部活開始① 事実は小説よりも奇なり
やっと吹奏楽が始まるぜ!!
誰かの所為でな!!(お前だお前)
翌日、俺達一年は吹奏楽部の部室に案内される。そういえば、練習場には何回も来ていたが部室はまだだった。 ――といっても、練習場のすぐそばにあるのだが……。
通常の教室を半分にした部屋には、部員の鞄置き、ちょっとした打ち合わせに使うであろう長机とパイプ椅子、部屋の隅には吹奏楽関連の本とCDコンポが置かれていた。
暫くして部長、副部長、各楽器のパートリーダーが入ってくる。
俺達一年の部員は14人だからかなり窮屈だ。
「全員いるな?――天ちゃん」
「応よ!」
副部長の玲哉さんは周りを一瞥した後、部長である天馬さんに合図を送る。――ちょっとまて、天ちゃん?仲良いな。
「放課後になったら部室に入って鞄を入れる、隣の視聴覚準備室に仕舞っている楽器や譜面置きを各自持って練習場に行く。……こんな感じかね」
天馬さんはざっくりとではあるが、一通りの説明を済ませて息を漏らす。
「部室、準備室、練習場の準備や掃除はパートごとに入れ替わりでやることになる。詳しくはパートリーダーの指示に従ってくれ。――よし、実際にやってみよう。やった方が早い。パートリーダー……パーリーと呼んでいるのだが、パーリーは説明しながら準備をしてくれ。今日は基礎練、パート練、合奏といつも通りやるからな。今日は顧問の争覇先生が顔を出すから覚悟する様に」
玲哉さんの詳しい説明の中、顧問が顔を出すという発言でパーリーの顔色が悪くなるのが眼に見えて分かった。そ、そんなに怖い先生なのか?
***
パーリーの指示に従って、準備を進め部長のあいさつで部活動が始まる。
基礎練習は隣にいる彩矢さんに教えて貰いながらこなしていく。――流石に習いたての身には難しい練習だった。でも、上手くいかないってのはいいな。上手くいかないから練習に身が入るし、出来た時には更に上の技術を学ぶことが出来るのだから……。
部活終了後、新美にそう語ったら「+思考の化身だね」と冷笑された。何でだ?
***
なんとか基礎練、パート練が終わり、いよいよ合奏という時だった。練習場のドアがゆっくりと開く。
「お疲れ様です~」
おっとりとした眼、すらっとした体躯に灰色の髪を後ろで束ねている綺麗な先生が姿を見せた。――これが顧問の?
「全員、起立!!」
考えを掻き消すように天馬さんが号令をかける。
「よろしくお願いします!!」
『お願いします!!』
「はい、お願いします」
体育部活並みの挨拶で争覇先生に頭を下げる。
「一年生の皆さん始めまして~、吹奏楽部顧問の争覇翔子といいます。専門は国語なので私の授業を受けるかもしれないですね、どうぞよろしく~」
パチパチパチ……、拍手が起こり先生はそれに答える様に頭をペコペコと下げる。
なんだかとてつもなく優しそうでおしとやかな先生だ。なのに先輩達が身を引き締めている。
笑顔で毒舌を吐いてくるタイプか?それとも漫画みたいに指導すると性格ががらんと変わるとか?――流石にそれは漫画の読み過ぎだ。現実を見ろ。
「早速ですけど合奏の指揮を取らせてもらいますね~」
先生は指揮台に上がり、ゆっくりとした仕草で指揮棒を取り……。
「――準備はいい?真剣になりなさい。時間はあまりない」
……指揮棒を取り、人が変わったような狼の様な眼光を向けるのだった。
事実は小説より奇なり。
俺は深い息を吐き、楽器を構える。
面白くなってきた。




