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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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校長先生と会おう

君恋高校の中間試験は早い。

10月の1日から4日間あった。前世では10月の半ばだったはずだ。これはおそらく文化祭の他に1年合宿という修学旅行のようなものがあるせいだ。

生徒会やら不審者事件やらで忙しくしていたが、日々の授業の予習復習を欠かしていない。それに今回は冬馬くんとの勉強会もやっていた。前回のおでこチュー事件があったことでやめるか検討したが、物理や数学は当初想定した以上にスムーズに解けるようになり、このメリットをなくすのは惜しいと結論付けて続けた。だから当然…


1位 相田雪 1175点

2位 上林冬馬 1170点


「どやぁ!!1位奪還!ふふふふ。どうだ、冬馬くん。勝った!」

「あぁ。負けた。悔しいな。」

中間の結果が発表された10月2週目の月曜日の昼休み。私は茶道部の仲間と冬馬くんとで昼ごはんを取っている時に拳を突きあげて叫んだ。

周りの生徒が一歩引こうが二歩引こうが三歩引こうが関係ない!嬉しいのだから!

「そうだよ。こうでなきゃ…ふふふ。」

恋愛なんかにかまけている暇はないのだ!冬馬くんとの差は5点。油断ならない。12科目と中間のくせに多い科目数で競り勝ったとはいえ、期末はこれが更に増えてくるのだから。

「雪ちゃん、すごい気合だねぇ。」

こめちゃんは17位。相変わらず20番以内をキープだ。

「上林が2位…くっそ。また負けた!」

「なになに?後のみんなはぁ。秋斗くんが5位、俊くんは15位、京子が189位、私が210位。みんな入学時よりも上がってるよね!」

「待って!俺のことみんなからハブくのやめて!」

「遊くんだけじゃないよ?未羽もちゃんと除いてるから。」

「未羽ちゃん、俺らは仲間だもんな?」

「私、今回399位。遊くんは412位。」

「なにっ?!」

「百の位の差は大きい。というわけで私もこっち♡」

未羽がピョコンと跳ねて明美に寄る。

「ぐあああああ!!!」

遊くんはその場でくずおれた。

「そういえば、いつの間に雪は上林くんのことを名前で呼ぶようになりましたの?もしかして、何か…」

「ないっ!ないです、なーんもない!あぁ、平和な毎日、素敵だなぁ!」

あからさまに話題を逸らしてなんとかやり過ごす。秋斗がふふんと笑っている冬馬くんと虎と龍の睨み合いをしているけど見ない見えない聞こえない。

「そうだねー。明日から雪たちが5日間もいなくなるのは寂しい。」

「へ?何の話?」

「生徒交換編入期間のことですわよ。近くの天夢(てんむ)高校との。」

なんじゃそのまた乙女ゲーな名前の高校は。君恋よりましか?というレベルのじゃないか。

「天夢って言ったら、超進学校だよね、確か。君恋より上の。一昨年兄さんが受験してたよ。」

俊くんがうーん、と唸る。

ここも偏差値はかなり高いはずなのに、それよりも上とは。

「あー、そこ、俺の従兄弟が行ってる!あそこさぁ、自分たちが一番っていう意識が強い学校でさぁ。特に成績悪いやつとか人権ないらしいぜ?従兄弟が勉強でひぃひぃ言ってる。従兄弟は真ん中の成績でそれでも肩身狭いってさぁ!」

選民思想ってやつか。

「従兄弟さんは超エリート高校で真ん中で、遊くんはここで400番台…同じDNAがあるはずなのにねぇ…。」

「明美ちゃん、ひでーよ!!!ここだって頭いー学校だろ!?」

「まぁね。ここで上位だったらまだ救いがあるのにね…。」

「わぁぁぁ!泣いてやる!」

遊くんがいじけ出す。

「王子たちが1週間いない、とクラスの子が泣いていましたわ。」

私たちが行くことは決定事項なんですね?話来てないのに。

「でもその代わりにこっちに来る子たちもすごいかっこいいらしいから、期待してた子たちもかなりいたよ。やーん、イケメンかなぁ?」

「あれ、明美ちゃん、かっこいい人好きなの〜?」

尋ねるこめちゃんに笑いながら明美が返す。

「そりゃあ、目の保養よ!見る分にはいいじゃない!彼氏にしたいとは思わないけど。」

「…それはなぜ?」

「冬王子ご本人にはわかんないだろうけどね、女の子のやっかみってすごいんだよ?それにいつ相手に浮気されないか不安になっちゃったり、完璧な彼氏だと自分に劣等感覚えちゃったり。」

