第二十二話 「死闘の結末」
長すぎたので分割しました
--- シャウナ・レイヴァース視点
シャウナは折れた剣には目もくれず、魂喰いの剣を食い入るように見つめる。
何故、剣が折れたのか。
剣の強度で負けたからだ。
何故、強度で負けたのか。
武器に魔術障壁魔術が掛かっていたからだ。
本来、物に魔術障壁魔術を掛けることはできない。
ただし、聖王姫の称号を持つ者は物に祝福を与える能力がある。
武器・防具に魔術障壁魔術を掛けることができるのだ。
魔術障壁魔術された武器・防具は、通常の武器・防具に比べて圧倒的な強度を誇る。
千の魔物を切り捨てようとも刃こぼれしない。
万の軍勢を切り捨てようとも切れ味は落ちない。
が、障壁破砕闘術で破壊できるので種がわかっていれば怖くない。
だが、想像すらしていなかった。
聖王姫の称号を持つ者はただ一人。
シャウナと共に最後の最後まで勇者と戦ってくれた仲間。
聖王姫アスタルテ。
勇者との戦いでシャウナを逃がしてくれた恩人である。
殺されたと思っていた。
「どうして……」
何故、魂喰いの剣に魔術障壁魔術が掛かっているのだろうか。
「裏切られたんだよ、お前は。なぁ、シャウナ・レイヴァース」
勇者が歩み寄ってくる。
歯を剥き出して笑っていた。
遠くでレイキが何かを叫んでいる。
「裏切るはずがありません……、あの子は、そんな子では……」
「そうだよな、あんなに純粋で真っ直ぐな奴が裏切るはずがないよなぁ……。ただまぁ、どちらかを選べと言われたら。例えば、聖王国の国民全員の命と引き換えなら、どうかねぇ?」
「殺したのですか!?」
「上の浮かんでるアレ、すげぇだろ? アレで攻撃すると都市が丸ごと吹き飛ぶんだぜ。粉々だ、直撃部分は塵も残らねえ。でもま、慈しみ深き聖王姫様だ。魔力の続く限り蘇生魔術を頑張っていたぞ。死体なしの蘇生魔術がどれだけ大変かって言うのによくやるぜ。まぁ、気絶しながら、ゲロ吐きながら頑張っても、魔力が足りなくてほとんどゾンビかゴーストになってたけどな」
「……っ、なんてことを……!」
街がひとつ消えるということは、一万人は死んだであろう。
蘇生魔術で生き返らせられる人数ではない。
「残りの街もいくつか吹き飛ばしてやったら、さすがの聖王姫様もポッキリ心折れてね。俺の言うことを素直に聞いてくれるようになったわけだ」
そして、勇者はさも楽しそうに話す。
「そう言えば伝えてなかったな。魂喰いの剣を破壊しても、覇王姫セリアと冥王姫アウローラが戻る体はないぞ。聖王姫と一緒に浄化魔術を掛けたからな」
「浄化魔術……ですって……」
不死者は色々な条件で不死性を維持している。
呪いによって老化せず死んでも肉体が腐らない、とか。
元々死んでいても動き回ることができる高位のアンデットである、とか。
前者は覇王姫セリアの不死性を指し、後者は冥王姫アウローラの不死性を指す。
浄化魔術は呪いを解いて不死者を滅する魔術だが強者には効果がない。
「そんなこと、できるはずありません……、効果がないです……」
「本当にそう思うか? 聖王姫の浄化魔術が覇王姫と冥王姫に効果がない、と」
以前、王姫たちとそんな話題をした記憶がある。
抵抗しなければわたくしにも効果あるんじゃないかしら、と覇王姫は答えた。
抵抗魔術なしで直撃すれば余は滅びるであろうな、と冥王姫は言った。
喉が引きつった。
「ぁ……」
二人の魂は魂喰いの剣にある。
体だけ残されていて反撃されないのであれば、赤子の手を捻るようなものだ。
戻れる体がなければ死ぬしかない。
