リード選び
懐かしのリード選びです(笑)
皆さんは何にしてましたか?僕は銀箱です。
やっぱ銀はいいですよね(なにアピール?)
部活終了後、徹さんを除く4人で鍛冶町にあるヤマハの楽器店に来ていた。
彩矢さんと二人なのかと思ったが、アルト二人も用があるようだ。
「こういう所は始めてきますね」
「あら?お客さん初めてなの?」
「やめろ新美、俺が如何わしいお店に来てるみたいだろうが」
ショーケースに並べられている楽器に眼を配る。
わかっていたけど、高いよなー。けど、カッコいい。
「なにチンタラしてんのさ、リードコーナーはこっち!」
弥生さんに急かされ、二年生二人がいるところに早足で駆け寄る。
「いっぱいありますね、全部リードですか?」
「そう。といっても、クラリネットとかのリードも混ざっているけどね。バリトンのリードは……あった。あ、相変わらず高いねー」
「4200円!?こんなに高いんですね……」
「しかもバリトンは5本入り、アルトは10本入り」
「リードには当たり外れがあって、一箱に一枚いいリードがあればめっけもんなんだよねー。なのに、消耗品だから一ヶ月くらいの命なのよね」
新美と弥生さんが追い打ちをかける。そんなニヤニヤしながら言う事ではないだろうに……。
「箱に書かれている数字は?」
「それはリードの強度、硬さって言った方が分かりやすいかな。硬いリードは良い音が鳴るけど、強弱が付けづらいの。上手な奏者は柔らかいリードでもいい音が出せるんだって」
「そうなんですね。ちなみに皆さんのリードは?」
「私は銀箱の3、彩矢も同じだよね?」
「うん、ずっと青箱だったけど銀箱の硬いリードを一度吹くとね」
銀箱、青箱というのは眼の前にある青い箱と銀の箱のヴァンドレンというメーカーのことだろう。
「銀箱……ヴァンドレンV12は元々クラリネットのリードだったんだけど、サックスバージョンが出たら凄い人気が出たんだよ。同じ3という強度でも、V12 の方が硬いんだよ。オレは青箱の3だね」
他にもメーカーによって強度が違ったり、ジャズ用のリードがあったりと、自分好みに出来るそうだ。面白いな。
「そういえば、俺のリードは何ですか?リードケースに入っているので知らないんですけど……」
そう言うと、彩矢さんは照れくさそうに「それ、私のなんだ」と口を開く。
「ええ!そうなんですか?――でも、なんで?」
「去年までバリトンだったの。だからリードもリードケースも私のやつ……」
……ってことは、彩矢さんは使っていたリードを当たり前のように使っているのか俺は……。いや、マウスピースもだろ……。
「……先輩が使っていたのをそのまんま使うのってあるあるだからね。鷹谷ー、彩矢と間接キスするなんてやるじゃない」
「弥生!!」
弥生さんは二ヒヒと悪い笑みを浮かべて「ごめん、ごめん」と軽く詫びる。……絶対に反省してないぞ、この人。
「よ、よくあることだから気にしないでね!リードもケースも鷹谷君が使っていいからね!」
「は、はい……」
顔を赤らめて早口になる彩矢さんは可愛かった。
って、先輩に可愛いは失礼だろ、可憐ならOKか?
「よし、オレは青箱の3とリードケースを買うよ」
新美はちゃっかりと自分の買う物を決めていた。
俺も早く決めなければ……。でも、自分にあったリードなんてまだ分からないしな――ん?これは……。
俺は白いワゴンに入っている『アウトレット品!』の看板が眼に留まった。
中にバリトンのリードが入っている。半額の値段じゃないか!
「これなんてどうですか?安いですし」
「それジャズリードだよ?それに2半ってかなり柔らかいから扱うの難しいと思うよ?」
「いろんなリードを試してみたいんで。それに、扱えれるように練習すれば上達も早そうですし」
「なんつぅ、プラス思考なのよ、あんたは……。まあ、いいけど。お金に余裕があるならこれも買いなさいよ」
弥生さんが差し出してくれたのは、透明なリードだった。
「これは?」
「レジェールリード。プラスチックの樹脂で作られたリードで、洗えば長いこと使える優れもの。いいリードが見つかったらあまり使わないようにゆっくりと育てて、練習の時はレジェールで対応したら?」
「おお!それにします!えーと硬さはどうしよう……」
「無難に3とか……それか――」
「弥生さんって良いこと言えるんですね」
「なんか言ったか?新美ー!」
新美、お前って奴は……、激しく同意だけど……。
こうして俺のリード選びは進んでいった。
「お会計1万円になります!」
……入学祝いが一瞬で溶けたよ、恐ろしいな……。




