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サイクリングストリート  作者: けろよん
新たな道へ

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25/69

動き出す闇

 人々が平和に暮らす町がある。

 その平和が勇者が人知れず魔王の企みを阻止した結果によってもたらされたものであることを知る者はほとんどいない。

 ある日、魔王が張った町を凍結させる結界ストリートフリーザー。

 町の各所から光の柱となって立ち上り空を覆い尽くしていったその光は一時話題になったものの、消えた後では夢のように人々の間で気にされなくなっていった。

 みんなそれぞれの生活で忙しいのだ。新しいニュースも次々と入ってくる。

 町は元の活気で賑わっている。

 そのいつも通りといえる町の光景。だが、それが再び脅かされる時が迫ろうとしていた。



 高橋美久たかはし みくは町に来ていた。彼女は町を人知れず救った勇者である結菜のクラスの委員長だ。

 前の戦いでは勇者が魔王に挑む手助けをいろいろやっていた。

 その彼女の前で突如として大地が割れた。地割れは駅前の大通りを瞬く間に引き裂いていき、揺れる大地を人々は逃げまどった。

 美久は何とか近くの柱にしがみついて耐えた。

 割れた地面の暗い奥底からどす黒い瘴気が吹き出していく。黒い気流が炎のように渦巻いて天へと昇っていく。

 数多くの魔物達が地の底から現れ、空を覆った暗雲からも異形の魔物達が現れた。

 空中に浮かぶ一際大きな影が形を取り、巨大な悪魔の顔が現れた。

 その邪悪な悪魔は名乗った。


「我は大魔王!」


 と。

 マグマのような真っ赤な瞳、口は耳元まで裂け、ぬめりを帯びた鋭い牙が並んでいる。

 人々は震えながらその悪魔の声を聞いた。美久も聞いた。

 大魔王の声は不気味で、大地に生きる全てのものを震撼させていった。


「人間どもよ、魔王マッキーの野望を砕いて良い気になっているようだが、それもここまでだ。魔王マッキーは所詮この大魔王の手下の一人に過ぎぬのだ。この大魔王が現れたからにはお前達の生命の灯もここまでのものだと知るがよい!」


 大魔王の邪悪な笑い声が町のあらゆる場所に木霊していく。

 美久は大変なことになったと思った。

 だが、まだ絶望ではない。


「勇者様に知らせなくちゃ!」


 この町には伝説の勇者がいるのだから。

 美久は踵を返して駆けだそうとする。だが、行動する前にその頭に空から降ってきた隕石が命中し、美久は気を失って倒れた。



 暗く沈んでいく意識の中、美久は声を聞いた。


「……んか! 起きんか! 高橋!」

「ほわっ」


 美久が目を覚ますとそこはいつもの教室だった。大魔王なんかどこにも居ず、いつもの授業が行われていた。

 伝説の勇者の方を見ると田中結菜たなか ゆなは首を傾げている。魔王の方を見ると黒田麻希くろだ まきは我関せずといった様子で教科書のページをめくっていた。

 教室の多くの人達がおかしそうな笑顔を浮かべている中、恐いことで知られる先生がすぐ間近で鬼のような顔をしてゲンコツの拳を固めていた。

 痛む頭を美久はさすった。先生は怒声をあびせてきた。


「授業をちゃんと聞かんか! お前は委員長だろう!」

「は……はい!」


 美久はその時になってやっと自分は夢を見ていて、先生にゲンコツを食らったのだと気が付いた。

 背筋を伸ばして姿勢を正す。

 先生の授業が再開されていく。

 聞きながら、美久は確信を持っていた。

 さっきの夢は酷くリアルだった。あれは夢ではない。予知なのだと。

 美久は昔から勘の鋭い少女だった。結菜が伝説の勇者であることをいち早く見抜いたのも彼女だった。

 美久は確信していた。

 間もなくこの町に大魔王が現れようとしているのだと。

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