【ダンボール】さくさくスナック小説
ことんっ
押し入れの中にあったダンボール箱を、私は床に置いた。
これは、いつ頃しまった物だっけ?
他のダンボールには、何が入っているか書いてあった。
ただ、この箱だけ何も書いてないのだ。
ダンボールには、これでもかという程ガムテープが巻いてある。
いくらなんでも巻き過ぎじゃないかな?
私は過去の自分に苦笑しながら、ダンボールを開けた。
ふわっと懐かしい匂いがした。
甘くて、温かくて、イキイキとしているけど、古い。そんな匂い。
若い頃に嗅いでいた匂いだ。
私は、一瞬にして箱の中身を理解した。
これは、私がまだ若くて夢を追いかけていた頃のものだ。
私は、箱の中に入っていたペンと紙を取り出す。
懐かしい。
あの頃は、沢山漫画を描いていた。
いくら描いても描き足りなくて、沢山描いた。
世界が輝いていた。
いつごろだったか...。気付いた時には、世界が酷く歪んでいて、自分の才能の底が見えてしまって、
怖くて
諦めた。
私は、ふっと息を吐き出す。
自然と笑みが零れた。
そして、気付いた。
やっと過去になったんだ。
今私には、普通に家庭があって、普通にお母さんをやっている。
今の道を選んだのが正しいかどうかは、昔も今も分からない。
それでもこれだけは胸を張って言える。
私は今幸せだ。




