表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
98/258

事情を話そう


私がトイレに行ってから生徒会室に戻ると、生徒会一年のメンバーとそれから未羽が待っていた。ただし、未羽はほとんど夏の炎天下のゼリーのように溶けている。もう下校時間はとっくの昔に過ぎているのでここに入ってきても大丈夫だったようだ。というかみんなが入れたんだろう。

「あ、未羽。試験終わったんだね。時間かかってたねー。」

「う…もう…数字も漢字も見たくない…。」

「あ、未羽、じゃないよ、ゆき。これはどういうこと?」

粉砕された上に粉だらけのケータイを机の上に置く秋斗。

「いや、まぁ、そりゃあ色々ありますよ。」

私が頰をぽりぽりかいてごまかそうとしても、みんなは追及の手を緩めない。

「雪さん、今日何があったか正直に話して?」

いつもは穏やかな俊くんまで顔が怖いので仕方なく自白する。

すると、話を聞き終わったこめちゃんが怒り出す。

「雪ちゃん!なんで言ってくれなかったの?!こういう嫌がらせ、いつから受けてたのっ?!」

「んー…嫌がらせって意味だったら入学式の時からずっとだけど。でも、小学生の時からあったし、慣れてるからなぁ。」

「そういう問題じゃない。その上級生の特定はまたあとでやるとして。横田、君は知ってたのか?」

生徒会の机で脱力していた未羽が、ちょっとだけ顔を上げて、んー。と答える。

「未羽ちゃん!なんで俺に教えてくれなかったの?」

「秋斗くんに言ったら過保護になるだけでしょー?これは雪の問題だよ。」

「でも俺や上林が原因なんでしょ?!」

「そうだとしてもだよ。それ覚悟で雪だって二人といるんでしょ?」

二人の傍にいたい。それが素直な気持ちだ。

そのためなら不可避に伴うこんな嫌がらせくらい別に我慢できる。

「そうだよ。分かってたこと。それに今日みたいに直接的なのは初めてで、今までは大したことなかったし。」

「相田、前も傘折られてただろ?それも大したことないのか?」

「怪我とか、周りの人が危害加えられるなら全力で排除するけど、そうでないんだったら仕方ない。」

私の返事に冬馬くんが苛立ったようにため息をつく。

「秋斗くん、雪さんは昔からこうなの?」

「…うん。俺がなるべく見張ってたけど、女の子の陰湿な嫌がらせ全てにまでは目が届かなくて。」

「へーきだって。嫉妬なんて慣れてる。悔しければ同じくらい勉強も運動も出来るようになってみろっての!」

「…雪ちゃん、口悪くなってるよ…。」

「雪、多分原因はそっちじゃないでしょ…。」

「分かってる。」

けれど私の素因が余計周りを苛立たせていることは間違いない。

「とにかく、今回のことは、会長にあげとく。増井の話だと5時からいなかったんだろ?てことは2時間くらい閉じ込められてたんだ。立派な犯罪だからな。言わないわけにはいかない。」

実害はトイレくらいだったけどな…。

「分かった、会長に言うことは止めないよ。でも今後これ以上のことは起こらないと思う。」

「なんで?」

それはイベントだから、だ。未羽だけが分かっていて静かに聞いている。

「起こさないように私が最善の注意を払う。」

「…相田は今後なるべく一人で見回りとかするなよ。呼び止められても誰かと行って。」

「分かった分かった。」


なんとかその場はそれで収まり、私はようやく解放された。

それにしても、あの字…どこかで見たことある気がする。しかし字なんていっぱい見ているしさすがに特定まではできない。

気になるメモは手帳にしまい込んでおいた。



未羽と秋斗と三人で帰っていたが、未羽と別れてからは秋斗と二人きりだ。秋斗はちょっと怒っていて、いつもだったら楽そうに話しかけてくれるのに今日はだんまり。

「秋斗…?」

恐る恐る話しかけると秋斗はぶっすーと口を尖らせて不機嫌そうにこっちを見る。

「…ゆき、やっぱり俺には相談してくれてもよかったんじゃない?昔からなんだから俺に隠す必要ないじゃん。」

「相談しても仕方ないもん。これは私の問題だから、言わなかっただけ。」

「もう!ゆきは強情だよね!」

「秋斗は私のそういう性格だって分かってるでしょ?」

「そうだけど!もうこれだから!…ケータイ。」

「ん?」

「壊れたこと、雪のお母さんに言わなきゃいけないでしょ?」

そうだよ!実害あったじゃん!ケータイ壊したことお母さんに言わなきゃいけないんだった!きっと鬼のように怒るんだろうな…。うわぁ、帰るのが億劫だ!

「雪のお母さん怒るだろうね。」

「間違いないよー…。忘れてた。」

「俺も一緒に事情を説明するから。明日の放課後、一緒にケータイ買いに行こう?」

そう言って私の手をぐいぐい引っ張って家まで歩いていく。

私の手を取る秋斗の手も前を歩く背中も、小学生の時よりずっと大きい。

けれど、怒っているときにこっちを見ないでちょっと早歩きになるのは昔から変わらないね。

「…ごめんね、秋斗。ありがと。」

私が少し小走りして隣に寄り添ってにこっと笑いかけると、秋斗はようやく溜飲を下げてくれたのか、険しかった表情を少しだけ緩めてくれた。



評価等ありがとうございます。少し短めですが、キリがいいのでそのままにしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