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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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京子と出かけよう

「みんなーちょっと聞いて。」

横山部長が私たち一年生を集める。部活や生徒会の代替わりは9月だから天木部長は引退して、今回は女性の部長だ。

「どうしたんですか?」

「なんかね、緊急の職員会議が入ったらしくて、今日愛ちゃん先生来られなくなったんだって。だから今日は私たちが一年を教えるってことになったの。」

緊急の職員会議か。

「何かあったんですか?」

「んーそれは知らないんだよね。とりあえず、まずは新田くんとこめちゃんと武富士さんから通し稽古をやろっか。海月くんは指導の方に回って。」

「「はーい。」」「「はい。」」

「横田さんと野口くんは帛紗捌きのテスト。」

「げっ。またテスト…もうテストは嫌だ…。」

「ここは諦めが肝心だよ、遊くん。」

「二人はここで合格できないとお菓子ないから。」

「「そんなぁ!」」

「それで悪いんだけどね、残った二人にはお茶菓子買ってきてもらっていい?いつも愛ちゃん先生が持ってきてくれるから、ないんだよね。学校の校門出てしばらくしたところ、駅寄りのとこに和菓子屋さんあるから。」

「分かりました。」


先輩に言われて私と京子は二人でとことこ歩く。君恋高校は坂の上の高いところにあり、登校する生徒泣かせの学校だ。特に登校時にお腹の調子が悪いと真剣に恨みたくなる。

「京子と二人だけで買い物って初めてだね。」

「そうですわねー。」

「いつも京子は明美と一緒だもん。」

「そういう雪は未羽か秋斗くんが一緒ですわ。」

「確かに!京子みたいな落ち着いた女の子と話すのは新鮮。」

「…未羽や明美は元気ですものね。こめちゃんはまた違った感じでハツラツとしてますわね。」

「そうそう。」

「…私、雪に訊いてみたいことがありましたの。」

「何?恋愛以外なら任せてよ。」

「と、東堂先輩のファンの方ってどのくらいおりますの?」

「え、東堂先輩?んーよく分かんないけど、かなりいそう。夏の合宿の時も試合を観にかなり集まってたし。」

何せ攻略対象者様ですからね。

「そうですの…。」

「なんでー?」

「ななんでもありませんわ!」

「ふぅん?」

私は人さまの恋愛感情(こういうの)に疎いタイプではない。京子の頰が薄っすらと赤いのにも気づいている。やっぱりかっこいいからかなぁ。そりゃ、全国の女性を魅了してやまない攻略対象者様。それに東堂先輩は、俺様って設定だったけど予想以上に気配りの出来るお兄ちゃんキャラだった。S県での私たちへの観客勧誘しかり、生徒会合宿しかり、花火大会しかり。そもそも恋愛対象という存在を観念しない私なんかから見ると苦労人という面が目立つけど、この世界でのファンは攻略対象者様の中で一番多い気がする。

「あ、着いた!」

二人で適当に人数分の和菓子を買い(もちろん私はいくつもこしあんのお菓子を混ぜている)、私が注文を包んでくれるのを待っていると、京子が向かいの文房具屋を指す。

「ちょうどいいですわ。私、買いたいものがありましたの。雪、お会計お願いしてよろしいかしら?」

「いいよー。」

もう90歳か?と訊きたくなるご夫婦が経営しているこのお店は一つのお菓子を入れる動作もゆったりだ。向かいの店で物を買う時間は十分ある。



京子が出て行き、しばらくしてやっとこさ会計まで終えて和菓子屋を出る。

「申し訳ありませんが、私そういうのはお断りしておりますの。」

京子?

道路を挟んだ道の向こう側でなにやら京子がフードを被った人影に絡まれている。

「離してくださいまし!」

人影が京子の腕を掴んでどこかに連れて行こうとしている。急いで渡って助けに行こうにもなかなか車の往来が収まらず渡れない。

「京子!」

「悪い!待たせたな。」

たまらず私が向かいの道路から声を上げたとき、京子の側にいきなり声が降った。

「え、東堂先輩、でございますの?」

東堂先輩は京子に寄り添い、そのまま人影と反対側に連れて行こうとするが、人影は未練がましく京子の腕を掴んだままだ。

「すみません、俺の彼女なんで、手出さないでもらえます?」

東堂先輩は人影をその凄まじく整った顔で睨みつけると、京子の腰のあたりを抱き、自分の体を割り込ませて人影の手を京子から離させるとそのまま京子を連れて歩き出す。

先輩、さすがです!お兄ちゃんかっこいい!!

人影はちっと舌打ちするような仕草を示して逃げ出す。

私が追いかけようとすると「待って待って。」と聞きなれた声に止められた。

「桜井先輩?」

「白猫ちゃん、勇ましいのはかっこいいけど、女の子一人で不審者を追いかけるのはどうかと思うよ?」

「…すみません。」

こっちに渡ってきた東堂先輩と京子と合流する。京子は顔が真っ赤だ。そりゃーそうだ。攻略対象者、それも一番京子が気になっているお方に颯爽と助けられたんだから。惚れない方がおかしい。

「先輩方、どうしてここに?」

「生徒会の用事が早く終わったから一緒に帰ってただけだ。たまたま桜井が相田を見つけてな。連れの女の子が一人で移動した後に不審者に絡まれていたのが見えた、という次第だ。大丈夫か?」

最後のはもちろん京子に向けられている。こくこくこく、と首を縦に振る京子。

「私たちはこれから部活に戻るつもりなんですけど、私、先生に報告に行きましょうか?」

「いや、ボクたちが行くよ。職員会議があるって四季ちゃんが慌てて向かってたのはこれかもしれないしね。」

「ありがとうございます。」


そのあと、学校に戻った私たちは先輩方と別れ、部活に戻った。

私が事情を話すと明美が京子に「大丈夫?大丈夫?」と訊きまくる。

「わ、私大丈夫じゃないかもしれませんわ…。胸が…苦しいんですの。」

「えぇ?!怪我したの?!」

「明美、それ違うから。」

私の指摘に心配で頭の回らなくなっていた明美がようやく、あぁ。と言い、安心したように脱力した。

「それにしても、危ないね。不審者が出てるんだね。」

俊くんが表情を翳らせる。

「生徒会がなんかしたりするのかなぁ?」

「さぁ?先生たちから何の指示もない間は動けないからね。とにかく、慎重に行動した方がいいな。女子はなるべく一人で帰らないようにしよう?」

結局秋斗の言った通り、部活後、私と未羽は秋斗と、京子と明美は遊くんと、こめちゃんは俊くんが一緒に帰ることになり、その日はそれで解散した。



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