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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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一年合宿の奈良で抹茶パフェを食べよう(2日目)

2日目。

今日はまず、昨日訪れた奈良の大仏様よりも駅から見て更に奥にある大社に向かう。ちょうど改装補修工事が終わった直後らしく、かなりの人でごった返していた。

「うーん。すごい人だねぇ!」

「紅葉シーズンにはちょっと早いのにね。」

「修学旅行のシーズンだからじゃありませんこと?」

砂利道を歩いてお参り。

「あ、恋結びのお守りだよ!」

明美が京子の手を引いて楽しそうにお守りを売っている…じゃない、授けてくれる巫女さんのところへ走る。

「こめちゃん、納めていったら?会長の分も。ここの、ご利益あるって聞いたよ?」

私の言葉にこめちゃんが、「本当〜?!」と嬉しそうに明美たちの後を追う。

「恋する乙女は可愛いなぁ。」

「雪、あんたそれ、おっさん。」

「未羽、あんたにだけは言われたくないわ。」

「ゆきは?縁結びのやつとか買わないの?」

「買わない。」

言われてコンマ1秒置かずに返事をする。

「…相田、もうちょっと悩んだら?」

これ以上縁を結んでどうする!

「こっちがやりたいから。」

「なになに?…『厄除けの破魔の矢。お炊き上げ用』…。」

「ゆき…俺は厄なの…?」

「いやそうじゃなくて。これ以上の厄を呼び寄せたくないから。雹くんので懲りた。」

雹くん、の呼び名に秋斗と冬馬くんがちょっと嫌そうな顔をする。

「仕方ないでしょー?約束は約束だもん。」

「雪って、そういうとこは義理堅いわね。」

そういうとこだけじゃなくて、私は義理堅いです!



それから遅めのお昼ご飯で蕎麦を食べ、そこから自由時間となる。

まずは…

「抹茶パフェ!!!」

「ええええ、今ご飯食べたよ?こめちゃん!」

「でも、この後鹿さん触っちゃうし、それにお昼がお蕎麦だったから大したことなかったし…。」

「そうですわね。おやつの時間の方が混みそうですし、先にいただきましょうか?」

「やったぁ!!」

こめちゃんが跳び上がって車道に飛び出していき、それを俊くんが必死で追う。

俊くん、きっとこの一年合宿でかなり体力つくだろうなぁ。

こめちゃんはお店に目星をつけていたらしい。並ぶお店の中から一軒を指さしてこっちを向く。

「ここ!ここが一押しだって。ネットで調べてベストだったんだよぉ!」

「こめちゃん、調べてたの?」

「うんっ!編入から帰ってきてから、合宿のための食べ物系統はバッチリチェック済みだよー!」

流石だこめちゃん。

店内に入ると、まだ2時くらいだからか結構空いていた。

「い、いらっしゃいませ!」

私たち、正確には秋斗と冬馬くんを見た若い女の店員さんがぽっと頰を赤らめる。地元ではもう見慣れた光景だけど、関西(こっち)でも攻略対象者様のパッシブモードの魅了攻撃は健在らしい。

「9名です。」

「はいっ!ただいまご用意いたします!」

席に案内され、メニュー表を見比べる。こめちゃんは当然「抹茶と大納言のはんなり和風パフェ」の一番大きいサイズ一択だ。他のみんなも選んでいる。

私は…

「うーむ。」

「ゆきがそんなに悩むの珍しいね?大抵は『迷ったら直感と気分で!』って言ってさっさと選ぶのに。」

隣の席の秋斗が不思議そうにしている。

それは欲しいモノがいくつかあるときの話。今はいくつかの選択肢から迷っているわけじゃないから困っている。

メニューに載っている美味しそうなデザートはすべて、小豆が「かかってこいよ!!俺を越えられなけりゃお前の好きな抹茶デザートは食べられないぜ☆」と言わんばかり。なんでどのメニューにも小豆がたっぷり入っているのさ!そりゃ、和風デザートだから想像ついてたけどね!

