生徒会合宿の帰り支度をしよう
「すごかったね。」
俊くんがまず言う。
今はコテージに帰って着替えてから生徒会の一年生が集まったところだ。
「夢城って、ああいうキャラだっけ?」
上林くんは茶道部合宿の時の彼女を見ていないので、イメージの違いに戸惑っているみたいだ。多分1学期の彼女はおそらくゲーム設定のままの言動、性格を心掛けていたんだろう。一方、茶道部合宿の時や今日の襲来はおそらく「転生者」が自分の判断でやったことだ。
「私たちは、合宿で見ていたから~合宿の時に偶然会ったんだよ~。あの時もあんな感じだったよぉ?」
「俺、あの子嫌い。」
秋斗が女の子にここまではっきり嫌悪の感情を出すことも珍しい。
「私もだな。」
「美玲先輩!いらっしゃったんですね。夢城さん、かなり美少女だと思うんですけど。」
「外見が綺麗にこしたことはないが、あんなに中身が汚いとダメだ。中身も外見も美しくなければいかん。」
「残念なのです!外見だけなら私のストライクだったのです!」
やっぱりそうなんですね。
「桜井先輩は優しいですね。」
「あいつは優しすぎるからな。博愛主義者なんだ。」
「東堂先輩!サッカー部の合宿でも、夢城さん、あんな感じだったんですか?」
「いや、合宿中は誰に対しても気を配れる普通のいい子だったぞ?なんで今回あんなことをしたのか、よくわからん。」
ゲーム設定の夢城さんの行動は東堂先輩に好印象だったようだが、やはり今回も秋斗のように墓穴を掘ったみたいだ。自分で自分の首を絞めていますよー夢城さん。
「愛ちゃん先生は?」
「なんか、盛り塩してましたー。会ちょ…春先輩と一緒に。」
ああ、ここでもかい。
「ゆき、どこ行くの?」
「ちょっと疲れたから、向こう行って片付けの続きしてくる。」
私はそっとそこを出る。
女子部屋に戻ると、ケータイを出して、ラインをする。
『未羽、近くにいるのね?あの、例の合宿?』
『そ。夢城愛佳も一緒だったよ。今雪に渡しているのは、録音専門のやつだけど、夢城愛佳とそれから四季先生には、一時的にだけど、電波飛ばせる盗聴機とミニ監視カメラ仕掛けてた。今日のことが起こるのは分かっていたからね。』
やはりか。恐ろしや未羽様。
『あれってイベントなの?』
『イベントっていうか…あーまぁそう言う意味ではイベントかな。相田雪のね。』
『私の!?』
『ゲームの相田雪は劣等生。四季先生のこの特別授業に出てることになっていて、それで四季先生が生徒会の合宿と掛け持ちしていることを知って、先生のバンに乗り込むの。それで乱入して、幼馴染の秋斗くんに会いに来たことに乗じて会長とかに迫るってことになってた。それで、会長とか東堂先輩とか、他の生徒会の先輩方に邪険にされるっていう。』
『なに、それ、夢城さん、自分で悪役の方やっちゃったってこと?』
『そうなるね。おそらく主人公パワーでなんとかなると思ったんじゃないの?』
うーん。
『今日は桜井先輩いたからちょっとは助けられたかもしれないけど、なんか生徒会の方での印象ガタ落ちだよ?特に秋斗なんてはっきり嫌い、って言ってたよ?』
『ざまぁ(・∀・)』
未羽っ。人様を笑っていると自分に跳ね返るぞ!
『でも、桜井先輩?』
『え?ゲームでも、いたんでしょ?』
『えーうん。いたけど。そんな悪役をフォローするっていう役割はなかったけどなぁ。ゲームでの相田雪は誰にもフォローされずにけちょんけちょんにされてたから。』
『…よくそれ本人に向かって言えるわね?』
『ゲームの相田雪とあんたは違うでしょ。…ま、とにかく、とりあえずこの後夢城愛佳が絡むことは多分ないから、安心して?』
『ありがと。…ていうかさ、それ予想してたんだったらもうちょっと早く言ってくれてもよかったんじゃないの?』
『ごめん、四季先生につけた監視カメラでみなさんのお美しい体が目に入ってしまって…失神してた|д゜』
本当に失神してたのか。
リビングとなっている部分に戻ると、四季先生と桜井先輩が戻ってきていた。
「お疲れ様です。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「白猫ちゃんが癒してくれれば、暑さのダメージなんてすぐになくなるさ!」
「桜井先輩っ!」
秋斗が再び桜井先輩に毛を逆立てた犬状態を発動させている。
「はーい、はい!みなさん集まったわねん!」
「愛ちゃん先生?」
「海であんなに不快なことが起こるとは思っていなかったけど」
やっぱりお怒りだ。
「でも、ワタシがこれだけでこの生徒会の合宿を終わりにすると思っていて?」
「「「「「「「え?」」」」」」」」
「さぁ、これから女性陣によるご奉仕ミニカップケーキどきどき大会よん!」
先生、ネーミング激しく間違ってます。




