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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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議題を決めよう

 初回の部活は新入生歓迎会となり、お開きとなって秋斗と二人で帰宅中。


「楽しかったねー」

「ぶっ飛んだ先生だった」

「先輩たち優しいし、俺、入ってよかったと思うよ!ゆきとも帰れるし!」


 あはははは。それは避けたかったんだけどな。


「あと和菓子もすっげーうまかったね!そういえばゆき、あんまり食べてなかったけど」


 実はあんこが苦手なのだ。あんこ粒が。ただこれは現世ではなくて前世の名残。前世を思い出してからあのツブツブな食感がいきなりダメになってしまった。もともと平気だったはずなのに。

 なんで前世で粒あんが苦手なのに茶道をやっていたかって?突っ込まない!

 急に言葉につまる私に秋斗が心配そうに訊いてくる。


「ゆき、最近体調大丈夫?」

「平気だよ。忙しい方が楽しいっていうのもあるしね。秋斗は?友達とか出来てる?」

「そりゃ、もう!ほら」


 ケータイにはたくさんのライン友達繋がりが。さすが人懐っこい秋斗らしい。


「俺はゆきの方が心配。ゆき、友達出来た?」


 未羽との関係は秋斗たちにはばれないようにしている。元サポートキャラと元悪役が一緒にいたら、もし他にここがゲームを元にした世界であることに気づいた転生者がいた時に面倒だからだ。そうすると……攻略対象者たちに絡まれ女子に疎まれていた私には友達はいない。俊くんくらいかな?

 沈黙する私の腕を秋斗が掴んだ。


「ゆきには俺がいるからね。俺は何人友達が出来ようとも、ゆきが一番大切」

「秋斗……」


『新田くんのスチル来たー( *´艸`)!!』

 あんたどこから見てんだ?!


 自宅でラインのやり取りが始まる。


『あんたどこから見てんのよ?!』

『この未羽さまを甘く見ないでくれる?』


 そういう問題じゃない気がする。だが怖くて聞けない。監視カメラとか仕掛けられてるんじゃないかとか考えたら寝られなくなるわ。


『なんで未羽が茶道部なの?』

『そりゃ、新田くんの和服を近くで見るためよ。文化祭の時は着物なんだよ、茶道部!』


 生粋の乙女ゲーム馬鹿がここにいる。


『あと、愛ちゃん先生の和菓子のため!』


 愛ちゃん先生とは伊勢屋先生のこと。本人が愛ちゃんって呼んで♡って言ったからこうなった。


『愛ちゃん先生は老舗和菓子屋の長男でゲーム内でもそのお菓子は絶品ってなってたから。想像以上だったわ♡ゲームだと、文化祭限定でしか見られないし、スチルですら超美味しそうだったもん!持ってきてくれる新田くん含めて美味しそうだったわーそれと……』


 ここまで見てそこからは見るのをやめた。

 しかし、まさか秋斗がゲーム設定でも茶道部だったとは。ゲーム補正が働いて私の思考まで操られてるのかな。ゲーム怖すぎ。今度からは予め未羽に訊くようにしよう。



 翌日は何事もなく平凡に過ぎてあっという間に放課後に。

 上林くんが急に部活の用事で呼ばれたので1時間ほど待っていることになった。秋斗はといえば、他のクラスメイトに誘われてカラオケに行くらしく運ばれていったので、今日は秋斗は不在だ。


「ごめん、遅くなった」

「大丈夫だよ。部活、何だっけ?」

「弓道部。なんでか入部希望者殺到で、選抜があったからさ」


 うわぁ、似合いそう。袴姿とか萌えるんだろうね、未羽がいたらそう言いそうだ。それと、やっぱり入部希望者殺到したんだ。さすが攻略対象者様。


「相田は?部活、入った?」

「茶道部だよ」

「へぇ、似合いそう」


 そら、愛ちゃん先生に心覗かれるまでもなく合格出されるような和の美らしいんで。


「どーも。じゃ、やろっか。体育祭実行委員決めるのだけど、これは立候補募って多数決とかでパパッと決めればいいよね。他の議題とかは?」

「あとは、体育祭の競技決めかな。でもこれは紙貼り出して、やりたいとこ埋めてもらえばいいしな。それ以外に俺は特にないけど」

「席替えは?中間も終わったし。景色変えたい人もいるんじゃない?」


 主に私がね。

 一刻も早くこの席から離れなければ、上林ファンからの嫉妬の嵐が!


「確かにずっと番号順なのもな。今から俺らでクジ作る?」

「オッケー」


 それからは黙々とクジを作る私たち。

 紙に数字を書いて切るだけの単純なお仕事です。


「そういえばさ、相田ってあんまり人と話さないよな。一人が好きなの?」


 話さないんじゃなくて、話せないんです!誰かさん方のせいで。


「いや、元からのコミュ力不足で。友達できないんだよね」

「新田とは仲良いけど、友達じゃないの?」

「あー秋斗は幼馴染だからね、新しい友達とかじゃないなぁ。新しい友達欲しいんだけど」


 苦笑すると上林くんが手を止めてこっちを見る。


「俺は?」

「え?」

「俺とも友達じゃない?」


 断固違います、そして出来ればあなた以外がいいです!あれか、友達いない人に同情しちゃうタイプか?正統派紳士だもんな!


「なんだかんだ上林くんともそんなに話してないじゃん」

「今までは友達じゃなかったってことか。じゃあこれからは友達な」


 うん、待って?どうしてこうなる?友達宣言されて断るのは難しいぞ!


「あー、ありがとう……」

「席も隣だし、もうちょっと話してくれるかと思ったけど。全然話してくれないし、妙に避けられてるし、嫌われてんのかと思った」


 上林くん個人は嫌いじゃない。むしろ常識的な色の目や髪といい、容姿といい、性格といい、前世ではどストライクなタイプですよ。だからこそあんまり関わりたくないっていうのもある。


「いや、そういうわけじゃないんだけど。いろいろ噂も立ってたからね」


 最近は東堂先輩とは会ってないし、他の3人も避けまくったから女子からの嫌がらせはほとんどなくなった。


「なんかされてた?」

「言うほどのことはされてないよ。ご心配どうも!クジは作り終わったよ」


 そう言って上林くんにクジを渡す。

 折角友達になったのに席離れちゃうねーへっへ。どうだ、これが狙いじゃ。


「あれ、60枚ある?」

「クラス、60人でしょ?」

「クジは58枚でいいんだよ。俺らクラス委員は席固定だから」


 なんだって―――――?!



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