神獣のように依代を探してどうこうなんて真似をできるわけもない。
「あ……ぅ……そん、な……」
涙がこぼれ落ちた。
認めたくない事を認めてしまっていた。
頭では否定していても心が肯定している。
シャウナが犠牲にしてきたすべてが無駄になった。
その場にへたりこむ。
手から滑り落ちた剣の柄が地面に転がった。
「あーあ、本当はお前が魔王だったから、ここまで準備しておいたってのに……無駄になっちまったんだよな。でもま、満足だぜ」
逃げなくてはいけない、と思った。
これは勇者の策略なのだ。
心を抉る紛いごとの羅列に過ぎないのだ。
思うだけで体は動かない。
涙だけが延々と溢れてくる。
勇者の手が乱暴にシャウナの顎を掴む。
「良い顔してるぜ、シャウナ・レイヴァース」
シャウナの心臓を魂喰いの剣が貫いた。
シャウナは震える指先で刀身を掴む。
このまま死ねば魂を囚われる。
回復しなくてはならない。
「癒しの……力、よ……」
再生魔術の詠唱をはじめる。
勇者の魔術が発動する。
「――魔力吸収魔術」
シャウナの魔力がごっそりと失われる。
闘気障壁闘術がないせいで、根こそぎ魔力を奪われたのだ。
「回復されると面倒だな。――闘気吸収闘術」
闘気もすべて奪われた。
勇者はシャウナの肩に足を乗せると、力任せに剣を引き抜いた。
シャウナはゴミのように打ち捨てられた。
朦朧とする意識の中、流れ出る大量の血を眺めていた。
血液はミシュリーヌ人も流れているが、魔力と闘気があれば死なない。
致命的なのは魔力枯渇と闘気枯渇。
魔力と闘気を失ったら普通のミシュリーヌ人であれば即死なのだろうが、シャウナは獣人族の特徴を持つ魔族。
ゆっくりと死ぬ。
真上から勇者の声が振ってくる。
「頑丈だな。ちょうどいい、そこで見てろ。最後の魔王が死ぬ瞬間をな」
勇者が、レイキに向かって歩いていく。
レイキは陽織の遺体を抱いたまま動かない。
――これが私の最後の光景だというの……?
考えうる限り最悪の死に際であった。
知識を求める旅は途中だ。
密かに考えていた番探しも出来ていない。
声が嗄れるほど叫びたくなる。
が、悔しさに呻く力すら残されていない。
シャウナに許されるのは、絶望的な戦いの行く末を見せつけられることだけであった。
--- 流 玲樹視点
希望は断たれた。
そう、勇者は思っているだろうか。
陽織は死に、シャウナは瀕死に、魂喰いの剣砕きの剣は砕け散った。
しかしである。
すべてが終わってしまったわけではないと思うのだ。
俺は傍らに落ちている魂喰いの剣砕きの剣の切っ先を見やる。
懐のエイルにもらったナイフを握りしめる。
勇者は勝利目前である。
しかし、俺はまだ諦めていない。
勇者は二刀流をやめた。
魂喰いの剣だけで仕留めるつもりってわけだ。
「待たせたな、魔王。お前の番だぜ」
俺は陽織の手を離して立ち上がる。
魔術を発動すべくイメージする。
「遅かったな、決着をつけようじゃないか」
「とっとと、死に腐れ――!」
勇者が魂喰いの剣を構えて迫る。
全身の勢いに乗った魂喰いの剣の先端は俺の心臓を向いている。
突進攻撃は障壁破砕闘術と突進剣閃闘術を合わせた奥義だとかそんなのだろう。
喰らったら魔術障壁魔術は破壊されて心臓を貫かれた俺は絶命するであろう。
要するに当たらなければいいってことだよな。
ガァァァンと重厚な衝突音がグラウンドにこだました。
魂喰いの剣の先端は、魔術障壁魔術の一寸手前で停止していた。
勇者は全身の筋肉を漲らせて剣を押すが、微塵も動かない。
