寛太さんに会いに行こう④
青春ですなぁー(笑)
「吹奏楽ってのは、思っていた何倍も大変な部活なんだよ」
玲哉さんはいつもよりも低い声で語る。
天馬さんは静かに頷く。
俺の所為で、何か重たい空気になってしまったが、気になる内容だ。
「毎日のように練習はあるし、練習内容も厳しい。やるべき課題が山のようにある。夏のコンクールの練習は一層大変だし、演奏会だって何回も行う。正直、俺も天馬も吹奏楽を舐めていた――」
新美が言っていた吹奏楽は大変だ。という言葉が脳裏に三度浮かぶ。
新美の顔色を窺うと「やってみないと分からないですからね」と同情する声が漏れていた。
「――大変で辛くて辞めたい……なんて思う奴が現れても可笑しくない。――今回のプロムナードコンサートは一つの山場なんだよ。このイベントをやりたくないとか、馬鹿馬鹿しいとか思うような奴はいずれ辞める。――実際に、辞めた奴らがいるからな」
中学と違って、部活って辞めれるものなんだな。学校によって様々だとは思うけど……。
玲哉さんの発言に乗っかる様に天馬さんが口を開く。
「元々、運動部だった人が多いからな。吹奏楽の大変さを知らない奴等の集団だ、今回の演奏会を満足に楽しめないようだったら……いらない、と俺は思っている」
「――部長がいらないとか言っていいのかよ?」
寛太さんは呆れながら苦笑いする。
一理あるが……その通りだとも思える。
「このプロムナードコンサートは吹奏楽の本入部に等しいんだよ。なあなあな態度でやられたり、演奏している側、演奏出来なくても楽しめなければ、辛いだけだ。――部費だって回収するし、楽しめない奴が部にいると、空気が悪くなる。だからこそ、初めから厳しめでいくんだ。これが吹奏楽部だと、辞めるなら今のうちだと、分からせるための意味が含まれているんだ」
天馬さんのボルテージがグングンと上がっていく。
「……それくらいのめり込んでしまうほど、吹奏楽って楽しいんだろ?」
空気を和らぐように、話のオチをつけるように、寛太さんは苦笑いをする。
先輩二人は「ああ」と笑みを零す。
そうだよな、これくらいで匙を投げてしまう人がいるなら、辞めて貰った方が部にとってはいいのだろう。
勿論、辞めないように工夫は出来るだろうけど、あえてそれをやらないのだろう。
俺の知る限りでも、数人、やる気が感じられない一年がいる。
知っているからこそ、天馬さんの言葉が刺さる。
俺達一年のやる気を出させ、吹奏楽部をやっていきたいか、もう一度再確認させる為の洗礼と言う名の練習内容――。
これがGWOのやり方なんだな。
辛い練習の先の楽しさを知ってもらうための試練……、プロムナードコンサートをやった後分かるのだろう。
のめり込んでしまうほど、吹奏楽が楽しい理由が――。
***
「邪魔したな寛ちゃん!暇なときに遊ぼうぜ!」
「ああ、お互いに暇なときは少ないだろうがな。そうだ……大志」
「なんですか寛太さん?」
「さっきも言ったが、何かデザインだったり面白そうなことがあったら俺に相談しろ。お前の兄貴には借りがある。返すチャンスをくれ」
「そんな……。あ、そうだ。兄貴とコンビニとかでやってるくじで、大きめのガンプラが当たったんですよ。空けずに放置していたので、それを作って貰えると……何で笑ってるんですか?」
「いや、似たもの兄弟だと思ってな。それもいいが、部活関係でも相談にこい」
「はい、ありがとうございます」
俺は頭を下げて、店を後にする。
ただジャージの進捗を確認するだけのはずが、深い話を聞くことになるとは……。
「来て良かったろ?」
天馬さんはニカリと笑い尋ねる。
「ええ、本当に」
プロムナードコンサートまでそう日はない。
やれるだけやるだけだ――!




