二日目夕方 どうも主人公です。収まっいたはずのネジは多少のざわめきを見せるものの吹っ飛びはしないでしょう
とりあえず、シルヴィアとともに詰所に戻ってきたが俺は今、いじけている。この世界で最も言われたくないことを言われたせいだ。
「なぁ、そろそろ機嫌直してくれよ。」
そんな、父性をくすぐる表情で言っても無駄だぞ。断じて可愛くなどないぞ、と言いたいがシルヴィアには体格的にも顔立ち的にもこの表情が抜群に似合う。あぁ、にやけそう。
「どうなされましたか?だいぶお疲れのように見えますが。」
あぁ、ついに来たこれでホモ発言さえしなければまともな男性だろう、きっと。いや、まともであってくれ。
「お気遣いどうも、大丈夫です……ってえええええええええ!!??」
振り返った先にはこれまでと別の方向で頭のネジの緩い奴がいた。黒光りする大胸筋、大きく隆起した力こぶ、これでもかと筋肉を詰め込んだ下半身、頭はモヒカン、どこからどう見ても変態なのにも関わらず爽やかな優男のような声の男だった。
「どうなさいました?急に大声を出すなどよほど精神が参ってしまっているのでしょうね。」
とりあえず突っ込みたい。その大胸筋に全力の裏拳をお見舞いしたい。でもきっと、この大男も先輩なのだ。あぁ、神様俺になんか恨みでもあるの!!??
「あー、すみませんだいぶ疲れてるようで爽やかめの声の幻聴が聞こえます。」
「いや、コイツの声だぞ。」
あぁ、シルヴィア先輩。俺の理想郷のはずななのに、まともじゃないこと言わないでくれ。
「初めまして、僕の名前ガルムと言います。あなたより少し、先輩になりますので困ったことがあればなんなりと仰ってくださいね。」
まともだ、まともなんだよ見た目以外。なんでだよ、ベストを尽くせよ。その見た目以外は全部まともなんだから。
「まぁ、コイツの見た目がおかしいのは今に始まったことじゃない。すぐなれるさ、それまでの辛抱だ。」
あぁ、シルヴィアさん。疲れちゃったんですね。そうなですね。俺ももう疲れそうです。
「それでは、まるで僕の見た目がまともではないみたいではありませんか。」
何を言ってるんだ、このゴリマッチョ。その喋り方や声と、その見た目はどう考えてもミスマッチだろ。
「そう言っているつもりだがな私は。」
そう言われて、優男の困ったように笑う筋肉。どう処理した物か……。
「あまり僕をいじめないでくださいよ。」
シルヴィアはやれやれという顔でこちらを見てくる。そんな顔されても助けられないよ。今この場で一番困っている奴誰かわかっているの。俺だよ、俺。
「えっと、まぁ、シルヴィアさんはきっと一日俺につきっきりだったわけですから、疲れてるでしょうし俺もだいぶ疲れているので失礼します。」
そう言って、二人で踵を返すとシルヴィアが無言の賞賛を送ってきた。
次の瞬間、俺にとって絶望の声が聞こえる。
「待ちたまえ!!。」
そっちの人が来てしまった。冷や汗が止まらない。
「走れるか?新入り……。」
今この瞬間に確信した。彼女は俺の戦友たり得ると。ゆえに、まっすぐ彼女の瞳を我が双眸にて捉えしっかりと一つうなづく。
無言で拍を数え、心音1つ数えてただ一つ目指すは詰所の鉄城門。二つ数えて、位置につけ。みっつ数えて、駆け抜ける。
それは疾風の、颯のごとく速やかに。鉄城門を突破してそれから気づいた。
「あ、鎧……。」
シルヴィアは笑ってくれた。
「明日でいいって、今日は帰ろ。私も、あいつは嫌いなんだよ。」
こうして、俺の貞操と、常識の危機に包まれた波乱の一日は終わった、といいなぁ。でも、家にはまだ頭のゆるい母親がいるのだ。そうだ、鍛冶場で時間を潰してから帰ろう。あそこが一番落ち着くから。
メインヒロイン次回から登場決定、そして明かされる国の真実。乞うご期待!!
訂正:メインヒロインは次々回から登場決定!あ、国の真実は次回明かされ始めます……。
読者の皆様申し訳ありません。書いてたら、その、下品なんですが楽しくなってしまって……。