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第百二話 「光芒の戦い」

 アグボウが去ってからしばらく。

 俺は寝かされていた広場に転移魔術(テレポーション)施設を置いた。

 起動させて魔王国との接続を開始する。


 よし、これでいつでも妖獣族を魔王国へ転送できる。


「大魔王殿。本官は報告と修理のために一足先に戻る。ご武運を」

「ああ、頼んだ」


 レギンレイヴの姿が消える。

 動力部が二基脱落しているうえに、武装はほぼ皆無なのだ。

 居てもらってもしょうがない。


 森の奥から続々と妖獣族の姿が現れた。

 小さな妖獣族が子供かな。

 木の兜と槍を持っているのが護衛の戦士で兜なし槍なしが女の妖獣族らしい。


 うむ。

 皆、同じ格好をしたらさっぱり見分けがつかないな。


 妖獣族の言葉がわかるのは俺とシャウナだけ。

 俺とラテラノはマギアの接近を警戒。

 シャウナは妖獣族を転移魔術(テレポーション)施設へ誘導する役割をすることとした。


 妖獣族は整列して魔王国へと旅立っていく。


 妖獣族はシャウナを受け容れて言う事をしっかり聞いてくれていた。

 やはり妖狐の姿をしているだけある。

 言葉が通じる俺がやっても同じ効果はないだろう、説得力が違う。


 妖獣族が順繰りに転移魔術(テレポーション)施設を通り抜けていくが、いかんせん数が多い。

 だいたい五○○○人ほどの妖獣族がいるのでやっと半分通過したくらいだ。


「ナガレ、きた」


 ラテラノの端的な警告に気を引き締める。


 ザザザ、ザザザザ、と森を走る音がした。


「シャウナ! 急がせてくれ!」

「……! わかりました!」


 姿は見えないが、先手必勝だ。


 対消滅弾魔術(タスラム)を、集束、複製する。

 最大集束対消滅弾魔術(フルチャージタスラム)を発動させると、狙いを定めずに隙間なく撃ちこんでいった。


 白い光弾に触れた木々が塵となって消滅する。

 空気に喰われたかように丸いクレーターがボコボコ生まれていく。


 中途半端に抉られた木々が倒れ、抉られた大地が自重に耐え切れず崩れ落ちていく。


 敵の姿がちらりと見えた。

 黒い、オオカミの様なマギアたちが走ってくる。


「俺は攻撃に専念する。申し訳ないんだけど、ラテラノは防御を頼む……」

「わかった」


 性転換魔術(トランスセクシャル)を使って女になれば魔法障壁を張ることもできるはずだが、アニムス・オルガヌムがないから魔法は使えない。

 もし、マギアが対消滅障壁魔術(シェルター)を突破するような魔法攻撃を使ってきたら、無防備になってしまう。

 ラテラノには魔法障壁を張ってもらい、正面で攻撃を受け止めてもらう。


 ほんの少し強くなったと思って浮かれていたら、気が付けばまた後衛役になっている。

 俺はいつも誰かに守られてばかりだ。


 うっかり溜息をついてしまった。


 ラテラノがくるりと振り返る。

 感情味の薄い瞳でじんわりと見つめてくる。


「ナガレ、集中して。私とあなたは役割が違う。あなたは私の役割ができないように、私はあなたの役割は出来ない。気にすべきことではない」

「人の心を勝手に読むんじゃない」

「顔に書いてある、……わかりやすい」


 魔法を使って読んだわけじゃないらしい。

 今度から目だし帽でも被るべきだろうか。

 またもや溜息がついて出ようとするのを、慌てて呑み込んだ。


 ラテラノが空を見上げる。


「空、多数」

「この辺りの魔物やら動物は皆マギアになったのかね……!」


 右手は地上の敵を、左手は空中の敵を、敷き詰めるように対消滅弾魔術(タスラム)を放つ。


 視界が一瞬晴れ渡るものの、青空も大地もすぐさま真っ黒に染まっていく。

 空と森と大地はすでにない。

 マギアの上にマギアが重なっているようなおぞましい光景が目の前にあるだけだ。


「マギアは考えたりしないのか? むやみに突撃してくるだけなら召喚魔術(サモン)で呼び出した魔物に魔術で攻撃させてもいいかと思うんだけど……」

「知的生命体がマギア化した者は厄介。油断しないで」


 知的生命体とな。

 もしかすると、シャウナに力を与えてくれた妖狐マサキもマギアの群れの中にいるのだろうか。

 妖力を使うマギア。

 考えたくない強敵だ。


「ナガレ、囲まれている。全方位警戒」

「……くっそ……! もう限界だな……!」


 陽の光が遮られていく。

 夜のような真っ暗闇がじりじりと迫ってくる。


 北も東も。

 南も西も。

 世界は黒く染まる。


 唯一の光は天上にわずかに残る青空と中天に輝く太陽のみ。


 雲間から差す光が階段のように見える現象、なんて言ったっけか。

 天使の梯子だったか。


 こんな最悪の状況でなければ神々しい光景だったかもしれないってのに。

 放射状に伸びる太陽光に照らされながらひたすら対消滅弾魔術(タスラム)を撃ち続ける。


 そこへ、待ちに待ったシャウナの声が聞こえてきた。


「レイキ、妖獣族は全員避難させました! 私たちも、はやく!」

「ああ! ラテラノ、少しずつ下がるぞ!」


 ラテラノは横目でちらりとこちらを見て頷く。

 が、その瞳が大きく見開かれた。


「危ない……ッ」


 ラテラノが俺を追い抜いて、シャウナの後ろへ飛び出した。

 刹那。

 転移魔術(テレポーション)施設が大爆発した。


 爆炎が立ち上り、金属片が回転しながらすっとんでいく。


「施設が!」

「上、……まずい――ッ」


 空に浮かぶのは、少女の姿をした黒い生物。

 魔法少女型のマギアたちだった。

 その数、三○。


 彼女たちは黒く染まったアニムス・オルガヌムを構えるとカードを生み出す。


 魔法の発動する光が見える。

 魔法少女型のマギアたちの魔法が一斉に放たれた。

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