃っていく。
今日は流石に全員学生服である。
「よし!全員集まったな、入るぞー」
天馬さんはパートリーダーからの点呼を確認して合図を送る。
「鷹谷くん」
ちょこんと鞍馬が俺の近くにくる。……何故、嬉しそうな顔をするんだ?
「一緒に座ろうよ、僕初めてだからさ……勝手が分からなくて、えへへ」
「えへへって、俺も初めてなんだけどな。いいよ、GWOで固まって聞くなら席はどこでもいいだろうし。なあ、新美?」
「そだね。お互い初めてだとやり方とか分かんないだろうしね」
「新美……!その言い方だと違うことを連想させるからやめろ、そのしたり顔もな」
鞍馬がきょとんとした眼でこちらを見る。見ないでくれ、教えられないから……。
***
ホールの中に入り、ホールの広さに驚く。広っ!これで中ホールか……想像以上の広さについ眼を丸くさせる。
たくさんの座席に、視線の先には大きな赤い緞帳が下ろされている。
「こんな広くてお洒落なところでやるんですね」
「何を田舎者みたいなこと言ってるのよ、映画館の3倍くらいに思えばいいのよ」
「いや、そう考えると十分大きいと思うんだけどな……」
弥生さんの発言に彩矢さんは苦笑いを浮かべながら呟く。
この二人の関係性は俺と新美に似ているな。
席に座り、辺りを見渡す。ぞろぞろと人が入ってくるが、弥生さんの言う通り満員御礼とはいかなそうだ。
疎らに座っている人が多いので正確には分からないが7割くらいか……それでも凄い人だ。
俺達の定演はどうなるのだろうか……。
そんなことを考えていると、会場が薄暗くなる。
アナウンスで注意事項が入る。どうやら開演のようだ。
ブザーの大きな音が鳴ると、緞帳がゆっくりと上がっていく。
赤いブレザーを着た浜北(浜松北陽高校の略)の部員が楽器を構えている。
指揮者はこちらを振り向くことなく、指揮棒を激しく振り下ろす――!
一曲目、マーチ『アルセナール』。
迫力のある音が飛んできたからなのか、ぶるっと身体が震えた。
金管の力強い音、木管の繊細な音の流れ、パーカッションの迫力……。これが生で聞く演奏か!
演奏が終わると会場から大きな拍手が飛び交う。
指揮者の先生がマイクを持って、簡単な挨拶と曲紹介をしていく。
全3部構成の演奏会。第一部はクラシックステージ、次にドリルステージ、最後はポップステージとパンフレットに書かれている。
新美曰く、どこも同じ様な構成らしい。第一部で寝る人が多いとか……。
演奏が進むにつれ理由が分かってきた。
クラシックということもあり、一般の人が知らない曲が多いのと、静かな部分と言えばいいのか分からないが、盛り上がりがない演奏部分が多いと眠くなってしまうようだ。
かなりの数が舟をこいでいた……。
***
第二部のドリルステージはマーチングである。
マーチングの知識はないが、どういうものかは知っている。
動きながら吹く、である。
幕間に素早く着替えたのだろう。全員、赤のパレード服に着替えており、ステージ上で動きながら演奏をしていく。
この学校は赤で統一しているのか、北陽……太陽だからかな。
演目はジャズメドレーと題した、一度は聞いたことのあるジャズの名曲たちが、マーチングの動きに合わせて演奏されていく。
動きながら吹く。これがどれほど難しいか、初心者の俺でも分かる。
足を揃え、列を乱さず、楽譜は暗譜。他にも注意しなければいけない所は多々ある。
俺の担当楽器であるバリトンサックスの女性は、あの重いバリサクを吹きながら踊っている。……脱帽だな。
この日の為に頑張ってきたのだろう。
三年生最後の演奏会。頑張らないわけがない――。
***
第三部はポップスステージ。
聞いたことがある曲や流行りの曲を中心に、観客の拍手を交えて盛り上げていく。
ちょっとした寸劇や、演奏の演出など、見て楽しむ事が出来た。
面白いな、吹奏楽ってのは大会以外でこんなことをしているのか……。
改めて俺の中での吹奏楽のイメージが塗り替えられていく。
***
演目も終盤になりかけた時、部長の挨拶が入り、弥生さんや新美の言った通り、この演奏会を最後に引退するみたいだ――。
三年生が前に出ての三年生演奏が行われる。
夏の大会は三年生抜きなのか――他校の方針なのだからしょうがないが、出れるのなら出たいだろうな。
当たり前のことだけど……そう思ってしまう。
三年生演奏が終わると最後の曲が始まる。
曲は『私のお気に入り』。電車のCMで使用されている有名な曲だ。
涙ぐみながら演奏する三年生を見ていると、この曲に込めた想いが感じられる。
この部活が大好きだという想いが……。私達の大切なお気に入りの時間は……いまなんだ、と。
少し考え過ぎかと言うか、詩人っぽい考えに苦笑してしまう。
演奏が終わると会場から大きな拍手が飛び交う。
指揮者が生徒たちを立たせ、ゆっくりとお辞儀をする。――すると、どこからか「アンコール!」の声があちらこちらから手拍子と共に聞こえてくる。
浜北の部員も観客の方を見たまま、直立している。
「新美、これは?」
思わず新美に問いかけると、「アンコール待ちだよ」と返された。
なんでも、演奏会でのアンコールは当たり前らしい。
そう言われればプロのロックバンドだって、アンコールを予定して構成しているものだから当たり前か……。
でも、何故だろうか。こうも直立してアンコールを当たり前の様に期待する姿は個人的には好きじゃないな……。
演奏を見に来た人達が本心で「もう一曲!」と思ってアンコールしてくれたら、やっているほうも気持ちいいのだろうな……。
アンコールがしばらく続き、指揮者がマイクを持ち口を開く。
「……アンコールありがとうございます!では、最後にもう一曲お聞きください」
アンコールの曲は『宝島』。吹奏楽で一番といってもいいくらいの有名曲だ。
こうして、大きな拍手と共に浜北吹奏楽部の定期演奏会が終わっていく……。




