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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校1年生編・後半】
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ポスター貼りで小西ファンと攻防しよう

とうとう生徒会合宿で話し合っていたポスターを貼ることになった。

「印刷してきました!」

俊くんが私と東堂先輩と美玲先輩のところに印刷した紙を持ってきてくれる。

書いてあるのは、それぞれの名前と役職、抱負だ。抱負は慣用句か四字熟語にしようと決めた。だからポスターに書かれている文字数はかなり少ない。

代わりに余ったスペースに生徒会合宿で撮った集合写真を大きめに貼ることにした。切り抜かれないようにコーティング加工はしてあるが、意味を成すかは微妙だと思う。

出来たポスターを見て、美玲先輩が講評する。

「俊くんは…『日進月歩。少しずつでも進みます』だな!無難だがいい言葉だ。」

「えへへ。地味ですけど。」

「上林くんは『人事を尽くして天命を待つ。何事にも全力で取り組む所存です』か。彼の全力は恐ろしいだろうな。こめちゃんは『花より団子…仲良くしてください〜』…何か間違えてないか?」

「どうしても出ないとのことで。自己紹介でいいからと言ったらこうなりました。」

「まぁ、書記だからな…。外部への特別な仕事はないし、仕方ないか。それから新田くんは『天網恢恢疎にして漏らさず。不正は許さないのでよろしく。』」

「確か桜井先輩が、『これもいいねぇ!クールじゃないか!』と言ってましたよ。」

「でもその後に『ボクとは熱く燃えあがろう!秋斗くん!』と言って、秋斗くんに『お一人でどうぞ』ってライター渡されてました。」

秋斗、犯罪はよくない!!

「それから、相田が『因果応報。風紀を乱せると思うものならやってみなさい、後悔させます』…一定層にウケそうだな。」

「先週の心理状態で書いてますので。」

「「あぁ…。」」

トゲトゲの攻撃モードだ。いつもの私はここまで攻撃的ではありませんとも!



「じゃあ分担しようか?分けるなら…部室棟と学年棟とその他というのが位置から妥当だと思うが。」

「俺、部活棟行っていいか?サッカー部の荷物を取りに行く用事もあるからな。」

「あぁ。」

美玲先輩の了承を聞いて東堂先輩がさっと自分の分を取って姿を消す。

「私は…。」

「「「きゃあああ!小西せんぱーい!!」」」」

何人もの1年の女子たちが集まる。

「先輩っ、私たちがお手伝いしますっ!」

「いいのかい?」

「もちろんです!先輩と一緒にいられるなら例え火の中水の中!」

すごいな、おい。そしてなぜ私を睨む?

「あなたには、小西先輩は渡さないわ!!」

えええええ。攻略対象者様方でこれはあったけど、女性でもなの?私、これ以上敵を増やすの?!

思わず半眼になっていたところで、ふわっと細い手に抱き寄せられる。

「みんな、やめてくれ。雪くんは私の大切な直(属の部)下なんだ。いわば妹みたいなもんなんだよ。可愛がってくれないか?」

その発言が火に油を注ぐんです、美玲先輩!!

「「「「そんな!小西先輩っ!」」」

「あの」

控えめに口を挟んだのは

「悪いんだけど、僕たち、あんまり時間がないんだ。僕も雪さんもここで煩わされてる暇ないから、ここは収めてくれないかな?」

攻略対象者ほどずば抜けてはいないがそれでも十分整った顔立ちの俊くん。かっこいい男の子に諭されてここでぎゃあぎゃあ喚ける女の子なんていない。

「「「「せ、先輩!いきましょ!」」」」

美玲先輩と女子たちが消えていったあと、残された私たちも移動し始める。

「いこっか。まずは職員室かな。」

横を歩く俊くんの顔を見ると、上林くんだけでなく、彼もいつもの微笑みがない。眉間には少し皺が寄っていて、疲れを隠せていない。彼が人にきつめの口調になったのを出会ってから初めて見た。

「俊くん、なんかイライラしてる?」

「…ごめんね。僕も疲れてるみたいで。」

「いや私は助かったよ。珍しいなと思っただけ。」

温和で優しくて人に声を荒げることのない人でも限界になるきつさ。

別に俊くんに体力がないせいではない。

この学校は偏差値を上げるためにそれなりの進度で授業を進めているし、宿題は毎日結構どっさり出ている。学生の本分としての勉強を疎かにして生徒会役員が成績を落とすと、特にシニアの先生方からの目が厳しくなるらしい。夏に聞いた通り、四季先生や愛ちゃん先生のような一部を除き、先生方と生徒会の仲はよろしくない関係が続いているようだ。そんな経緯で、生徒会役員に選ばれた私たちが成績を落とすわけにはいかないと最初に会長から言われた。成績を保ちつつ、なおかつこの膨大な仕事量をこなしていくのはなかなか骨が折れる。

「どうしても人、増やせないのかなー…。補助って形でもいいから。」

「なんかね、秘匿しなきゃいけない情報が多いらしいんだ。ほら、いじめの話とか、個人情報も多いしね。それで部外者の立ち入りを認めるわけにはいかないんだって兄さんが言ってた。あと、ほら、兄さんとか東堂先輩はもちろん、小西先輩みたいに女性でも人気があったり、今回なんか冬馬くんと秋斗くんが入ったでしょ?なんだかんだ理由をつけて入室して彼らの情報を入手しようとする人たちが多くなったから、余計無闇に人を入れたくないんだって。」

「最もな理由だね。」

今でも中に入ろうもしくは外から何か聞けないか、何か見えないかと壁に張り付いたりする人が後を絶えないのだ。

「それにしても、ねー。去年先輩たちはどうしてたのやら?」

「去年より仕事は多いって兄さんこぼしてたよ。家で。」

「え!なんで?」

「去年の功績が認められて、こっちに委託される仕事が増えたんだって。」

なるほど。優秀すぎたのか、先輩たち。ということは慣れても泉子先輩が言ったみたいにはならない気が…。

話しながら歩き、廊下の角を曲がったところだった。

「ちょっと、話いいッスか?」

三人の人影が、私たちの行く手を遮った。



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