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サイクリングストリート  作者: けろよん
勇者の挑戦

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59/69

闇烏隊の襲撃

 その夜、結菜は出かけることにした。

 居候をしている麻希もクラスメイト達と一緒に星を見ることに興味を持っていたようだ。

 自転車を漕いで一緒に行くことにした。


 夜の暗闇を街灯が照らす山のふもとの広場に着くと、すでにクラスメイト達が集まっていた。

 自転車を降りてハンドルを握ったまま、結菜は小高い山を見上げる。神様がいた山とは別の山だ。


「ここで見るの?」

「ううん、もっと上だって」

「そこで見た方が町の明かりが遠くて綺麗に見えるんだって」


 結菜の質問にクラスメイト達が答えた。


「でも、登るの大変そう」

「そんなに急な山じゃないから大丈夫ですよ」


 話していると委員長の美久がやってきた。


「みんな集まったようですね。では、行きましょう」


 美久がみんなの確認を取って、山へ向かうことにする。

 集団の自転車をここに置いておいても迷惑なので、上まで押していくことにした。

 だが、その時、背後で自転車のブレーキ音が鳴って、その足を止めた。

 みんなは振り返って、その顔色を変えた。

 そこにいたのがどう見ても友好的とは思えない黒い集団だったからだ。

 みんなが自転車に乗り、不気味な笑みを浮かべている。

 まさしく不良グループに絡まれた一般の生徒達といった図式だった。

 怪しい連中の中央にいる人物が話しかけてくる。


「少し待ってもらえるかな。あたしらは伝説の勇者様のファンなんだ」

「結菜様の……?」


 美久は視線を結菜に向ける。相手はそれを見ていた。


「やれ」

「へい」


 短い言葉とともにリーダーの隣にいた黒ローブから鎖のチェーンが飛ぶ。美久は何が起こったのか分からなかった。

 気が付けば自転車を押していた自分の腕が鎖に取られ、引っ張られていた。

 自転車が倒され、体を引きずられ、黒ローブの腕と鎖が美久を捕えて絞めつける。


「さすが真魚さんの鎖術はいつ見てもえげつねえぜ」

「あこがれるねえ」


 不良グループの発言によると、美久を捕えた人物は真魚というらしい。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。美久が人質に取られたのだ。

 クラスメイト達からは反感の声が飛んだ。


「何をするんだ!」

「委員長を離して!」

「何もしはしないさ。あたしらはただ伝説の勇者様と親睦を深めたいだけなんだからな」


 リーダーは自分のフードに手を掛けて、それを下ろした。

 現れたのは結菜達とそう年の変わらない、だが周りの全てを敵と嘲っているような冷酷な少女の顔だった。


「あたしは渡辺友梨。この闇烏隊を率いているリーダーさ。なあ、勇者様。あんた強いんだろ? あの翼にも認められたんだってな。その力をぜひここでも披露してくれよ。見せてくれよ、勇者様の俺つえーって奴をな」


 リーダーである友梨の挑発に周りの連中も乗って囃したててくる。

 結菜は迷った。隣で麻希が動こうとしたのを手で制した。


「大丈夫」


 そう言って、目の前の相手に目を向けた。

 麻希にとってもこの時代のことはこの時代の人達に任せるのが理に叶っている。この場は任せることにする。

 友梨と名乗った少女は薄笑いを浮かべている。結菜は見返す。

 結菜は勇者だ。町のみんなにも認められた。

 ならば答えるのは自分しかいなかった。


「勝負すれば、美久を解放してくれるんですね?」

「ああ、あたしらは別にこんな奴には興味は無いんだ。でもな……」


 友梨は仲間に目くばせを送る。


「ぐうっ」


 鎖が強められ、美久は苦しんだ。

 友梨は再び結菜に目を戻し、残虐な挑発を行った。


「勇者というのはこうして人質を取ってやった方がやる気が出るんだろう? そのためだけの人質だ」


 結菜は奥歯を噛みしめた。こんな怒りが湧いたのは初めてかもしれない。

 翼には勝負には勝つ気で挑めと言われた。だが、今はそんな助言も考慮になかった。

 ただ目の前の相手が許せなかった。

 みんなの注目が集まる中で、結菜は宣言した。


「やります。わたしがお前を倒す!」

「よろしい。ならば勝負だ」


 友梨は満足の笑みを浮かべ、自転車のハンドルを握った。

 それはさながら死神と勇者の戦いの幕開けのようであった。

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