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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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天夢編入で俊くんとタッグを組もう (4日目)

そこでちょうどお母さんが部屋に入ってきた。

「未羽ちゃん、ご飯食べていく?」

「え、いいんですか?」

「今日お父さんご飯要らないのに、多めに作っちゃったの。サバの塩焼きでよければ、ここに運ぶわ?」

「ありがとうございます!!」

お母さんが夕飯を運んでくれ、一緒に夕飯を取ることになる。それにしてもお母さんの前での未羽の猫かぶり具合はすごい。いなくなった瞬間に胡坐かいたぞ、この子。

「雪のお母さん、素敵。神。惚れる。」

「ご飯くらいで何を。それで、さっきの話は?」

未羽はサバをほおばり、それから話し始める。

「まぁ、ゲーム設定だからさ、気軽に聞いてよ。…空石雨と空石雹は同じ母親から生まれた双子。二人はとっても仲が良かった。でも、二人の母親は空石雹だけを可愛がった。代わりに空石雨はほぼ育児放棄された。」

「なんで?」

「空石雹が父親とそっくりらしいわよ?ちなみに父親は浮気して出て行っちゃってるんだけどね。大好きだった夫の身代わりとしてべた可愛がりしたってこと。」

普通は恨みに思って逆になるんじゃないのか?女性は浮気した男性じゃなくてその相手を恨むってよく聞くからそうでもないのかな。

「双子なら雨も似てるんじゃないの?」

「顔立ちはそっくりだけど、目と髪の色、あと目つきが違うわよ。…それでね、雨の方が、中学2年くらいから家に帰らず『そういうこと』をするようになった。勉強はね、きっちりしてたみたいだし、タバコ麻薬とか(ほうきんぶつ)はやってなかったらしいけど、とにかくそっちの素行は悪かったらしい。愛情に飢えてたんだろうね。で、手当たり次第な男になっちゃったわけ。それを知った母親はますます雨から遠ざかる。雹はなんとかそれを止めようとしたんだけど、うまくいかない。それが続いて、二人が中3の時に、雹が学校から家に帰ったら、二人の部屋に何人もの女がいて、まさにそういう最中だった。」

うわぁ。ヘビィすぎ。

「可哀想なことに二人はすごく仲が良くて、母親の愛情が偏ってもそれは変わらなかった。むしろ雹はずっと母親の暴力やネグレクトから雨を庇ってたんだ。それで、雨が、その場に帰ってきた雹に、自分と同じように堕ちてほしいって言ったんだ。雹はそれを飲んで雨の要求に従った。…それ以来、雹は女って生き物が苦手で、気持ち悪くてたまらなくなったらしい。」

「…それは同情するわ。私でも気持ち悪い。」

ご飯を食べる手が止まるレベルだ。

未羽は気にせずパクパク食べながら話しているが。

「というか、年齢制限ないゲームでその設定絶対ダメでしょ!」

「ん。だからこれ、配信版で明らかにされた二人の過去なんだよ。制限なしの配信版じゃないゲームの方では二人は単に一方が女好き、一方が女嫌いってだけで、過去がわからなかったんだけど、配信版で明らかにされたわけ。…今、この世界は配信版じゃないから、この話は本当じゃないかもしれない。だから話半分で聞いてほしいのさ。」

