十日目午後 本日は蒸気が立ち上るパンクなネジがしっかり締まるでしょう
遅くなって申し訳ありません。本日の更新分は少し短めです
まずはアエラが実践を見たいと言うので絶賛シルヴィアと立ち会い中である。正直彼女はかなり強いので勢い余って殺してしまわないかが心配だ。
「私から仕掛けたほうがいいか?」
シルヴィアが訪ねてくる。正直先手を取られた方がやりやすいので提案に乗ることにした。
「よろしくお願いします。」
言うやいなやシルヴィアは中段から斬りかかってきた。もちろんなされるがままに斬られてやるわけにもいかずその一撃をうまくかわして、剣に鎚を叩きつける。しかし、自分で打っただけあって剣は砕けずに槌の衝撃を吸収してしまった。
ならばと、大きく空いた脇腹を剣で薙ぐ。しかし、これはさすがのシルヴィアであった。その一撃を大きく後ろにかわして見せたのだ。恐ろしいのは、同じ追撃をしても何度だろうと同じかわし方をしてみせるところだ。それこそ彼女の体力なら永遠に続けられる。そうなってしまえば先に体力が尽きるのはこっちだ。そう思って同じやり取りを二度したあとにブラフを混ぜた。
初撃はこれまでと同様の横薙ぎ、しかし、それには軸が乗っておらず本命は蹴りだ。薙ぎを見て飛び退こうとする軸足を蹴りですくい上げる腹積もりなのだ。これが思いのほかうまくいきシルヴィアの体勢を崩すことに成功した。崩れた体制では大きく脇が空きそのせいで武器の握りが弱くなる。柄に軽く鎚を当てれば武器を跳ね飛ばすことができるだろう。そうすれば好きな急所を狙える。
実行してみればいとも簡単に武装を解除してしまえたのだ。そして思わずそのまま剣を首筋に突き立ててしまいそうになった。しかしそれをアエラの投げた一本のナイフがそれを防いでくれた。
「すみません、シルヴィアさんが強くて本気になってしまいました。」
少し言い訳がましいが、本当にその通りなのだ、信じて欲しい。殺す気の一撃でないと勝負を決することができないと思ったのだ。
「流石に強いなアルゼノ。もう少しで殺されるところだった私も鍛錬が足りないな。」
シルヴィアは本当に気のいい人間だ。全部を自分でかぶって俺の罪悪感を軽減してくれる。
「それを止めるためにボクが居るんだから、大丈夫だよ。」
加えてアエラもいいやつと言えるだろう。誰ひとりとして俺を責めない。
「ありがとう。」
そう言いながら剣をしまった。
「さて、君は剣を破壊したかったんだね。じゃあ君の打った剣でも破壊してしまえる武器を作ろう。」
唐突にアエラが本題を切り出して急に取り出した紙に図面を書き始める。
「これは一体何なんだ?」
尋ねずにいられないほどそれは異質な作りで、剣であり、槌である。
「これは、魔導爆裂鎚だよ。必要なものはきっとここなら揃う。」
そう言って要求してきたのは火炎の小さな魔法石だった。魔法石というのはその寿終えた精霊が地中で凝縮されながら熟成したものが魔法となって結晶化したものだ。その生成過程は石油によく似ている。加えてそれをあつめて凝縮して衝撃を与えると爆発を起こす。この鎚はその爆発によって内包された刃を高速で打ち付けるものだ。
「なるほど、これならヘパイストス鋼の剣も打ち砕けそうだ。」
そうなり得るのだ。指定されている魔法石によって発動する爆発の威力は絶大。それで打ち出される刃は余りにも破壊的である。しかも筐体となる鎚の外装にはヘパイストス鋼を用いると書いてある。これは強度よりも炸裂の威力を増幅する作用のためなのだ。
「だけど、もう一本ある。今から設計を書くから見ていておくれ。」
そう言って書き始めた剣は余りにもいびつであった。
「これはどう使うんだ?」
そう聞きたくなるような代物だった余りにもおかしな湾曲だ。不規則極まりない。
「これはね、君なら扱えると思うボクの夢の剣なんだ。だって、これは剣線刃筋を通せばなんだって切れるよ。ただ扱うのに技術が必要だけど君ならきっと使える。」
大きく湾曲した剣の鋒は緩やかな弧を描き、扱えるものならその鋒でとてつもない摩擦と切断力をうむ設計だ。よく観察すればこれほど強力な剣はほかにない。
「よくわかった。これは俺のための剣なんだな。だけど、ここまでしてもらって礼をしないというわけにも行かないな。」
そう言うと、アエラは笑いながらもう一枚設計図を出す。
「魔王討伐が終わったらボクがこれの材料を持ってくるよ。そのとき安く作ってくれればそれでいい。」
そこに書いてあったのは恐ろしい武器だった。魔法石をとてつもない速度で打ち出す魔法の筒。彼女はそれを銃と呼称した。