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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
冬の陣:アンコン・SJ&Pコンテスト編
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鷹谷のマイルール

「いい感じに気合が入っていますね~」


 争覇先生は基礎練習を眺めてニコリと微笑む。


 基礎練習を変更して数日が立つ。やはり初めは戸惑いがあるのは想定内であったが、思いのほか早くに順応してくれた。夏の時にあれこれやった成果が出ていると思うと少し嬉しい。


「楽しい基礎練が出来たらあっという間に上手くなりますからね、頑張って下さいね」


 そう、この基礎練は楽しい――と呼べるのかもしれない。

 週代わりごとに連符が多いソロをパートごとに演奏する。パーカスがテンポを刻み、それに合わせてソロではなくソリ、複数人で演奏するのだ。

 ちなみに今週はド定番の宝島のソロだ。

 言い出しっぺの俺が模範演奏をしたのだが……思わず笑ってしまうほど出来なかった。

 普段、連符やソロを担当しないバリサクには丁度いい練習だった。

 思えば、俺が完璧に出来なかったのが良かったのかもしれないな。周りに「このくらいでもいいのか」と思わせることが出来たのだから。しかし、次はそうはいかない。周りが段々とコツを掴んできたら危機感を覚える。それが練習意欲の糧となる。是非、盛り上がって練習してもらいたいところだ。


「鷹谷ー、あんた後で私と猛特訓ね」


「……はい」


 基礎練後に弥生さんから危機感を覚える目付きでそう言われ、俺は盛り上がって練習をする。


***

 演奏会も無事にこなしていき順調と言ってもいいかもしれないと思った矢先に事件――ではないが、嬉しい誤算が出てきた。

 SJ&Pコンテストの演奏が決まったのだ。これにより、ほどよい練習量は厳しいものとなる。


「最近は怠け気味だったからな、丁度いい」


 指揮棒をもった争覇先生は眼光鋭く言い放つ。決して怠ける様な練習をしたつもりはなかったが、たしかにそう言われれば夏の大会ほどの焦りや集中力が消えかけていたかもしれない。


「吹奏楽のメインは夏の大会だとほとんどの者が思うだろう。それは当然ではあるが、吹奏楽にとってメインではない時期はない。小さな演奏会から大きな大会まで限られた時間で最大限の練習をして本番に臨む。これを3年間ひたすら頑張るから最後の定演で最高の体験が出来ると言うもの……。11月が終わり基礎も少しずつ良くなってきた。これからは基礎と曲練の時間をどこまで効率よくやれるか、の時期に入る。アンコンもSJ&Pコンもやる以上中途半端は許さない、いい?」


『はい!!』


「では――アンコンの練習に入る。いつも通りみんなの前で演奏をしなさい。決まりは変わらない、しっかりと褒める所を見つける様に。ただ、演奏する時の気持ちはいつも通りでやらないように……」


 冬が本格的に始まってきた……。


***

「そういえば、ふと思ったことがあるんだけど」


 部活終了後、みんながへとへとの表情をしている中、俺と新美は顔色を変えずパート練をしていた。やっぱり新美は凄いな。


「……聞いてる?」


「ああ、ごめん。それで?」


「君ってさ……絶対に人の悪口言わないよね?」


「へ?」


 何とも面妖なことを言うな……、なんだよそれ。


「そんなことはないだろ?言ってるって」


「ああ、違う違う。吹奏楽のことに対してだよ。鷹谷くんって相手のここが悪いとか言わないよね」


 ああ、そういうことか……。


「まあ……実は心掛けているんだよ。人の悪い点は言わない、良い点を見つけるって」


「ほう、美徳な考えをお持ちで」


「別に美徳なんて呼べる行為じゃないさ。昔からの癖ってやつでね。悪いところを見つけるのは簡単だけど、良いところを見つけるのは難しい。自分のプライドとかが邪魔をしたりするから余計にな。でも、そんなプライドを捨てて、相手を尊敬して、良いところ……参考になる部分を自分ならどうするか?自分の武器にならないかって考える様に兄貴に言われて……それからずっとだな」


「ほーお、羨ましい考え方だ。そのスタイル貫きなよ、きっと大きな力になる」


「どうも。新美も真似してみるか?」


 俺が微笑気味に返すと新美は手を軽く振る。


「そこまで人間出来てないよ。でも――相手の悪いところを見つけて自分より下がいる……なんて考えは持たない様にしないとね」


「当たり前だろ。どうした急に?」


「アンコンってのはさ、同じ楽器の学生の音を通常の演奏よりもクリアに聞こえるだろう?だから気になってしまうのさ自分の技量って奴を」


「…………そういうものなのか」


「そろそろ他校と合同でアンコンの試奏会があるだろ?そこで感じるかもよ。今まで気にしなかった自分の実力。他校の自分と同じ楽器を吹いている人達とのレベルをね……」


「忠告ありがとな。でも……俺はいつだって勉強させて貰う気持ちでやっているから、周りから下手だって言われても甘んじて受け入れるよ」


「小説の主人公みたいなこと言っちゃって……なら、ライバルでも見つけるこったね。より燃えるだろうよ」


「それこそ小説だな。探してみるよ」


 なんだかアメリカのウィットな会話を連想させる。


 まずは目先の課題から。試奏会を目指して練習あるのみ……。

気付いている方もいらっしゃると思いますが、鷹谷は「あの人は音が~」や「俺の方が上手い」とか絶対に言わないです。というか、言わせないようにしています。


これは僕がしてしまった――というより、結構な方がやっていることかもしれませんね。


鷹谷大志は「理想的な上手い人はこうであってほしい」というコンセプトで描いていたりします。


学生時代、この考えは良くないと重々承知なのですが、自前の凄くグレードの高い楽器を使って「私は上手い!」というような顔をされている方を見ては「楽器の戦闘力が桁違いだ……!」と演奏者を素直に褒めれなかった時がありました……。情けない話です。


鷹谷くんにはそういった考えを持たないで頑張ってもらいたいですね。


……珍しく後書きっぽいことを書きましたね(笑)

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