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そんなことがあってから、少しばかり後の話
そんなことがあってから、少しばかり後の話です。
『鉄の町』の丘の上。
そこに、お父さんとお母さん、そして、男の子が手を繋いでやってきました。
お父さんが大きな木を指して、したり顔で言います。
「あの木にはな、妖精が住んでるんだぞ」
「知ってるよ。お母さんの描いた絵本の話でしょ」
男の子が答えました。
「あれは本当にあったことなのよ」
お母さんは苦笑いしました。
「妖精なんている訳ないじゃん。なんか着物姿の女の人がいるけど、それだけでしょ」
男の子の言葉に、お父さんとお母さんは顔を見合わせました。
「おーい、そこにいるのかー?」
お父さんが、手を振ります。
「お父さん、どこに手を振ってるの? そっちには誰もいないよ」
男の子は戸惑います。
けれど、お母さんも構わず手を振ります。
「ひさしぶりー。この子にもね、話を聞かせてあげて欲しいの。昔あったいろんなこと、楽しかったことも、悲しかったことも全部!」
お母さんも大声で呼びかけます。
その言葉に答えるように、丘の上の大きな木は、ざあっと音を立てたのでした。