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ブラバン・B・アンビシャス ~吹奏楽で大志を抱け~   作者: 庭城優静
冬の陣:アンコン・SJ&Pコンテスト編
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冬の始まり 

奇跡……!*1週間以内の更新を目指していました(このレベルで?嘘だろ)

 3年生が引退をして数日がたった……新しい体制での部活動のスタートだ。


「さあ、始めようか」


 爽やかな口調でそう切り出すのは、部長になった鹿島亘さんだ。長めのさらりとしたストレートの髪と柔らかい目元が特徴の優しき部長。


 夏休み中に2年生は部を纏める練習をしているだけあって、早い段階で様になっている。


「今月のスケジュール表を配る、パートリーダーは取りに来てください」


 亘さんと同じく優しく控え目な口調なのは副部長の相田正久さん。くせ毛と黒縁の眼鏡を掛けている優等生の様な身だしなみをしている。凱旋にしては珍しい――というと、また可笑しな話なんだが……。


 今はもう11月。スケジュール表を見ると、大会は暫くないが演奏会はぼちぼちと入っている。

 12月にはクリスマスコンサート、そして来年にはアンサンブルコンテストが控えている。


「少し先の話になりますが、アンサンブルコンテストの説明をしたいと思います」


 正久さんの説明が始まる。天馬さんの時と同じく、こういった話は副部長の仕事のようだ。


 アンサンブルコンテスト、各高校2グループが出場可能で、編成は自由。しかし、同一人物が2回出場するのは駄目だと言う。たとえば、サックス4重奏でコンテストに出場出来たとする。そして、俺がもし木管の何重奏かに参加しているとすると、どっちかには参加出来ない、といった感じだ。


「アンコンでは個々の音がはっきりと聞かれますし、緊張感は夏の大会以上かもしれません。学指揮のお蔭で着々と演奏レベルは上がってきています。個々の力が発揮される機会です、気合を入れていきましょう」


 夏の大会に向けて基礎練習は大分変えてきたが、個人の力を底上げする時間はなかった。この冬の期間はそういった面では夏以上に貴重な時間なのかもしれないな。


「12月の中旬には他校の高校を交えての選考演奏会のような場がある。そこでは全部の編成で出場するので頑張る様に――それと、今回も2グループに選ばれた編成にはご褒美がある。部費で『はれやか』のハンバーグと『マルタや』のチーズケーキを食べていいぞ」


『おおおおおおおおおお!!』


 ……そんなに盛り上がることか!?でも嬉しい。


「頑張って下さいね~」


 先生はふふふと淑女の様な笑みを浮かべる。


「――さあ、編成と曲選びを始めてくれ」


 亘さんは優しい口調でそう言うのだった。

***

「サックス4重奏で行くわよ!異論は認めない」


 サックスパートのパートリーダーとなった弥生さんは力強く宣言する。みんなそう言うと思っていたので誰も異論は言わなかった。


「木管で出るのも後ろ髪引かれるけどね」


 新美の言い分も分かる。やったら楽しそうだと思っていたところだ。しかし……、


「そこまで余裕はないのよ。アンコンだけじゃなくて、普通に演奏会用の曲練習もやっていかないとだしね」


 そういうことだ。やりたいこととやれることの範囲はしっかりと分けた方が効果が出る。


「新美、来年やろうぜ」


「そうだね、余裕があればね」


「よし!じゃあ曲選びね。やりたい曲ある?ないね?じゃあ私の選んだ曲で行くわよ!」


「聞いてからにしましょうよ」


「分かっているわよ。早く部室に行くぞ!他のパートにコンポ取られちゃう」


 俺達は急いで部室に向かって行く。他のパートはまだ相談中のようだ。


「――――どうよ?かっこいいでしょ」


 何故か悔しい気持ちが出てくるが、たしかにカッコいい。アンサンブルというよしんみりとしたイメージがあったが、これはテンポ感も速くお洒落だ。


「ああ――こういった曲ならいいかも。ゆったりとした曲だと自分の音が際立っちゃうから」


 彩矢さんは少しほっとした顔をする。


「テナーのソロめっちゃカッコいいですよね?」


「ううっ!」


「新美!たしかに目立っててカッコいいけど止めろよな」


「いや……あんたが追い打ちかけてどうするのよ。彩矢、諦めなさいって。アンサンブルは全員目立つから」


「分かっているけど~。……うん、頑張る」


 彩矢さんは珍しく鼻を可愛く鳴らす。やばいな、思いっきり抱きしめたい。


「……ここでやるなよ」


「な、な、何のことだい新美くん!?」


 こいつ……!心の中読みやがって……!


「よっし!じゃあ決定、先生と部長に連絡してこよっと。絶対に選ばれるわよ。ハンバーグとチーズケーキのために」


「えっ?」


「ハンバーグのために」


「えっ?」


「……チーズケーキのために」


「彩矢さんまで?」


 こうして俺達の夏――ではなく、冬が始まった。

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