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第2話 オタクのための予備校

〜2話登校前に1話を閲覧していた皆様へ〜

挨拶が遅れました。作者のだいちです。

前回の1話で、前書きを書き損ねたために、こちらの前書きに書くことにしました。

本作は、基本的に不定期での更新です。私がストレスフリーで、暇な時に私の赴くがままに書く作品です。(作品と呼ぶのはおこがましいですが)きっと、そんなに面白くありません。(笑)

定期的に読みたい ですとか、 面白くて仕方ない作品を読みたいという方にはオススメできません。

ただ、1話もしくは2話までを読んで、先を読んでみたいな なんて思われたのでしたら、これからも読んでくださるとありがたいと思います。

一応、面白くなるよう努力はするつもりです。


そして、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、2話から、神(第3者)視点で話しを書くことにしました。それに伴って、1話も改稿しています。

もし、不備があれば、知らせていただけるとありがたい限りです。




では、今後ともよろしくお願いします。


「え、えーっと。間違えてたらすいません。今『塾の講師をやらないか』って言ったんですよね…?」

「そうだ、そうだよ」

「はぁい?」

 深斗は驚いた。なにを考えているのだろうか。こんなしがないただの高校生に塾の講師をやらせようなんてーーと。

「いやいやいや、だって俺ただの高校生ですよ?!」

「別に構わないよ」

「また、潰れますよ?」

「潰れないように頑張ってくれたまえ」

「くれたまえ…って、まだやるとは言ってません」

「まぁ、そう言うなよ」

「そもそも、ですよ。なんで俺なんですか。雇えばいいじゃないですか、プロを」

「金がかかるじゃないか。君にバイト代を払ってやらせておいたほうが安上がりだ」

「そういういい加減なこと考えているから、何をやっても失敗するんですよ。大体俺はまだ高校生です。人に教えるどころか人に教えを請う立場なんですが」

「安心したまえよ、高校受験用の予備校だから。それに君は義務教育をきっちり卒業して、そうとう優秀な成績を収めたじゃないか。おかげで今や、国内有数の難関私立高校の7人の特待生の1人というわけだ」

「いや、そういうことじゃなく…」

「安心して。バイトをしちゃいけないことになってるのは知ってる。そこはちゃんと俺の方から話を通しておくからさぁ」

「俺忙しいんですけど。学生なりに忙しいんですけど」

「忙しいのはわかったうえで君に頼んでいる。君を指名しているのには、金銭的な面以外にも理由があるからね」

「…その理由って?」

「そうだねぇ。じゃあ順を追って話そうか」

「…はい」

 深斗がその理由がとやらに耳を傾けようとしていると、寛二が追加注文したチーズケーキがウエイトレスによって運ばれてきた。

 水を差されたような気分になった深斗が、テーブルのうえに置かれたチーズケーキを特に何の意味もなく眺めていると、寛二はメニューを俺に差し出して目配せをした。

「俺はもう注文はいいですから、早く理由を話してください」

「そう?じゃあ、話そうか」

 チーズケーキを頬張った寛二は、逆さに立てたフォークを指先で摘んだまま回転させて不敵な笑いを浮かべた。

「そもそも…だ。このご時世に、今更しがない予備校なんか開いて、人が来ると思うか?」

「以前に…『たとえ、無名で新進気鋭の地域密着型小規模学習塾だとしても、お試し講座のようなものを用意し、そこである程度の質のものを提示さえできれば、生徒のキャッチは成功する』というような話を聞いたことはありますが…。あなたが失敗の神様に憑き纏われている時点でなにをやっても失敗するんじゃないですかね」