「馬鹿な……、なにを、しや、がったぁぁぁぁぁ!」
「念力魔術だ」
念力魔術は座標を指定しないと発動しない。
俺は魂喰いの剣がすっぽり入る形に念力魔術を発動させた。
座標は、俺の心臓の直線上の空間だ。
勇者が、陽織とシャウナに止めを刺すのを見て、心臓を狙ってくると考えていた。
しかし、刺突が少しでもズレたり、勇者が切り込み方向を変えていれば、固定した空間を通り過ぎてしまっただろう。
俺が固定した空間へと、一直線に剣を突き入れてくるかは賭けだった。
いま、魂喰いの剣は念力魔術で固定されている。
真っ赤な顔で勇者が悪戦苦闘しているがビクともしない。
「重たいだろ? 念力魔術にありったけ魔力を注ぎ込んでみたから五○○トンくらいの重さで空中に固定されているんだ」
「ふざ、けやがって、剣が使えなくたって……!?」
勇者は腰に差していた剣を引き抜こうとして、止まった。
「剣が使えないと困るのはお前だろ? いいのか、俺を魂喰いの剣で殺さなくて」
勇者が残った剣で魔術障壁魔術を破壊したとしても、俺に止めを刺すわけにはいかない。
俺の魂を捕えることができないからだ。
「くそがぁぁぁぁぁぁあああ!」
「ゆっくり考えてくれよ。その間に……、俺は、魂喰いの剣をぶっ壊す!」
俺は魂喰いの剣の刀身を掌で包む。
両手で挟み込むように最大集束炎閃魔術を発動させる。
だが、刀身は灼けない。
「ク、クハハハ……、魔術障壁魔術の掛けられた刀身は闘気で守られているんだぜぇ? テメェの魔術じゃ破壊できねえ!」
「そうかい、闘術で破壊する必要があるんだな」
俺は胸ポケットにしまっておいた、エイルのナイフを取り出す。
これは障壁破砕闘術と同等の効果がある。
魂喰いの剣の魔術障壁魔術壊せる。
俺はエイルのナイフを魂喰いの剣に突き立てた。
パリンと音がして魔術障壁魔術が割れた。
「な、なに……!? その、ナイフは……」
あとは魂喰いの剣砕きの剣の出番だ。
念力魔術で魂喰いの剣砕きの剣の切っ先を拾い上げた。
ピタリと空中に静止する。
折れたとはいえ鋭い先端を残した剣は無防備な魂喰いの剣の腹を狙っていた。
刀身が太陽光にギラリと輝いた。
「その武器を、捨てろぉぉぉぉぉ!」
勇者がありったけの魔術を連射して魂喰いの剣砕きの剣を撃ち落とそうとする。
俺がそのすべてを払いのける。
魔術戦で俺に勝とうなんて焦りすぎだ。
素直に魂喰いの剣を離して、切り落としにいけばいいものを。
そんな助言はしてやらないけどな。
「これで終わりだ」
「テメェ――ッ、やめろぉぉぉぉぁぁぁ!」
勇者の絶叫を聞きながら、俺は魂喰いの剣砕きの剣を放つ。
魂喰いの剣砕きの剣は魂喰いの剣を射貫き、二本の剣は細かな破片となって飛び散った。
俺と勇者は、力場を失った念力魔術の反動に弾き飛ばされた。
砕かれた魂喰いの剣からおびただしい数の光の礫が溢れだす。
青白い光を放つ蛍のような光が空に浮かび上がる。
これが、囚われていた魂なのだろうか。
ちょっと大きめの二つの魂がシャウナの元へと飛んでいく。
二つの魂はシャウナの周りを踊るように舞い、しばらくすると空高く舞い上がり東の方へと飛んで行った。
シャウナは、まだ生きているのだろうか。
すぐにでも再生魔術を掛けてあげなければいけない。
だが、もう少しだけ耐えてほしい。
申し訳ないが陽織を優先させてもらう。
地面に寝かせてある陽織に蘇生魔術を掛けた。
シャウナに出逢った時に賭けたようなへなちょこ魔術ではなく、魔力をふんだんに盛り込んだ蘇生魔術だ。