「そんなこと思う必要ないのに。」

「そう言われても、ですわね。だから周りから見てるだけで、とか遊びでいいから、という方が絶えないんですのよ。」

そうだね。だから浮気の心配もない乙女ゲームは前世で需要が高かったんだ。

「俺はわっかんないなぁ。好きな女の子は全力で俺が守るし、手に入れたらすごく大事にする。遊びで、なんて考えられない。それにその相手がいいってこっちが思ってるんだから劣等感なんて覚える必要ないでしょ。」

「それは秋斗くんや上林くんだから言える話でしょ。全員が全員そうとは限らない。むしろ違う人の方が多いんだから。とにかく、そーゆー女の子側の気持ち分かっといた方がいいよ?」

そして明美は私をじっと見る。

うん、明美、そこでこっち見ないでね?


私たちが午後の授業に向かおうとしたとき、放送が入った。

『ピンポンパンポーン!生徒会一年、上林冬馬くん、相田雪さん、新田秋斗くん、増井米子さん、海月俊くん、至急校長室に集まってください。繰り返します…』

「え、授業は?」

「このタイミングってことは、こっちの方が優先ってことなのかな?」

俊くんの言葉に頷き、移動する。

校長室。

入ったことのない場所だ。生徒会と学校上層部は仲が良くないはずなのに呼び出しとは…。

コンコン、失礼します。呼び出しを受けた生徒会一年上林です、との上林くんのノックに「入りなさい」の声。

そこにいたのはハゲ風味のちんまりしたおっさんだった。

ラスボスという気分で来ていたのに、拍子抜けだな…。これぞ嫌味な校長!ってタイプじゃない。

「まぁ、かけてかけて。」

「「「「「失礼します。」」」」」

校長先生はソファに私たちが腰掛けると前に座る。

にこにこにこ。笑顔だ。

「初めて会うね。君が入学式新入生代表で次期生徒会長の上林くん、そして君が入学時から中間期末と主席を譲らない相田さん、隣が新田くん、増井さん、海月くん、だね。成績も生活態度も見させてもらったけど、みんな優秀で私はほっとしているよ。」

「校長先生、どういうことでしょうか?」

「君たちには明日から天夢高校に交換学生として行ってもらう。」

やはりその話か。

「これは学校ごとの取り決めでね。偵察みたいなもんなんだよ。世間にライバル校だとアピールしていいか、のね。我が君恋高校は1800人と規模が大きい。生徒の幅も様々だ。そこが高校としての売りだよ。でもね、高校を選ぶ時には必ず大学合格実績というものを見る。それが良くないと単なる烏合の衆の学校というレッテルを貼られてしまう。それは好ましくない。人は多いが優秀、ということを示さなくてはいけないんだ。そのために出来ることはなんだと思うね?」

「大学合格実績を上げること…そして超エリート校に認められる学校であり続けることでしょうか。」

冬馬くんの答えに満足そうに頷く校長先生。

「その通りだよ。君たちには君恋高校の代表として、向こうに優秀であるということを見せなくてはいけない。これまでは成績の上位5名を出していたんだが、去年は生徒会の人たちにお願いしたんだ。こっちにも向こうの生徒がくるわけだから、優秀な人みんなを向こうに出すわけにはいかないしね。なかなか厳しい評価もあったが、それでもいつもよりはいい手応えだった。今年もそれで行こうと思ってね。」

できれば面倒事には関わりたくないのだけれどおそらく。

「校長先生、このお話は辞退できない、ということですね?」

私の問いに頷く校長先生。

「そうだよ、私の命令だ。断るようなら停学処分も辞さない。君たちは行ってこの君恋高校の優秀さを見せつけてきておくれ。学校の顔に泥を塗るようなことは許さないよ?」

目の色が変わる。にこにこしているのに冷たい目だ。うすら寒い。

「さて、その代わり君たちには午後の授業を免除する。代わりに明日からの予習をしなさい。授業に出るより有意義な時間を過ごすように。」

それが校長先生との初邂逅だった。


「たった半日で何をしろって言うんだろうね?」

自習しろと言われても困ってしまったのだが、俊くんが会長に連絡を取ると、「生徒会室に来るように」という返信が来た。

向かうと会長が待っていた。

「会長、授業は…?」

「一回休んだところで問題はないですよ。それよりみなさんのことです。いきなりですが、これからテストをします。」

差し出されたのはずらっと各科目の問題が書かれた紙だ。

「私手製のものです。制限時間は1時間半。さぁ、始めてください。それが終わる頃に夏樹たちも来ることになっていますから。」

おいおい、ここで試験が来るとは思ってなかったぞ。



というわけで天夢高校編入編、スタートです。

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