抹茶は大好き、バニラも好き。白玉も生クリームもオールオッケー。だからパフェが食べたい。けれど小豆という難敵が立ち塞がっている。

「お腹いっぱいなの?」

向かいの席の未羽が尋ねてくる。

「そうじゃないんだけどね…。」

私は少食じゃない。女子が食べる普通量は美味しく食べられる。ここは量の問題ではないのだ。

未羽とのシェアを頼もうかとも思ったが、彼女も甘いものは結構好き。こっちでのパフェを楽しみにしていたからそれを邪魔するのは悪い。

となれば一人で抹茶パフェの小豆と戦うか、それともお団子などの無難なものに行くか。この究極の選択になるわけだ。

鼻をつまんで小豆を食べてこの後胸やけするくらいならお団子がいい。

だがせっかく奈良に来たのに抹茶系のお菓子を食べないというのも…!

逡巡する私を見て、秋斗が神の手を差し伸べてくれた。

「ゆき、どれ食べたいの?俺と半分こしよ?」

「秋斗~!この抹茶パフェがいい!」




注文したパフェが運ばれてきて、嬉々としてパフェ専用の長いスプーンを入れる。

「んー!美味しい!」

向こうではこめちゃんがデラックスな大きさを順調に食べ進め、更に大納言ソフトまで追加注文しようとしている。他の女性陣もいわゆる「甘いものは別腹!」というやつで、パクパク食べている。

俊くんはその様子をにこにこ見ながらあんみつを食べており、遊くんはみたらし団子の落ちてくるたれと格闘していた。冬馬くんは甘いものがそれほど得意でないのかコーヒーを飲んでいた。

にっこにこでバニラアイスの甘さに酔っているときに遂に言われてしまった。

「ゆき、小豆が嫌なの?」

目ざとい!!ばれていたか!さりげなく小豆を避けていたのを。

「う。最近ちょっと苦手で。」

「えー?前は普通に食べてたよね?」

「う、うん。ほら!大人になると味覚って変わるっていうじゃない?小さい子がピーマンやゴーヤが苦手だったのに大丈夫になったり!ね?それそれ!」

「…ふーん。分かった。小豆、俺が食べてあげる。」

「本当?!」

やったね!これで敵を撃退できるぞ!さっきから図々しくもアイスに乗ってこようとしていたのを一生懸命落としていたんだ!

「ん。」

「え?」

ちょっと口を開けて待っている秋斗。

雛鳥か!

固まっていつまでも動かない私に気づき、秋斗が高校生男子とは思えないくらい愛らしく小首を傾げる。

「どうしたの?ゆき、ちょーだい?」

ぐはっ。という声がして、向かいで未羽がぶっ倒れている。

未羽、今、重力に任せてかなりいい勢いでおでこをテーブルに打ち付けてたけど出血してない?大丈夫?

「誕生日のときは色んな理由でできなかったし、ね?」

前は躊躇なくあげられた。なのに今は…くっ。これが「間接キス」と「あーん」になることぐらい分かっているから余計動けない。

私たちの様子を沈没した未羽の隣で冷めた目で見ていた冬馬くんが砂糖をかき混ぜるスプーンを持って声をかけてきた。

「新田、そんなに自分の手を使うのが嫌なら俺がやってやろうか?躊躇なく押し込んでやるけど?」

「なっんでお前とあーんとかしなきゃいけねーんだよ!…はっ。上林お前そういう趣味もあったの?悪いけど俺は桜井先輩と違って」

「んなわけないだろ。勘違いすんな。比較の問題だ。」

周りのお客さんが二人のやり取りに「きゃああああ!いい!美少年同士のあーんっ!!いい!」とか騒いでいるのが聞こえる。

「あーもう!わ、分かったよ。ほら、秋斗。口!」

そう言うと、秋斗は不満そうに唇を尖らせる。

「ゆきぃ、そういう時はちゃんと、あーんって言うもんだよ?」

ぐぬぬぬぬぬ。

「あ、秋斗。あ、あーん?」

にっくき小豆たちが大量に乗ったスプーンが秋斗の口にぱくっと飲み込まれて消える。

「ん。美味しい!」

満足そうにぺろっと舌を出した秋斗の天使のスマイルに周りのお客さんから更なる悲鳴が上がる。

なんで、デザートを食べてるのにこんなに疲労しているんだろう?



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