○○1-11 マスコットの技○○
「さ、次は先輩の番です!」
動きを一通り確認後、氷上は厭らしい笑顔で言った。
いや、そんな張り切らなくともやるけども。
先ほどとは変わって、氷上が映像撮影と書類への記入。
俺が撮影される側へと回った。
「って言っても、俺、技とかねぇぞ」
氷上と契約してわかったこと。
俺、変身能力がないどころじゃなく、技まで使えない事が判明した。
先ほどから何か思い浮かばなかと、天啓が降りてこないかと、色々してるのだが何もなかった。
講習での知識では……通常、こういう場合。
パートナーが変身している状態で心に問いかけると、何かしら思いつくらしい。先ほどの氷上のように。
だが、俺には残念ながら無かった。
「えぇ……。先輩、それって……。ポンコツですら姿形は整っているのに、中身まで無いとかー……。なんですか。先輩、もしかしてゴミ? ゴミなんですかー?」
何も言い返せねぇ……。
氷上の目を見返せなくて、左にいた他のヒーローの姿を見ていた。
いいですねー。普通のヒーローさんは。
おーおー。派手な技を使いやがって。……羨ましい。素直に、妬ましい。
「……契約、やっぱ辞めようかなー」
ポソリと呟かれた氷上の言葉。
ともすれば、聞き逃しそうになるほど小さな声だった。
……気が付けば、俺は壁を見ていた。
「……えっ? ええっ?」
頭上で氷上の困惑するような言葉が聞こえた。
……俺は今、どうなっている?
混乱する思考の中で、あたりを見渡せばそこは床の上。
膝を腹の下に曲げ、頭の両脇で手を地面についている。
……。
なるほど。
俺は今、土下座をしているのだ。
なぜ?
それは先ほどの氷上の言葉を聞いたから。
脳で氷上の言葉を理解するより早く、体が動いたのだ。
──一瞬、視線が全て低くなったことで『もしや変身したのではないか』、という淡い期待を返せ。
「せ、先輩……何やってるんですか……」
見上げれば、パンツ──否、違った。突っ立っている氷上。
引きつった表情で、俺を見下げている。
「いや、なに。少々、思うところがあってな」
何事もなかったように立ち上がり、膝を叩き、ネクタイを締め直す。
「意味が分からないです……」
俺もわからないです。
……けれど、まぁ。
俺が本心では氷上に辞めてほしくは無いと思っている、無意識の行動だったのだろう。
それでも、もし氷上が辞めたいと言った時、あまり尾を引かないようにしなければ。
俺のようなポンコツ──否、ゴミマスコットと一緒に底辺を彷徨わせることもない。
「ま、まぁ。いいです。今のを見ると動きは悪くないみたいですー。アクションには期待しますから頑張ってくださいよー?」
「お、おう」
自信はなかったが、それなりに動ける事を確認できた。
具体的には氷上並みには。
何が出来るかは知らないが、とりあえず氷上と2人でホッとした。
短くてすいません。難産です。