「真面目に答えてくれたまえよ」

「至って大真面目ですよ」

 深斗の容赦ない一突きに、寛二はフォークを握る右手の動きをパタリと止めた。

 ピクリと動く寛二の眉を淡々と見つめている深斗が、「話を続けてください」と疲れた声で言うと、寛二は話を再開した。

「あ…あぁ。それでだ。俺はこう考えた。『ただの予備校なんて、今更流行らないんじゃないか』と」

「…あ、はぁ」

「じゃあ、一体どんな予備校にしたと思う?」

「あーもう。前フリ長いですねー。サラッと言ってくださいよ」

「…うむ。じゃ、じゃあ発表しよう!それはズバリ…『オタクのための予備校』だ!」

「…?どういうことですか」

「…君もオタクの端くれなら、わかるだろう?!オタクってのは、いかに時間があっても足りなくて足りなくて困っているんだということが」

「あぁー。まぁ、わからなくもありませんが」

「君のような”ニワカ”ならまだマシな方ってもんだ」

「いつもニワカ・ニワカって言ってきますけど、サブカルチャーとの付き合いはもうかなり長いですよ?」

「いいかい?本気のオタクってのはね、寝る間も惜しんで深夜アニメの視聴に没頭し、ネトゲの世界に埋没、読む本といえばラノベとマンガ、音楽プレーヤーからはアニソンとボカロの怒涛の応酬、極め付けは部屋に縦横無尽に整列させられたフィギュアと二次元ポスター!!君のように、本は純文学からエンタメ小説・古典文学まで幅広く精読し、音楽は邦楽・洋楽問わず売れ筋からマイナーどころまで多彩なジャンルを逃さず聴き込み、部屋の中はシンプルかつスタイリッシュ・整理整頓が行き届いており、極め付けに言えば、寝る間も惜しんでするのはアニメやゲームではなく勉強…なんていう何拍子も揃ってるやつはレアなんだよ。しかもコミュ力高くて、運動もそこそこ出来るし…」

「そりゃ、偏見なんじゃないですか?それに俺はれっきとしたオタクです!…って、こんなこと言わせないでくださいよ」

「いや、君はまだまだだ!」

「はいはいわかりましたから。そういう前提にしておきますから、早く続きを話してくださいよ」

 夕方に見る予定だったはずの番組を録画し忘れていたことに気づいた深斗は、もう適当に話を受け流して早く帰ろうと考えていた。

「しかし、よく考えてみたまえ。彼らの”好きな物”に対する愚直なまでの探究心・情熱を」

「あ、はぁ…」

「彼らは、勉強に興味が持てないだけなのだ。勉学に面白みを感じない。学ぶことの価値を実感できずにいる。だから情熱を注ぐことなどない」

「まぁ、ある意味それはオタク以外にも当てはまることじゃないですかね」

「し・か・し・だ!彼らはケタ違いだろう?!最初から全てを放り出して、努力するということをしない!」

「まぁ全員ではありませんが、そういう人も居ますね。」

「本来、高校受験というのは背水の陣で臨むべきものだ。一校も受からなければ、いく高校がない」

「小学時や中学時から高校・大学の付属に入っていれば、校内での成績を極端に下げない限り大丈夫なんですけどね」

「高校受験組に属するオタクは、そんな背水の陣に真摯に立ち向かうことをしない!勉強に熱意を注ぐことなく受験に失敗し、結果進学は底辺高校・下手すればそのままニート街道まっしぐらだ」

「まぁ、その『オタクは全員バカばっかのどうしようもない』みたいな偏見タップリな言い方なんとかした方がいいですよ。現に、重度のオタクである貴方は現役で東京大学に合格し、無事に4年間の課程を修了して卒業まで成し遂げました。まぁ、その後は悲惨ですが」

「とにかくだな。オタクが大好きなアニメやゲームに費やす時間というのを少しでも還元すれば、一体どれだけの人間的成長が臨めるかということをオタク達はもっと自覚するべきなんだ!『自分は行きたくないが、親に言われて仕方なく予備校に通っている』なんていうオタク受験生もいることだろう。だがしかしそんな奴にこそ言いたい!どうせ予備校に通わなければならないなら、少しでも頑張ってみないかと!」

