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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
大会編:これこそが吹奏楽部?
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俺の兄貴

登場人物がどんどん増えていきます。


勘弁して下さい。(知らねーよ)

 もっとも尊敬するプレイヤーは誰?と質問されたなら、俺は間違いなく自分の兄、(かける)と答えるだろう。


 プロサッカーチーム『浜松レイブンズ』の背番号19を背負っているFWが俺の兄貴である。


 高校生ながらプロ契約をし、世代別日本代表のアンダー20にも選出するほどの選手が、同じ部屋で食事を取っているなんて数少ない経験だろう。


「翔、実家に戻るなら連絡を入れなさいよね」


「ごめん母さん、ちょっと私用があってね」


 愛想笑いを浮かべながら、大盛りの茶碗をゆっくりと減らしていく。――俺も中学までこれくらい食べてたんだよな、恐ろしいな。


 兄貴はレイブンズの寮に住んでいる。

 住んでいるといってもここからそう遠い所ではない。バスで悠々と帰ってこれる距離だ。

 入団したての選手は寮生活が基本というのもあるけど、兄貴が通っている学校から近いのが大きい。

 公式戦にも何回も出場し、結果を出しているが、高校を卒業するまでは無理をしない、と決めているらしい。今は高校生活を満喫しているのだ。


「――で、私用って何だよ」


「ぶっきらぼうな言い方だな。――大志、吹奏楽部に入ったって?」


 俺の箸がピタリと止まる。……まあ、家族に伝わるのは仕方ないが、兄貴の反応が気になった。

 何度もサッカーを辞めるな、と言ってきた本人だからだ。


「……うん、入ったよ」


「……そうか。残念ではあるけど、同時に興味深い。どうして吹奏楽部に?」


 俺と似た鋭い眼が、俺の瞳の動向を逃さない様に見据えてくる。


「別に理由はないよ。仲良くなった友達と同じ部活に入りたかっただけだよ」


「そうか。……楽しいか?」


 一転、今度は優しい眼つきで問いかけてくる。


「楽しいね、まだ出来ないことが山の様にあるし、理解も分析も追いついていない。どのようなアプローチで上達出来るようにするか考え中ってところかな」


「――大志らしいな。それを聞いて安心した。これからどうするか考えられているなら心配はいらないな。スポーツとはまた違った戦いと喜びがある筈だ、楽しんでやればいいさ」


「兄貴にそんな心配されなくてもそのつもりだよ。兄貴こそプロの世界で楽しめているのかよ」


「愚問だな。鷹谷家の人間なら千思万考(せんしばんこう)しろと父さんに言われてきたろ?考えを巡らすだけでも楽しめているさ。大分雰囲気が掴めてきたし、試合の流れも読めてきた。どのようにして点を取るか、勝つために何が必要か。今は身体を壊さない様にするのが最善だと考えて、体幹トレーニングをだな――」


「ああもういい、わかったよ」


 話が長くなりそうなので早々に切り上げる。


 本当に敵わない。俺だって千思万考して行動に移しているつもりだが、兄貴は更にその上を行く。

 

 兄貴と同じ土俵に居る限り、俺は永遠の二番手なのだ。


***

 晩飯後、兄貴と自室に戻る。一つの部屋を二人で使う。仲の悪い兄弟なら我慢出来ないだろうが、俺達はそんなことはなく、一緒にゲームをするし勉強もする。

 兄貴と比べられるのは嫌いだが、仲が悪いわけではないのだ。

 いい例として、今だってパソコンを開いて吹奏楽関連の動画や記事を閲覧して、どのようにして上手くなるか話し合っているのだ。――普通の兄弟ではないな。


「――――成程な、肺活量があっても活かしきれていないのか」


「うん、試合中にゆっくりと息を吐き切って、腹から息を吸うなんて悠長なことしないだろ?どちらかというと、水泳の方が近い。綺麗に息を吐き切って肺に入れる動作とかね」


「ふむ、それに楽器をくわえる時の形……アンブシェアといったな。それも気を付けないといけない。綺麗な音を出すために気を配ることが多いな。――面白いな。茉鈴(まりん)がハマるわけだな」


「あ……!」


「どうした?」


「……あの人には言わないでくれよ。俺が吹奏楽部に入ったっていうの。揶揄われそうだから」


「そうだな。……だが、爪が甘いぞ大志」


 兄貴はクスクスと笑みを零した後、溜息交じりに続ける。


「……母さんが既に伝えている可能性を忘れているぞ」


 そうだよなー、こんな面白ネタ母さんが喋らないわけがない。……これもしょうがないな。だって、俺達兄弟の幼馴染にして兄貴の()()なのだから……。


「大志が吹奏楽部に入ったのも、母さんじゃなくて茉鈴からだ。出くわさない様に気を付けろ。相当喜んでいたからな、部員の前で抱きしめられたら後が大変だぞ」


「怖いこと言うなよ!本当に起こりそうだ」


 

 大丈夫、茉鈴ちゃんは兄貴と同じ私立の高校。出会わないだろう。……今度はフラグじゃないからな!


 わけのわからない感情を抱きながら、兄貴との会話は続く。

 会話をすればするほど、実際に吹きながら思考を巡らせればいいのだけどな。

 いつか楽器を……なんてな。楽器をわざわざ買うなんて人はいないだろう。明日新美に聞いてみよう。


***

「マイ楽器?結構いるよ。強豪校なんかは特にね」


 勘弁してくれ、バリトンっていくらするんだ?安くて50万!?エンジンついてるのか?バイクじゃないか。


……あっという間に吹奏楽にはまっている俺がいた。


 


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