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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
大会編:これこそが吹奏楽部?
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部活開始② 事実は小説よりも奇なり② 美人学生指揮者は……。

毎日あげる!!


頑張れ、自分。

 前回までのあらすじ。


 おっとりな先生が指揮棒を握ったら豹変した。


 まるで、有名なステルスゲームで出てくる特殊部隊の母のような口調とオーラ。そういえば声も似ている気がする。


 以上。あれ、あらすじじゃなくね?……いいや。



 驚きの急変ぶりに頭が追いつかないが、合奏は始まっていく。


「バリトンサックス、吹けてはいるけど楽譜の見すぎと音の切り替えが上手くいっていない為テンポが遅れている。低音パートでは致命的だ、精進しなさい」


「――は、はい」


 言い訳はしたくないが、まだ「音が出せて嬉しいな!」くらいのレベルなのだ。合奏で合わせるなんて無理があると頭をよぎったが、こんなお粗末な状態でも合奏に参加出来ることを喜ぼう。

 サックスは勿論、他の楽器の音を聞き、先生からの注意内容を渡された楽譜に書き込み、自分の技術向上に少しでも役立たせるのだ。



 今演奏している曲は『コラール』と呼ばれている合奏前の準備曲のようなものだと新美が言っていた。

 ゆったりとしたテンポで、難しいフレーズもなくて初心者でも吹く()()は出来る。――だけであって、単調な曲だが演奏する上での注意はとても多い。


「演奏する上での音程の取り方、ブレスタイミング、遅いテンポだからこそ正確に全ての楽器が合わせなければ聞くに堪えないモノになる。その他にも大事な要素がふんだんに入っている。一年生はまだ出来なくて当然だが、一日でも早く基礎を学び演奏するように。――それから、二・三年生はもっと大切に演奏しなさい。貴方達が不慣れな一年を引っ張り、その上で良質なハーモニーを奏でなければいけない。怠慢は私が許さない」


『はい!!』


 淡々と語った後、鋭い眼光で一瞥される。……怖い。

 先輩達が身構えた気持ちが良く分かる。

 ()()()()を知っている分、たちが悪い。

 だが腕は確かなのだろう。指示は丁寧で迅速、ストレスを感じさせることなく演奏が進行されていく。

 

 相手の気持ちを乱さない指示は力になる。サッカーをやっている時に何度も心がけてきたことだ。――流石は吹奏楽部の顧問だ。


「――一年生は空いている教室に移動して、基礎7割、コラール三割の配分で練習しなさい。()()()は教室とメトロノームの準備をお願い。来週くらいに全員で演奏します、上手く出来なかった一年は次の()()()は吹かずに()()()貰う。――では移動しなさい!」


『はい!』


「――よろしい」


 先生は瞼をゆっくりと閉じ、俺達一年が捌けるのを待つ。――何点か気になることが耳に入ったが今は急いでここを出出よう。


***

「学指揮ってのは学生指揮者の略称、私達のことなのー」


 俺達を空き教室に案内してくれた三年ホルンの水瓶(みずがめ)沙耶(さや)さんが説明をしてくれる。……おっとりとした口調なので先生を彷彿とさせる。まさか、先生の様にはならないよな?……フラグじゃないぞ。

 ちなみに、木管楽器は沙耶さん。金管・パーカッションは違う教室で行う様だ。弥生さんが先導しているので、あの人も学指揮なのか。どんな指示を出しているか容易に想像できる。


「学指揮の主な仕事は、基礎練習の内容を決めて指示を出す、先生が不在の時の合奏の指揮、大会以外の演奏会で指揮を振ったりするのー。ほんと大変なんだよー」


 ニコニコと笑いながら言われても説得力がないが、内容を聞く限り大変なのは事実だろう。部長の仕事のような気がするが、サッカーでいうところのキャプテンと司令塔といった感覚で捉えると理解しやすいな。部長はキャプテン、司令塔は学指揮というわけだ。


「――あ、そうそう。先生が言っていた踊りの件なんだけどね、2週間後に駅前で演奏会があるのー、だから来週の演奏がしっかり出来ないと、踊ったりしてお客さんに楽しんでもらうつもりなの。頑張ってね」


 綺麗にウィンクを決める沙耶さん。……この学校、工業高校だけど綺麗な女生徒が多いな。彩矢さんといい沙耶さんといい、先生もだ。

 

『はい!』


「それじゃあ各自頑張ってねー、私は弥生ちゃんの様子見てくるからー」


 手を「バイバイ」と振り、教室を出て行く。大人の雰囲気すら出ているな。世話好きな先輩OLみたいな感じだ。


「何をイヤらしい眼で見てるんだい?確かにエロい身体しているけどさ」


「お前と一緒にするな新美。そんなんじゃない」


「そう?世話好きな先輩OLみたいなエロさを感じたけど」


「――エロを抜けよ、それ以外は同じ感想だから」


「はいはい、練習しようか。時間が勿体ない」


「だな、頑張りますか」


「――あー言い忘れてた」


 沙耶さんが教室の入り口から顔を覗かせる。


「踊るといっても、衣装は――()()だからね」


『な、なにーーーーーーー!!!』


 俺達が恐怖の雄叫びを上げると「ふふふ」と真珠のような漆黒の瞳が輝く。


 ()()()()普通ではなかった。フラグを立てた俺の所為か?


 この人はドSだ。


 事実は小説よりも奇なりパート2。

 おっとり美人先輩はドS。


 

「新美!()練習するぞ!!」


「ああ!鞍馬君の女装だけなら良かったんだがな。オレ達も入るのは嫌だ。……くそっ!!」


 俺は新美の発言を完全に無視して練習に取り組むのだった。

 

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