「はいはい。熱意溢れる教育論の弁舌ご苦労様です」

「そんなわけで、俺がこの度開く予備校というのはだ。『オタクが楽しんで授業を受けられる塾』だ!興味を持てる内容を少しでも盛り込み、うまく熱意さえ引き出せれば、彼らにも明るい未来が見えるんじゃなかろうか、とそういうわけだ!」

「で、なんで俺が講師になるんですか結局」

「君は、詳しいだろう?オタク知識豊富だろう?」

「さっき、にわか呼ばわりしましたよね?」

「熱意はにわかでも、知識量は中々だ」

「お断りします、ごちそうさまでした」

 深斗ははっきりとした口調で言いながら、机の上に置かれていた伝票の挟んであるミニバインダーを寛二の膝に投げつけて、立ち去ろうとした。

「待ってくれ、深斗くん!頼むよ!頼むから!」

 大きな声で深斗を呼び止めながら、床に膝をつき土下座を始めた寛二を見て深斗は驚き、側へ駆け寄った。

「ちょ、ちょっとやめてくださいよ。皆見てますから!」

「いや、君が『うん』と言うまでは辞めん!頼むよ!深斗くん、この通りだ!」

「わかりました、わかりましたから!『うん』とは言いませんが、とりあえず帰りませんから!」

「…そうか。わかった」

 何事もなかったかのように席につく寛二を疲れた表情で見つめた深斗は、自分も席に戻り、コップに残っていた水を啜った。

「頼むよ、深斗くん。バイト代はハズむから!これで『殺人鬼のハーレム日記』や『聖剣士武勇伝』のblu-rayBOXも買えるぞ?」

「…それで釣るのはズルいですよ」

「どうする、やってくれるか?」

「開校はいつなんですか?」

「来週の水曜日だから、ちょうど一週間後だね」

「肝心の生徒は集まっているんですか?」

「新中3が36人。新中2が28人で、新中1が16人だ。合計でぴったり80人」

「なんか、学年が下がるごとに人数減っていってるのが気になりますね。来年は新中1の人数1桁台になり〜の、再来年は0人で、最後には潰れるコースじゃないですかね」

「うっわ、すごいやなこと言うね」

「いやいや、こんな怪しさ満点のところにこれだけ生徒が集まっただけでも奇跡ですから!てか、中3で集まった奴らって、親に匙を投げれてヤケで入れられたんじゃないですか?」

「なんで、そうなるんだ!!」

「これから受験生にとって大切だっていうこのクソ忙しい時期にわざわざここ来るんですよ?!」

「そこは、ほら。ちょっとカラクリがあってね」

「なんです、それ」

「まぁ、すぐにわかるよ。大したカラクリじゃないし。まぁ、うちに来る気があるならだけど」

「まぁ、そんなことより少し気になっているんですが」

「なにかね」

「講師が不足しているとのことですが、どれくらい集まったんですか。俺一人入るんじゃ結局意味ないでしょ」

「今の所だとね。君を抜いて3人だ」

「意外に集まったもんですね」

「その人たちも、そっち方面に詳しいんですか?」

「まぁ差はあるし、全員俺ほどじゃないけど、詳しいね」

「あんたと比べるなよ」

「まぁ、なんでもいいじゃないか!とりあえずだ。明日、講師陣を招いてミーティングをやることになってるから、来てみてくれたまえ」

 深斗は、腕時計を見た。

 ーーあ〜もう、完璧に番組間に合わないじゃんーー

 いい加減、面倒くさくなっていた深斗は思わず反射的に「はいはい」と答えていた。

「わかりました、ミーティングですね。明日ですね。行きます行きます。で、その上でやるかどうか決めますから。それじゃあ俺はもうここで失礼しますよ。ごちそうさまで〜した〜」


深斗は右手を振りながら、振り向かずに店を出た。


ーーもちろん、伝票は机に置いたまま。

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