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器用度チート。実は有能なんです。(Dexterity cheat Smith)  作者: イベリア
第三章 この章は色々と荒れ狂うでしょう
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十三日目朝 本日の決勝は荒れ模様となるでしょう。

 決勝を控え王都は朝から大変な活気を見せている。今も悪の大魔王は世界に呪いを振りまいているのにも関わらずのんきな話だ。魔王討伐選考試合、その会場周り、特に今日は多くの売店が並び、ダブ屋が横行し、警備の憲兵がせわしなく働いている。そして、さらにのんきなのが出場者達に紛れ込んでいたようである。フェンリルだ。その姿を見てまず2,3詰問したい場所がある。一つ、なぜ安全第一とかぶれたヘルメットをかぶっているのか。一つ、なぜ憲兵の鎧を着ているのか。最後にもう一つ、なぜフェンリルのサイズがあるのか。

「おぉアルゼノではないか。悪さはしておらんな?」

 ふざけているにも関わらず、威厳のあるときのフェンリルの物言いだ。

「してねーけど、なんで憲兵の真似事してるんだ?」

 興味本位で聞いてみた。

「憲兵の鎧の美しさに惚れて作ってくれと頼んだら引き受けてくれたのだ。そして、我が見張っておれば常人は悪さをしにくかろう。」

 それはそうだろう。機動力も戦闘能力も化物クラス、いや文字通り化物なのだ。コイツに仇なすのは危険だとバカでもわかる。

「おい、そこのお前!偽の観戦権を渡したな?我のわれの目の前で不貞を働くとは許せん!」

 バカ以下の命知らずが今現れた件については言及せずに置こう。

「ニセモノ?」

 助けられたらしい少女は、獣人族のおそらく奴隷として買われたものだろう。首にはめられた枷がそれを物語っている。同時にその身なりが奴隷としてではなく家族として扱われていることが分かる。とても綺麗に着飾っているのだ。概ね、何かしら人手不足に陥った貴族が何かの役目のために買ったのだろう、そして首輪はそもそも外せないように全て金属で作られているから外すことができなかったのだろう。

「あぁ、偽物だ。この時間ではもう観戦権は売り切れておる。」

 実際もう開始3分前だ、何やってるんだこの狼。

「残念、フェオ様の試合見てみたかったんだけどなぁ……。」

 落胆するのも無理はない。そのためにせっかく来たのだろう。どういう経緯かはかなり謎であるが。

「はっはっは、わが娘も人気になってきたものだ。どれ、一つとてもよく見える特等席が今ならただで手に入るぞ。」

 そう言って、俺をつまんで差し出すのはやめてほしい。つまり、いつもフェオのために確保されている俺の隣をこの少女に譲れという話だ。どうせフェオは出場中。俺としてもやぶさかではない。良しとしたいので……。

「この子は連れて行くから話せこんちくしょう!!」

 とりあえず叫ぶが、フェンリルは全く聞いてもいない。それどころかむしろ俺をそのまま背中に乗せ、もうひとりの少女まで背中に乗せてしまう。嫌な予感しかしない中、嫌な予感を裏付ける言葉が闘技場から聞こえてくる。

「雪狼の方角、街のお巡りさんフェンリル!!」

 なんだかえらく緩い二つ名になっているがそれどころじゃない今は一刻を争う一刻も早く降りなければおそらくこのクソ狼はこのまま会場に突っ込む気だ。

「うわあああぁぁああぁぁあ!」

 思ったときには恐ろしかった。あまりにとっさのできごとに思わず俺は悲鳴をあげてしまった。それに反して獣人の少女はとても楽しそうである。

「うわー、すっごい!闘技場の壁の上だー!」

 獣人ってこういうのになれているんですかね。

 この魔王討伐選考試合は決勝戦はバトル・ロワイアル形式で行われる。準決勝を勝ち抜いた四人で戦い、最初に倒れた一人が魔王討伐本隊から脱落、最後に残った一人が優勝となるわけだ。だが正直優勝にはあまり価値がない。討伐隊本隊に選ばれ魔王討伐を果たすと国から目がくらむような金額の賞金が出るのだ。実質最初の一人が倒れるまでが勝負だ。あとは気の抜けた試合になるだろう。怪我しない程度にやって、怪我しない程度に優勝者を決める。

「おォーっとフェンリル選手まさかの上から登場だ、おや?なにか担いでますねぇ。あれは一体何でしょう?アルゼノ様だああああああ、世界最強の技師アルゼノ様がフェンリル選手の上に乗っているぞー!これは予想外だ!予想外すぎる!フェンリル選手、いい感じに会場を沸かせてくれます!」

 ちなみに決勝戦にはやけにうるさい実況がつく。戦闘中ずっとしゃべり倒すと語っていたので俺はこの実況者を倒したいところだ。

「おっと、乗ってきたアルゼノ様を下ろすと何か喋っている。これはまさかのフェンリル選手のセコンドをアルゼノ様が努めるのでしょうか?これは強力!強力無比、まさに無双のセコンドだ!そしてそして、もうひとり何やら可愛い獣人っ娘とも話している。これは、フェンリル選手の愛人でしょうか。スクープが待ち遠しくてたまりません!!」

 ちげーよ、二つとも全くちげーよ。俺はセコンドでもないし、この少女は愛人でも何でもない。ついでに言うがスクープも来ないぞ、下手なことするとパパラッチがカルパッチョになりかねない。そんな勇者いないだろう。

「一体どういう関係なんですか!?まだあんな小さい子に何をしたのですか!!??」

 勇者いたよ。その勇気があるなら魔王討伐にでもいけよ。

「我はこの娘が我が愛娘を見たいと云うてな。故に連れて参った次第よ。そのような関係では一切ない。」

 良かったパパラッチのカルパッチョはできずに済んだ。とりあえず俺はさっさと退散しよう。「さて、選手も揃い、会場は試合開始を今か今かと待つ歓声で溢れかえっています。これ以上ギャラリーを待たすわけにも行きません。まもなくゴングです!!」

 あぁ、この実況聞いてて疲れるほどにテンションが高い。にしても、フェンリル、開始直前まで警備しているとは余りにものんきなやつである。

 そんなことを思ってると試合開始を告げる銅鑼の音が爆弾のごとく鳴り響く。正直とてもうるさい。なんたって会場全員が耳を塞ぐほどだ。そんなに鳴らさなくていいんじゃないかと小一時間ほど詰問したい。

上から来るぞ気をつけろ!!!

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