宙に舞う青白い光の礫の一つが舞い降りてくる。
あれが、陽織の魂だろうか。
陽織の体に陽織の魂が入り込もうとする寸前。
ビタッとすべての青白い光の動きが止まった。
そして、吸い込まれるかのように一点に集められていく。
「くそっ、まて――!」
陽織の魂を咄嗟に捕まえようとするものの、吸い込まれてしまう。
『フ……フ……フ……、まさか、まさか……このような展開になるとは。これだから人間は面白い。実に愉快な展開であったぞ。ククク、クハハハハハハ……』
居丈高な口調で語り掛けてくる声。
神獣、イルミンスールである。
『大量の魂のおかげで神気も回復したのじゃ。至れ尽くせり、ありがたいことのぉ。さあ、顕現せよ……!』
ゴゴゴゴゴと低く大地が鳴動する。
立っていられないくらいの凄まじい揺れに膝をつく。
集められた魂が白い光の筋に呑み込まれていく。
放心状態であった勇者が我に返る。
「神獣だと……。どういうことだ、魔王!」
めんどくさい、ずっと真っ白になってればいいのに。
掴みかかってくる勇者を押しのける。
「陽織が、……この子が依代になっていたんだよ。神獣の開花を止めつつ、陽織を救う方法として魂喰いの剣を使うつもりだったんだ」
「んなこたぁ、どうでもいい! くそ、開花ってことはイルミンスールかよ。この辺り一体が吹き飛ぶぞ!」
「知ってるよ。俺は陽織を生き返らせないといけないんだ。逃げるならサッサとどこかへ行け」
俺はあきらめずに蘇生魔術を掛け続ける。
が、いくら魔力を注ぎ込んでも反応がない。
もしかして、開花が蘇生を邪魔しているのだろうか。
いつの間にか喧しかった勇者がいない。
勇者は天上の戦略機動兵器に見上げて、誰かと話している。
「……俺様だ。すぐに上空へ逃げろ。俺様か? 合流していたら逃げられん、こっちはこっちでなんとかするからいい。じゃあな」
どうやら戦略機動兵器と通信していたらしい。
戦略機動兵器はぐんぐんと高度を上げて逃げていくのが見える。
勇者は腰の剣を引き抜くと俺の首に当てた。
「一度しか言わねえ……! 俺に転移魔術を掛けろ。やらなければ殺す」
「好きにしろよ。俺が死んだらどうやって転移魔術するんだ?」
「テメェこそ、ここで死ぬ気か!?」
「うっせーな! 陽織を助けられなけりゃ、このまま生き残っても意味ないんだよ!」
俺と勇者は睨みあいながら叫ぶ。
くそが、と呟いてから勇者はポケットから何かを取り出した。
小さな瓶に真っ赤な燃えている羽が入っている。
蓋がしまっているからたちまち酸素が無くなってしまうように見えるのに、どうやって燃えているんだろう。
「これは神獣フェニックスにもらった魔法道具だ。神技、再構築魔術が使える。これでその女を生き返らせてやる。その代わり、俺に転移魔術を掛けろ」
転移魔術か。
俺の魔力の残りでどれだけ移動できるんだろうか。
開花を逃れることができて安全な場所は、羽田空港は近すぎるから、ミシュリーヌに修行に行っていた場所がいいかな。
転移魔術できるのは、俺の魔力残量を考えると三人が限度だ。
ちらりとシャウナを見る。
「シャウナはどうしてくれるんだ?」
「悪ぃが、この魔法道具は一つしかねぇんだ。助けたいんだったら再生魔術でも使うんだな。……俺様に頼むんじゃねえぞ? テメェとの戦いで魔力のほうはすっからかんなんだ」
とすると、一人居残りだ。
ふと、自分の腕を見て試してみたいことができた。
俺は陽織からポケットから銀色の腕輪をもらう。
「転移魔術は掛けてやる。その代わり、陽織も一緒に転移魔術を掛ける。目覚めるまで保護してやってくれないか?」