「…それ聞いても、もう勝負には手、抜かないよ?君恋高校の名誉がかかってるし…それに、真剣勝負で手を抜くことは相手への侮辱だよ。それはしたくない。」

「あんたらしいわね。ま、いいんじゃない?それで。でもあんたも気になってたでしょ?なんであの空石雹があれほどまでに女嫌いか。」

「…まぁね。」

「知っておいても損はないし、情報は武器になる。最悪、負けたらそれ使って逃げな。」

脅せってことなんだろう。

未羽はやり方はともかく、私の身を案じてくれている。

確かに負けた時に何をさせられることやら分からないから不安はある。でも。

「流石に、それはしないわ。堂々と戦って勝ってやる。」

「そういうあんたが好きよ、私。…ご飯も食べたし、帰るわ。明日からも頑張って?こっちも事情が事情で無線とか出られないかもしれないけど。」

「オッケー。大丈夫よ。こっちは健全な勝負だし、前世チートで負けないわ。」




次の日。

1限から勝負は始まる。1限は英語のリーディングで、これは私の勝ち。俊くんとハイタッチする。

2限は物理。苦手分野で私は全然太刀打ち出来ず、俊くんが惜しくも敗れる。

「ごめん、雪さん。」

「大丈夫!仕方ない、次いこ、次!」

3限は、音楽だった。

まずは…

「ピアノ、だと…?!」

空石雹は流暢に弾きこなした。さすが天夢の冬馬くん(オールマイティー系)だ。アマチュアではコンクール出られるんじゃないかってレベル。

「俺がこんなもん出来ないとでも思ったか?で、そっちは?女がやんのか?」

一気に背中に冷や汗が流れる。

私は歌はもちろん、ピアノもダメだ。音符がおたまじゃくしにしか見えない。弾けるのは打楽器くらいだ。

「僕、やるよ。」

「俊くん?」

俊くんはすっとグランドピアノの前に座ると、ショパンのワルツを弾き始める。その音は軽やかで、向こうでピアノをやっていたからかなり上手い秋斗と同レベルはある。

「海月春彦の弟もそれなりにやるか。」

「俊だよ、僕。弟って呼ばれるのにはいい加減うんざりだ。」

「ふん!次は歌だ!」

これも流石は攻略対象者。秋斗、冬馬くんレベルで上手い。

だがしかし。俊くんは。

「じゃあ、次は僕だね。」

俊くんが歌い始める。彼はあの二人よりも歌が上手いのだ。その道に進まなかったのはなぜか問いたくなるほど。あまりの上手さに天夢高校の人も聞き惚れる。

「くっ。音楽はお前らの勝ちだ!」

悔しげにボス猿が宣言した。

ちなみに私はピアノでは「チューリップ」(あの、ドーレーミー、ドーレーミーというやつだ。)を右手だけやり、音楽教諭に怒られた。「いや、これ全力なんです!これ以外弾けないんです!」という訴えは嘘だと思われた。ピアノ習ったことないんだもの!冗談じゃなく「猫ふんじゃった」すら弾けない。今時の子は誰もがピアノを弾けると思ったら大間違いだ!

その後は歌をみんなの前で披露することになり(もちろん仁王立ちで両手は暴れ出さないようしっかり後ろで握っている)あの空石雹が唖然とする表情を初めて見た。

周りの男子の憐れみの顔が心に刺さるよ!せめて普通にスルーして!

4限は数学Ⅱ。

君恋では未習範囲で、私がギリギリで負けてしまう。

ごめん、俊くん。


昼休みに様子を聞けば、本日の他の二人も一進一退らしい。冬馬くんはわずかに優位、秋斗はまさに互角らしい。

「4限、家庭科だったんだけど、秋斗くん、凄かったんだよ~!!その場の食材で課題料理さっさと終わらせて、あっという間にスペシャルケーキまで作ってくれたの~!!もちろん、種村くんも先生まで唖然としてたよ!」

秋斗の料理の腕前は超一級。そんじょそこらのレストランすら負ける。高校生相手に負けるわけない。

「…ちなみに、誰が食べたの?」

「ん?もちろん、私だよぉ!種村くんのも美味しかったんだけど、秋斗くんには負ける感じだったよ!他の班の人も上手だったよぉ!」

「全部食べたの、こめちゃん?」

「クラスの男子が餌付けしてたよ…。」

秋斗がため息をついている。



5限は家庭科。

私が空石雹と料理対決をしたが、これは勝った!

ふ、これで負けてたら、私、確実に俊くんより女子力下認定されるからね!

6限は近現代史。

文系科目なのに私は負けてしまった。現代史が前世と変わっているのに気付けなかったのだ。なんという失態。

どの時限も、クラスメイトは自分たちの課題そっちのけで私たちの勝負を見守り、一喜一憂している。ここに来た時よりも、白熱していて、うきうきした空気が教室に流れていた。

結局この日は3勝3敗。勝負は明日に持ち越された。




そして5日目。

この日は4限までしか授業がない。先に3勝した方の勝ちだ。

1限は数B。

ベクトルが苦手な私も俊くんも空石雹に負けた。

2限は地理。

えっ!地理?!

しまった。前世で私は地理を選択していなかった!そして現世で地理は2年科目だ。当然負けた。

「あとが、ないね…。」

私と俊くんは緊張して3限を待つ。3限は現代文。私が勝てる科目なはず。

しかし。

始まる直前に秋斗が教室に駆け込んできた。

「ゆき!こめちゃん知らない?!」

「え?」

「こめちゃん1限来てたのに2限から行方不明なんだ!」

「なんですって!?」



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