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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・前半】
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入部試験に合格しよう

「ファーストテースト!今から20分正座してもらうわ。崩すのは厳禁。さぁ、お座りなさい」


 崩さずに行う20分正座は無理なものじゃないけど、慣れてないと辛いやつだ。

 全員が座るとタイマーがスタートし、「はい、そこのあなたとあなたと………あなた、不合格。出ていってちょうだい」

 20分後には先生の容赦ない判定に女子5人が落ちた。厳しく査定されてるのが分かる。


「セカンドテースト!みなさんにはこれを持ってもらうわ」


 渡されたのは水差(みずさし)。これはお点前の最中、釜の湯加減を調整したりするのに使う道具だ。稽古の時と同じ水量が入っている。


「さぁ、これをお持ちになってここから釜のところまで歩きなさーい」


 その言って畳の上を扇子で指す。

 奥に畳がたくさん並べられている。いつの間に。痺れる足で運ばせる、ということか。

 なるべく足はあげない。足袋で畳を擦るように歩くイメージ。畳の縁は踏まない。あとはふらふらせずに歩ければオッケーなはずだ。

 私は正座に慣れていない現世の足を叱咤激励して頭の中にある注意点を厳守する。前世の記憶、万歳!

 水をこぼしたり畳の縁を踏んだり倒れた人が落とされてここで30人が脱落した。残りは15人。

 秋斗も生き残っている。なんだかんだお隣の家は礼儀作法に厳しい家だからだろうなー。


「サードテースト!ワタシがあなた方が茶道の美たり得るか判断させてもらうわ。ワタシ、心が読めるのよん」


 で、電波系、来たー!もうやだ、やっぱやめようかな……。


「みなさんに和の美に反する疚しいところがあったらワタシには分かるからねん。さぁ、こちらに一人ずつ来てちょうだい」


 最初に座ったのは女子生徒。先生はじぃっと女子生徒を見る。怯える彼女。


「あなた…美形な男の子を追うためにここに来たわね!不合格。そんな不埒な目的では和の美は追求できないわ」


 泣きながら女の子が走って出て行く。いやここにいる子ほとんどがそれ目的だと思いますけども……。


 次は、男の子。あ、海月俊くんだ。緊張した面持ちで先生の前に座る。


「あなた……は茶道を本当にやりたいのね」

「あ、はい。僕は習ってまして、ここでもやりたいな、と」

「はい、合格。」


 にこっと笑う先生。


 え、本当に?この人電波系なんじゃなくて心読める人?!


 何人かが続き、合格者はでない。そりゃ秋斗狙いの子ばっかりなんだからそりゃそうなんだけど……次は私だ。不安不安不安!

 茶道はやりたいけど、東堂先輩から逃げるのがきっかけで、とか、前世経験から楽そうだったから、とかバレたらどうしよう!


 先生の前で目を瞑る。


「あなた……」


 ばれないでー!


「美しい!」


 は?


「あなたは和の美にそうわ!その姿勢!その長いストレートな黒髪!ええ、合格」


 心を見るんじゃないのかよおい。


 ついでに言うと、私の髪は黒髪ではない。黒に限りなく近いこげ茶色だ。まぁいいけどさ。

 あっさりテストをパスした私は俊くんの隣に座る。

 俊くんはほっとするような優しい顔で話しかけてきてくれた。


「相田さんも茶道部希望だったんだね、そういえばあの時の用事大丈夫だった?」


 あの時?ああ、祓い屋ね。


「うん、ありがとう」

「よかったー」


 あー。乙女ゲームに直接関わらない人には本当に癒される。俊くんが部活にいたのはラッキーだった。


 次は秋斗だ。秋斗は真剣な顔で先生の前に座る。やばい、本気だ。

「あなた……茶道が目的じゃないわね?」


 まぁ秋斗の視線の先見てれば私がずっといるもんねぇ。さぁどうする、秋斗!?


「ええ」


 秋斗は、隠しもせずにまっすぐに先生の目を見返すした。


「目的ではないです。でも俺は真面目に茶道やりますよ。大切な子が一緒にいるその場で、その一瞬一瞬を宝物にできるくらい、俺はベストを尽くします。その過程は美になりませんか?」


 カッコ良さそうに聴こえるけど要は茶道は「ついで」だって言ってるんじゃないの。


「エクセレーント!合格よ」


 なんで?!


「あなたは美の真髄を分かっているわ」


 いや分かってないと思います。


「かっこいいね……!」


 いや、俊くん、雰囲気に飲まれないで。普通なら全く通らない理由だから。

 秋斗は颯爽と歩いて私の隣に座る。イケメンは何言っても様になるってか。

 世の中は不合理だ!


 その後何人か女の子が続き、3人の女の子と1人の男の子が合格を出された他は不合格を出され……そして最後の一人。


 え?未羽?!

 未羽は先生の前に座る。


「あなた……も茶道が目的じゃないわね?」

「ええ、先生。でも私は自分の美学を追求するためにここにきました。この美学追求の熱意は誰にも負けません」


 美学って乙女ゲームイケメン鑑賞でしょ。そらー未羽に勝てる人はいないわ。

 先生の手をしっかり握る未羽。


「よろしければ、披露しますが」


 やめときなさい。いつもの欲望だだ漏れのやつでしょ!!


「……いえ、いいわ。あなたも合格よ。熱意は、その真剣さは美になるでしょう」


 もーなんか、突っ込まなくていいかな?


 こうして私と未羽を入れた女子5人と俊くん、秋斗を入れた男子3人が新入部員として茶道部に入ることになった。

1月23日の活動報告で「俺の幼馴染」という、秋斗目線の秋斗と雪の出会いの時を書きました(2000字くらい)。よろしければご覧ください。

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