「俺様に頼むんじゃ……」
「それくらい良いだろ? 冷たい野郎だな」
勇者はガシガシ頭を掻きむしる。
吐き捨てるように言い放った。
「くそが……! いいだろう。目覚めるまでだからな」
勇者が魔法道具で再構築魔術を使ったのを確認してから、俺は勇者と陽織に転移魔術を掛けた。
勇者と陽織の姿が消える。
俺は地鳴りにふらつきながらシャウナに駆け寄る。
再生魔術を掛けた。
「先生、起きてください。先生」
魔力枯渇状態になっている。
ついでに手を握って魔力供給魔術を掛けた。
ほんとギリギリだな。
転移魔術の魔力が怪しくなってきた。
「レイキ……? ここは……、私は、助かったのですか……? 戦いは……?」
やや混乱している先生に早口で最低限の事だけを伝える。
「良く聞いてください、先生。いまから転移魔術を掛けます。近くに勇者と陽織がいますけど、喧嘩しないで状況を聞いてくださいね」
「……レイキは、どうするんですか……?」
俺はシャウナの懐を勝手にまさぐると銀色の腕輪を取り出した。
「先生、これもらいますね。使うんで」
サッとシャウナの顔色が変わる。
俺が何をするつもりなのかすぐにわかったらしい。
さすが、先生である。
「ムリです! そんな魔法道具で魔力衝撃波を防げるはずがありません……、いっしょに転移魔術で逃げましょう!」
「すいません、もう、一人分しか飛ばせないんですよ。さすがに魔力を使いすぎました」
「では、レイキだけでも! 私は放っておいてください! やめて……、そんなの、無謀です……」
ポロポロとシャウナの瞳から涙が流れる。
しがみついてくるシャウナを俺はゆっくりと振りほどく。
「また会いましょう、先生」
俺は問答無用とばかりに、シャウナに転移魔術を掛けた。
シャウナの姿が消える。
俺の魔力は空になった。
ドラゴン戦を思い出す。
あの時もきれいさっぱり魔力が無くなってしまった。
あの時と違うのは守れる人は全員守れたということだ。
もし、ヘマしても心置きなく死ねる。
エイルの腕輪を両手に着け、俺と陽織とシャウナに渡されたすべてのバリア発生装置を起動させた。
イルミンスールの声が聞こえてくる。
『女を守るために残ったか。男の死様だのぉ……』
最後に振り回してくれた神獣に対してありったけの文句をつけておくことにする。
「勝手に殺すなよ、俺は生き残るつもりなんだからな。大体ここは日本の土地なんだ、お前を生やしておくスペースなんざないんだよ。また伐採にきてやるからな、覚悟しとけよ!」
哄笑が響く。
イルミンスールはひとしきり笑うと傲慢に言い放つ。
『面白い小僧だの。良いだろう、もし、ふたたび妾のもとに姿を見せたのであれば、お主の願いを一つだけ叶えてやろう』
「その言葉忘れるなよな」
『フ……フ……フ……、さらばじゃ――』
開花がはじまった。
光が迸る。
真っ白な閃光と衝撃波が奔りぬけた。
淵ヶ峰高校の校舎が砂の城のように壊れてかき消えた。
衝撃波の伝播に合わせて街がなぎ倒されていく。
バキリと一つ目のバリア発生装置が壊れて地面に落ちた。
光は柱となって天を穿つ。
光の中心部分から大地がめくれ上がっていく。
俺の体は大地と共に浮き上がり上空高くに持ち上げられていく。
パァンと二つ目のバリア発生装置が壊れて弾けた。
俺の体は高く高く持ち上げられていく。
そして、遠くへ遠くへ飛んでいく。
景色が凄まじい速度で後方へと流れていく。
空だ。
全ての世界は真っ青に染まり、風鳴りの音だけが、耳を打った。