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器用度チート。実は有能なんです。(Dexterity cheat Smith)  作者: イベリア
第三章 この章は色々と荒れ狂うでしょう
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八日目昼 本日はネジが比較的しっかりしまっているでしょう

 考えてみればフェンリルは自前の爪で戦うから剣はいらない。あまり大人数で一人を相手にすると帰って混乱が生じる。そのことから魔王を討伐しに行くなら五人だろう。フェオと俺。あとはフェンリルと未確定なのだがきっと勝ち上がってくるのはシルヴィアだと思う。聞いた話によると選考試合ではシルヴィアは圧倒的な走破距離で敵を翻弄して敵の体力が切れた頃にゆっくりと止めを刺すらしい。おそらくパーティを組んだ時には連携の要になるだろう。基本的に俺が魔王に張り付いて攻撃に対して対処し続ける。フェオは合間に飛び込んで魔王に三連撃を叩き込む。フェンリルはこちらの姿を隠しつつ魔王の大きな隙にあわせて大技を叩き込むシルヴィアはその走破能力を活かして常に魔王の背後をとる。となればあと一人は誰だろうか。大穴で安彦。来て欲しくはないが順当に行けばエストリアである可能性も捨てきれない。とはいえエストリアには最高の一本を渡してある。魔王討伐にもいささか程も問題はないだろう。

「ご主人様、何をそんなに考え込んでるのです?」

 フェオが少し心配そうにこちらを覗いてきた。

「あぁ、ごめん。魔王軍討伐隊に作る武器を考えてたんだよ。あと俺自身の武器も。」

 そう言いながら笑ってみせる。

「怖い顔になってましたよ。そんなに考え込み過ぎると何も思い浮かばないです。もっと気楽に考えましょう!」

 確かにそうなのかもしれないなと思っているとフェオが何やら取り出している。

「ご飯にしましょう?」

 それはサンドイッチや果物など様々な料理を詰め込んだ弁当だった。見た目にも鮮やかで中にはかなり凝ったものも入っている。

「お前料理なんてできたのか?」

 これまで奴隷だったのだ、できないのが普通である。

「エストリア様に教えてもらいました。」

 もう、エストリアはなんでもできるのではなかろうか。というよりいつの間にフェオに教えたのだろうか。

「王子ってすごく優秀なんだな。」

 間違いなくエストリアはモテる。顔立ちも整っていて、料理もできる、仕事もできる。女にモテる要素は間違いなく全部持っている。しかも王子ときたものだ。ただしエストリアが白馬にまたがると視界が真っ白になるのでそれは似合わないかもしれない。

「はい、ご主人様ほどではありませんがなんでもできる方です。」

 軽くこっちも持ち上げるのは別にいらないのだが。

「今度俺も料理習ってみようかな?」

 冗談を言ってみるとフェオがこれでもかと言わんばかりに焦った。

「ダメです!ご主人様が料理なんてなさったら私の立場が……。」

 なんだか悪くない。いや、むしろすごくいい。こういう感じが幸せなのではなかろうか。

「フェオ、そろそろ俺の腹の虫が限界を訴えてる。」

 目の前にこれだけの料理が並んでいるのだ、そろそろ我慢の限界だ。

「どうぞ、ご主人様あ~ん」

「いや、恋人同士っぽいとは思ってたけどちょっとやりすぎ。それだとバカップル。」

 食べさせようとしてくるフェオにちょっと驚きつつ遠慮をする。

「えへへ、冗談ですよ。」

 なんだろう、告白されてからフェオがすごくまともだ。それなりに冗談は言うもののそれはしっかり冗談で、振る舞いなんかもすごく女の子らしい。

「なぁ、フェオ。お前、ダイヤモンドがはまった銀の指輪と俺の手作りの鋼の指輪どっちがいい?」

 この時の気持ちは秘密だ、誰にも秘密だ。

「う~ん。ダイヤモンドも金も高価だけどありふれてます。私はご主人様の手作りの方が嬉しいです。」

 やっぱりこういう子だ、どうせだからダイアモンドと金の手作りの指輪を作ろうか。狼の名を冠するルピナスの花をあしらったフェオのためだけの指輪を。

「そっか。わかった。これから俺はフェオに隠し事をするかも知れない、許してくれるか?」

 フェオは首を縦に振った。

「隠し事のひとつやふたつどうしたってできるものです。」

 そういうものなのだろうか、そういうものなのだろうな。

「ありがとう。」

 ただそれだけ言って二人で食事を続ける。

 色とりどりの料理はどれも一様に美味しく、まとまらない考えを忘れさせてくれた。フェオの態度はとても暖かく優しく、日々の疲れを少し癒してくれた。シルヴィアや、安彦、魔王討伐に向けて何をしてやれるか。死んでしまうかもしれない戦場に国民を送り込んでくれたマロにどんな恩返しがいいだろうか。考えれば答えは一つだったじゃないか、しっかりと魔王を倒して戻ってくればマロはきっとわかってくれる。それにシルヴィアに渡せる剣はごく普通のものがきっといいのだ。いつも使ってる両刃の幅広の剣、ブロードソードがきっと一番いいのだ。なにせ、あの時から俺の渡した剣以外を使っているところを見たことがない。

「ありがとうフェオ、考えもまとまったよ。息抜きっていうのは必要だな。」

 そう言って笑いかけてみせるとフェオは嬉しそうに微笑んだ。

「お役に立てて何よりです。」

 そんな談笑をしながら食事を終えると俺は急いで図面を書いた。

「フェオ、シルヴィアの剣これでどうだろうか。。」

 そう言って差し出したのは攻撃する時の重量感を損なわないまま全体重さを少しでも抑える設計。刀身の先が少し重たくなっていて、中程が中空になる設計だ。

「すごくいいと思います。ただここを少し補強するとどうでしょう。」

 そう言って、指さしたのは中空になってる部分の真ん中辺り。

「なるほど、いいアイディアだ。これなら重量をそれほど上げずに強度を飛躍的に挙げられる。」

 フェオが言ったのはそこに棒を差し込むことだ。つまり支えだ。これによってカタラのような使い方もできるようになる。早速炉を起こし作業に取り掛かることにした。


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