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第九十三話 「そびえたつ脅威」

 金剛雷閃魔術アダマンプラズマスラストが弾かれる。


 大海原に突如として大山脈が現れた。

 そびえ立つリヴァイアサンの体は巨躯、などと言う言葉で言い表せないほどの巨大さだ。


「で、っか……過ぎるだろ……!」


 思わず絶叫する。

 こんな巨大生物をどうやって倒せばいいのか。


 胴回りの太さは東京湾を一望するくらいの太さがある。

 全身は東京タワーほどの棘の生えた鱗に覆われており、厚さはざっくり計算で数十メートルに及ぶ。

 胴体の長さは数百キロに及ぶであろう。

 水平線に届くかの位置に尾が波打っているのが見えた。


 腹に震えるリヴァイアサンの声が聞こえてくる。


「お前の存在は恐ろしい。怨みはないが、死んでもらおう」


 リヴァイアサンの鱗が振動を始める。

 大音響を鳴らしながら迫り来る。


 速い、体当たりする気か。


 闘気推進闘術(ブースト)を連続で発動。

 リヴァイアサンの胴体スレスレをどうにか回避した。


 胴体を間近で見て驚いた。


 鱗の下から大量の海水が吐き出されている。

 どうやら海水を取り込んで噴き出すことで、巨大な体を動かす推進力としているようだ。


 すれ違い様に対消滅弾(タスラム)を連射する。

 が、ドーム球場並みの鱗を一枚、穴だらけにしただけだ。


 完全にパワー不足である。


 すれ違い様を狙っていたのはリヴァイアサンも同じだった。

 大気が歪んで見えるような咆哮を上げる。


 キィーンと耳鳴りがした。

 耳からタラリと血が流れ落ちる。

 鼓膜が破れてしまったようで、周囲の音が気持ち悪い雑音となって聞こえてくる。


 耳がやられたくらい平気だ。

 会話は念話魔術(テレパシー)で取り合っている。


「シャウナ、シームルグは見つかったか?」


 やや離れた場所から戦闘を観察しているはずのシャウナに念話魔術(テレパシー)を飛ばす。


「まだ、確認できません。セリアにも気配を辿ってもらっていますが……、魔法を使った姿隠しを使っているのかもしれません。もう少し時間を下さい!」

「わかった」


 時間を下さいか、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?

 なんてセリフを頭に浮かべながら反撃する。


 魔術を溜める。

 対消滅弾魔術(タスラム)を魔術設定の配列に最大数セット。

 同じく魔術設定の複製で、対消滅弾魔術(タスラム)をコピー。


 三○○○○発の最大集束対消滅弾魔術(フルチャージタスラム)を解き放つ。


 運動会で転がす大球くらいの対消滅弾魔術(タスラム)をリヴァイアサンに命中させた。

 光の衝撃に数枚の鱗が塵より細かく崩れる。

 消滅しきれなかった破片がバラバラと海に落ちていく。


 しかし。

 リヴァイアサンが治癒すると、たちまち新しい鱗が生え伸びてくる。

 溜めてから攻撃では遅すぎる。

 もっともっと強力な威力の魔術が必要だ。


「攻めあぐねているか。では、さらに畳み掛けるとしよう」


 リヴァイアサンは体を大きく揺する。

 鱗の下から何かが這い出てきた。

 あれは、魔物か。


 鑑定魔術(アナライズ)で正体を探る。

 どうやら、ミストドラゴンやらウォーターサーペントやらディープシードレイクの魔物を生み出したらしい。

 しかも、サモンの頭文字がないので召喚魔術(サモン)ではない。

 本物の魔物だ。

 数十万もの魔物の大群だ。


 まずいことに魔物の群れは、セリアとラテラノ、シャウナとレギンレイヴの方角にも飛んでいく。


「悪い、そっちにも行った。かなりの数だ!」


 セリアとシャウナに警告。

 雲霞の如く押し寄せる魔物の群れに魔術で応戦する。


 押し寄せる軍隊アリの群れに火のついたマッチ棒を投げ込むような光景だ。

 あっという間に周囲を取り囲まれて、視界が魔物だらけになってしまう。

 全方位に魔術を乱射することで居場所を確保する。


 が、逃げ場はない。

 この魔物の群れを一掃しなくては、リヴァイアサンを攻撃するどころじゃなくなってきている。

 ラテラノは救出しているしここは一旦逃げるべきだろうか。


 そんなことを考え始めた矢先、ぐらりと視界が揺らいだ。


 状態異常系の魔術効果だ。

 強烈な倦怠感と眠気が襲いかかってくる。


 おかしい。

 睡眠や麻痺の状態異常魔術は視線を介してしか掛からない。

 リヴァイアサンとは目があっていない。

 巨大すぎて頭を正面に戦えていないのだ。


 リヴァイアサンの念話魔術(テレパシー)が聞こえてくる。


「効いてきたようだね。もしかすると、抵抗魔術(レジスト)が強力過ぎて、我が身が先に参ってしまうかと思っていたよ」

「……お前にも、効果が……?」


「その通り。これはシームルグが使う音を介する状態異常の魔法、悪夢の旋律テンプテーション・レクイエム。雌個体であるシームルグが使うせいで雄にしか効果がない」


 急ぎ性転換魔術(トランスセクシャル)を掛けるも、酩酊感は消えてくれない。


「無駄だよ。抵抗魔術(レジスト)の限界を超えた以上、解除する手段はない。解毒魔術(ポイズンリカバリー)は効果があるが、音を介して効果が発生するから、この場から離れない限り、解除しても効果が消えない」


 リヴァイアサンから距離をとるべく、闘気推進闘術(ブースト)を噴かす。

 しかし、壁のように立ちはだかる魔物の群れに思うように進めない。

 押し戻される。


「逃がさんよ……、そのための魔物の群れだ」


 と、なればシームルグを倒すより他ない。


 音はどこから聞こえてくるのか。

 わかるはずもない。

 リヴァイアサンに破壊された鼓膜のせいで音はあちこちから聞こえてきている。


 再生魔術(リジェネレイト)で治療をするが、またリヴァイアサンが咆哮をあげる。

 障壁では音の防御まではできないのか?


 そんなはずはない。

 音だって空気の振動で伝わってくるエネルギーのはず。

 対消滅障壁魔術(シェルター)であれば音の攻撃を遮断する。


 つまり、この咆哮は魔法である。

 咆哮の出所はリヴァイアサンの咥内だ。


 俺は天にあるリヴァイアサンの頭部を見上げる。

 遠視魔術(クレアボヤンス)を発動させて、ズラリと並ぶリヴァイアサンの牙の奥を見抜いた。


 白銀の翼を広げて、リヴァイアサンの咥内で静止する、シームルグ。

 リヴァイアサンの咆哮に載せて、悪夢の旋律テンプテーション・レクイエムなる魔法を放っていたというわけか。


 道理で探しても見つからないはずだ。

 神気を消されていたらもはや探しようもない。


 いや、違うか。

 リヴァイアサンの神気と重なって見えるから、咥内にいるシームルグに気づかなかったということか?


「ようやく気づきましたね、大魔王。ですが、もう遅い。あなたにはここで消えてもらいます」


 シームルグの念話魔術(テレパシー)に割り込んできた。


「口だ……! シームルグは、リヴァイアサンの口の中に……いる、ぞ……」


 俺は上下の感覚がなくなりつつ体を叱咤する。

 シャウナとセリアに念話魔術(テレパシー)を送ると、リヴァイアサンの口をめがけて対消滅弾魔術(タスラム)を放った。

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